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小学校入学時、心が痛む思い出

自閉症の息子は大勢の人がいる場所は苦手だ。その配慮から私たちは、家の近くにある2クラスだけの小さな私立の小学校を選んだ。

0年生が始まる年の5月(デンマークの新学期は8月)。子供たちは幼稚園と小学0年生の移行時期がスムーズに行くように、少しずつ小学校への移動を段階的に進めていく。その時点ですでに、自閉症の息子は大変だった。

彼は慣れた場所から新しい環境に移るのが苦手中の大の苦手なのだ。私は何か月も前から、犬を連れて小学校の周りをぐるぐる息子と何日も歩き始めた。定型発達の子供たちが緊張しながらも、とっても楽しみにしている小学校の入学式(First school dayと呼ばれる日)が、息子にとっては見通しの立たないただの恐怖と不安でしかなかったのだろうと今になっては良くわかる。

でも、その時の私は他のママ達と同様、子供の小学校入学を少し緊張しながらも楽しみにしていた。

日本で言うところの入学式では、息子は終始緊張の無表情だったことを覚えている。笑顔が見られたのは、入学式後に寿司屋に行って入学祝いをした時だけだった。

それでも、息子はなんとか2人の”友達”を作った。幼稚園の時もそうだっが、息子にとっての”友達”は常に2人。その子達がいないと彼は学校に行きたがらないし、常に彼らを探すことから朝は始まった。きっと、彼なりの自分が学校でどう過ごせばいいのかを真似るモデルになっていたのかもしれない。1人は同じ幼稚園からの顔見知り、もう一人は母親が中国人であったために黒髪の男の子で少し親近感を感じていたのかもしれない。

家に行き来出来るようにもなってきて小学校0年生は楽しく過ごしているかのように見えたが、たまに放課後学童に迎えに行くと息子がどこにもいない。探し回っているとトイレに長蛇の列が。息子がトイレに長時間閉じこもっていたのだ。

その時の光景を思い出すと私は今でも心がズキズキと痛む。クラスの女の子が、中に居るのは私の息子だと教えてくれて、私がドア越しに話しをして、ようやく中に入った時、息子は頭を抱えた姿勢でトイレに座ったまま泣いていた。

もちろん、保育士にはそのことも話した。注意して目をかけておきますと若い彼女はそう言ってくれたが、沢山の子供たちの活気に毎日振り回されていたのか、そのあとも何度か同じようなことが続き、私はクラスの担任に話を持ち掛けて行った。

クラスでも、彼のこだわりが続いているとのこと。教室に入ってもどうしても帽子をはずしたくない、休み時間にどうしていいかわからずボーっとしている、休み時間が終わっても教室に入って来ることが出来ない…など、細かい本人のこだわりと特性のことで、私の息子は良く注意を受け、少しずつ彼の心は壊れて行った。



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