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不誠実な商売の末路

「正直者は馬鹿をみる」という自虐的な言葉がありますが、私はそうは思いません。正直者が報われるかどうかは別として、正直者が非難されることがあってはなりません。

最近世間をにぎわしているビッグモーターは、自動車修理でワザと修理箇所を増やしたりして保険金を水増し請求していたようです。もちろん私のような一市民に事の詳細は分かりませんし、真偽についても知り得ません。ただし、これまでの報道やSNSなどの書き込みによれば、かなりクロに近い印象を受けます。この会社は、ある意味で”ブラックな会社”なのでしょう。

一部のマルチ商法や霊感商法の除けば、大部分の会社や商店は、規模の大小に拘わらず”誠実な商売”を基本にしているはずです。しかし時々、その業界の有名企業が不正に手を染めることがあります。これは、商売の根幹を揺るがすような大事件です。

『雪印集団食中毒事件』は、2000年(平成12年)の6月から7月にかけて、近畿地方を中心に発生した、雪印乳業(現・雪印メグミルク)の乳製品による集団食中毒事件です。この事件では、停電により劣化した脱脂乳を、本来は廃棄すべきなのに”目を瞑って”製品化し、結局は14,780人にものぼる戦後最大の集団食中毒事件となりました。

この事件では、事件後の企業側の場当たり的な不誠実な対応や、二転三転する説明によって、会社のイメージが急速にダウンしました。決定的だったのは、石川社長(当時)が「黄色人種には牛乳を飲んで具合が悪くなる人間が一定数いる」などといった無責任な説明でした。その後、雪印グループの製品がスーパーから全品撤去されるなど、一気に経営が悪化しました。

有名なお土産の食品偽装が『赤福の賞味期限偽装』です。赤福は、伊勢神宮参拝のための参道沿いで売られている”こし餡でくるまれた餅”です。赤福は、新幹線の京都駅や新大阪駅などでも売られているので、ローカルなお土産ながら知名度は全国区です。

この事件が公になったのは、従業員からの役所への内部通報がきっかけでした。勇気ある従業員が2007年に「この夏に製造日と消費期限を偽ったことがある」と三重県の伊勢保健所に通報したのです。いくつかの偽装があったようですが、わかりやすいのは”製造年月日・消費期限表示の改ざん”です。この改ざんでは、店頭売れ残り品や未出荷品の包装紙を破棄し、新しい包装紙に”嘘の製造年月日・消費期限”を表示するという手口でした。また、店頭から回収した消費期限切れのものを含む赤福餅から餡と餅を分離して再利用するという、食品を扱う店では信じられないこともしていました。このことで会社は無期限営業禁止処分を受け、会社の社会的信用を大きく落としました。

雪印も赤福も、北海道や三重県などの地元に支えられて現在まで続いています。”バレなければ大丈夫”という考え方は通用しません。運よく?短期的には利益が出たとしても、いずれは大きなしっぺ返しがやってきます。不誠実な商売の末路は決まっています。

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