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古き良き時代の匂い(村上春樹 『風の歌を聴け』を読んで)

僕が村上春樹の作品を最初に読んだのは、10年くらい前の大学2年生の時だった。

当時は村上春樹作品によく出てくる、繊細で内向的な、ニヒル感漂う主人公に自分をトレースして楽しんでいたと思う。

日々の生活にあくせくしている社会人の今読むと、なんとなく現実感がなくて、とくに頑張らずに女の子が主人公に寄ってくる描写とか見ると、そんなことあるか、とツッコミたくもなる。。

ただ「風の歌を聴け」に漂う「古き良き時代の匂い」みたいのは今でもいいな、と思う。

60、70年代くらいの雰囲気が舞台になっていると思うが、2010年代当時大学生だった僕は、大学生活にあまり馴染めず、なんとなく60、70年代の世界観に憧れていた。

常識に縛られず、レールにのらず、オールCの落第でも我が道をゆくのが魅力的。ちょっとニヒル感のある友人たちと青春時代を過ごすみたいな。。

もちろん、実際はゆとり世代の僕は、本当の60、70年代を知らないのでイメージに過ぎないが、音楽や小説もその時代のものをよく聞いたり読んだりして、雰囲気を味わっていた。

大人になり、予備校などで働くようになって色んな学生に触れると、どうやら今時の若者にはそのようなニヒルな青春感はあまり魅力的なものとは映っていないらしい。

それはそうだろうとも思うし、いまの学生はもっと賢しく、将来のことを早い時期から見通して計画的に生きている子が多い気がする。時代がそうさせるのかもしれない。

自分もそんな若者を見てもっと賢く生きていればな、と思うと同時に、ただやっぱり、何となくニヒル感に浸っていた青春時代をとても懐かしく思ったりもするのである。。

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