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泣き虫トマトパスタ。Crybaby tomato pasta.

ルイ:Mあり。料理人に憧れる高校生(2年)。父親の決めた道を歩むのを嫌がる。
マコ:ルイの姉。勉強も出来、運動も出来る高校生(3年)。
父:公務員が絶対だと思っている頑固な父親。
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ルイ(M):店内で一番人気の料理。
ルイ(M):それは、泣き虫な私が作る、ちょっぴりしょっぱいトマトパスタ。
ルイ:(少し間を開けてタイトルコール)泣き虫トマトパスタ。

【間】

父:(深い溜め息)ルイ……、お前には失望したよ。
父:お前なら1位を取れると思っていたのだが……(深い溜め息)。

ルイ:ごめんなさい……お父さん……。

父:お前もマコの様に勉強しなさい。
父:マコは全教科、100点じゃないか。
父:同じ姉妹として恥ずかしくないのか?

ルイ:……。

父:お前もマコも良い大学を出て、公務員を目指して欲しいんだ。
父:……これ以上、私をガッカリさせないでくれ、ルイ。

ルイ:はい……お父さん……。

父:話は以上だ、寝なさい。

(SE:立ち去る足音)

ルイ:(深い溜め息)……私、公務員なんかなりたくないのに……。
ルイ:……自分の道は自分で決めたい……。

(SE:小さな足音)

マコ:(小声で)……ルイ?

ルイ:あ……マコ姉。

マコ:ごめんね、全部聞こえちゃった……。

ルイ:……マコ姉は良いよね、お父さんに可愛がられて。
ルイ:勉強だって出来るし、運動だって何だって……全部卒なく熟す……。
ルイ:何で私はマコ姉と違って……上手くいかないんだろう……。

マコ:ルイ……。
マコ:(優しい声で)ルイが努力してるのは、お父さんが知らなくても、私が知ってる。

ルイ:マコ姉だって努力してるじゃん。

マコ:まぁ……そうなんだけど……。

ルイ:マコ姉は努力が報われて……私が報われないって……可笑しいよ!

マコ:ルイ……。

ルイ:それに私、公務員なんかになりたくない!!
ルイ:私は……料理が好きだから……料理人になりたいの!
ルイ:それなのにお父さんは私の希望も聞かずに自分の夢ばかり押し付けて!!

マコ:(優しい声で)そうね、ルイは料理が得意だもんね?
マコ:(トーンを落とし真剣に)……でも、いつも思うの。
マコ:ルイは……自分の夢をお父さんに話したことはある?

ルイ:それは……。

マコ:無いでしょ?

ルイ:だって……どうせ言っても無駄だから……。

マコ:そこがダメなのよ、ルイ。
マコ:「だって」「どうせ」で逃げてる内は、お父さんの言いなりのままだよ。

ルイ:……うぅ。

マコ:一回、お父さんとちゃんと話してみたら?
マコ:案外、認めてくれるかもよ?
マコ:(自嘲気味に笑い)……私は夢が無いから親の敷いたレールを歩むけれど……。
マコ:ルイには夢がある。それだけで立派よ?
マコ:(欠伸をし)……さて、私はそろそろ寝るわよ?
マコ:夜更かしはお肌に悪いし!それじゃあね!おやすみ~。

(SE:立ち去る音)

ルイ:(小声で)……自分の夢、お父さんに話したこと……無かったな……。

【間】

(SE:雀の声)

ルイ:おはようございます、お父さん。

父:……あぁ。

ルイ:お父さん、あのね?

父:何だ、朝っぱらから。

ルイ:……。

マコ:(回想につきエコー)「だって」「どうせ」で逃げてる内は、お父さんの言いなりのままだよ。

ルイ:あの……お父さん!!……えっと……その……あのね?
ルイ:私、なりたい職業があるの!

父:なりたい職業だと?
父:公務員以外は認めんぞ、私は。

(SE:立ち去る音)

ルイ:(呼び止める様に)わた……私、料理人になりたいの!!

父:(訝しげに)料理人……だと……?
父:(鼻で笑い)……下らん。要件はそれだけか?
父:なら、話は終わりだ。お前は公務員になりなさい、以上だ。

ルイ:お父さん!!

(SE:立ち去る足音)

ルイ:(泣くのを堪えながら)……私、一生お父さんの言いなりなの……?
ルイ:……(嗚咽)。

【間】

マコ:お父さん、ルイ、帰って来ないね?
マコ:こんな置手紙残して……。

ルイ:(エコー)住み込みで働くことにしました。
ルイ:今通っている高校も辞めます、さようなら……。

父:あんな親不孝の娘など、居なくても良い。勝手にしろ。

マコ:(少し怒りながら)お父さん、ルイとちゃんと向き合ったことある?
マコ:ルイにはね、ちゃんと目標があるんだよ?
マコ:お父さんがその目標を潰しちゃダメだと思うの、私。
マコ:公務員になって何になるの?お父さんが公務員だから?
マコ:給料が安定してるから?将来、困らないから?

父:そうだ、将来私が死んでも困らないように、今から躾けているんだ。
父:母さんが借金して家を出て行ってから、金銭面で苦労しただろう?
父:そんな思いをさせたくないから、私は公務員になって欲しいんだ。

マコ:……下らない……。

父:……何?

