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【日常紀行】健康診断、それは検査の輪廻転生

 秋晴れの日、病院に精密検査の結果を聴きに行った。会社が社員の保健診療を委託している先である。中年を過ぎると、健康診断では何かと引っ掛かるものだ。

 診察室に入ると、女医さんだった。気さくな方で、この間の検査で撮影した精密なCT写真を示しながら、テキパキと新たに見つかった疾患を次々に説明してくれた。覚えきれないので、慌ててメモを取った。そして、いくつかの病因が考えられる、それを特定する為に、追加の検査を受けなさい、と言う。

 「先生、これでは無限地獄ですよ。去年の健康診断もそうでした。追加の検査をすると、また別の病気の可能性が見つかって、また検査。いつまで経っても終わらない。」と僕。痛いのも、検査も嫌いだ。

 「そうなのよ、そういう流れが確立しているのよ、御社は。」と、同世代とおぼしき女医さん。んっ、御社?社員の健康確保の為に、原因をはっきりさせるまで、追求することになっているらしい。賢そうな目をくるっ、くるっと回して、朗らかに解説してくれる。

 「でも、検査をしていくと、心配になるでしょ。だから、話が巡りめぐって、20代で、もうAGA予防しているのよ。御社には、結構そういう男性社員が多いのよ。」と、信じられなーい、と言いたげに、もっと目を丸くした。

 「AGAって、薄毛、脱毛の?」

 「そう、男性ホルモン型脱毛症。」

 「なるほど。。検査、検査の結果、心配になって?」

 「そう心配になっちゃって。」

 僕は先生に挨拶すると、心の中でため息をつき、覚えきれない位の病名候補を記したメモをポケットに入れ、診療室を後にした。

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