マコ:下らないって言ったのよ!!
マコ:金銭面で困ったから何?だからって夢を壊しても良いの?!
マコ:私、ルイが作る料理が大好きだった……。
マコ:どんなに金銭的に苦しくても……ルイが作る料理を食べれば……温かい気持ちになれた。

父:……。

マコ:お父さんは……金銭面が大変だ、とか言いながら自分一人外食して来て……。
マコ:お父さん、ルイの料理食べたこと無いでしょ?
マコ:あの子の料理、本当に美味しいんだよ?
マコ:(泣きそうになりながら)一度……食べてあげてよ……ね……?

父:……。

【間】

ルイ:ありがとうございましたー!!またのお越しを!!
ルイ:(SE:ドアが閉まる音)……ふぅー、お疲れ様です!!
ルイ:店長、厨房借りても良いですか?
ルイ:やった!ありがとうございます!!
ルイ:(少し間を開けて食材を切る音)……早く一人前になりたいなー。
ルイ:一人前になって、自分の店を出す、それが私の夢。
ルイ:誰があんな家に帰るもんですか!

(SE:ドアが開く音)

ルイ:ん?お客さんかな?
ルイ:(SE:足音)……すみません、お店は終わりました……って……。

父:(ムスッとした息)……。

マコ:(茶化す様に)えへ、来ちゃった!

ルイ:(機械的に)申し訳ありません。本日は既に閉店しております。
ルイ:明日もやっておりますので、またお越し下さい。

マコ:ルイ、お父さんが謝りたいって言うから、連れて来ちゃった。
マコ:アンタ本当に5ヶ月も帰って来ないんだもの、私、驚いちゃった!

ルイ:私の夢は私が決める。
ルイ:お父さんになんか決めさせない。
ルイ:私はやりたいことをする、それだけ。

父:ルイっ……お前……!!

マコ:まぁまぁ、落ち着いて。
マコ:ルイを探すの大変だったんだから。
マコ:ルイの友達に情報貰って、やっと辿り着いたんだからね!
マコ:(優しい声で)それに私が、お父さんにルイの料理を食べさせたいの。

父:(鼻を鳴らす)……。

マコ:お父さんはー……こんな態度だけど……ルイのこと心配してたんだよ?
マコ:今日はお店が閉まっちゃったから、明日また、出直すね?

ルイ:……賄いで良かったら、作る。

マコ:え?

ルイ:明日来られても、私、まだちゃんと料理を提供出来ないから……。
ルイ:それに……お父さんに、私の料理は美味しいんだって解ってもらいたい。

マコ:うん、ありがと、ルイ。

ルイ:パスタで良い?
ルイ:……お父さん、マコ姉、適当に座って。

(SE:椅子に腰掛ける音)

マコ:店内、お洒落ね~!
マコ:あ、ルイが料理してるのが見える!!
マコ:へぇー、ここ、こういう造りになってるんだぁ~!

ルイ:凄いでしょ、このお店。
ルイ:ミシュランで3つ星を獲得してるお店なんだ。

父:お前如きが良く面接に受かったものだ……。

マコ:まぁまぁ!
マコ:でも、こうして3人でルイのご飯食べるの、初めてだね?

ルイ:……。

父:……そうだな。

マコ:お母さんが出て行った後は……いつも皆バラバラだったもんね……。

ルイ:…………。

父:…………そうだな。

マコ:ルイ、随分と手際が良いわね?

ルイ:……うん、ここに来てからかなり仕込まれたから。

父:ほぉう、良い腕じゃないか。

ルイ:え?

父:い、いや……何でもない。

マコ:ふふっ……。

ルイ:マコ姉はカルボナーラで良いね。
ルイ:お父さんは……私が初めてここで作ったトマトパスタで良いよね。

父:何でも良い、お前に任せる。

ルイ:……うん。

(SE:調理の音)

マコ:わぁ~、美味しそうな匂いしてきた~!!
マコ:お腹空いちゃったぁ!!!

父:確かに……良い匂いだな……。

ルイ:お父さん、私ね。

父:何だ?

ルイ:ここの店長にね、筋が良いって言われてるんだ。

父:そ、そうなのか。

ルイ:うん……。

父:お前にも取柄の一つや二つあるものだな……。

ルイ:うん……。

マコ:あ、私の出来たみたい!!

ルイ:お待たせしました、ベーコンたっぷりカルボナーラです。

マコ:美味しそ~!!

父:美味そうだな……。

ルイ:お父さんは……もう少し待ってて。

父:あぁ。

ルイ:……お父さん。

父:……何だ?

ルイ:私、本気で自分のお店、出したいの。

父:……。

ルイ:(涙ぐみながら)だから……これが美味しかったら……。
ルイ:私の道を歩ませて欲しいの……。
ルイ:お願い……お父さん……。

父:ルイ……。

ルイ:(泣きながら)お待たせしました、トマトパスタでございます……。

父:……。

ルイ:……お父さんに私の料理……絶対美味しいって言わせるから……。
ルイ:……食べて。

(SE:フォークの音)

父:……美味いな。

ルイ:……本当?

父:あぁ、本当だ。

ルイ:じゃあ……!!

父:けど、少ししょっぱいな……。
父:(笑いながら穏やかに)ルイの涙が入ったせいかな。

ルイ:あ……。

マコ:お父さん、違うよ。
マコ:お父さんも泣いてるからだよ。

父:泣いている?私が?

マコ:気づいてないの?
マコ:(笑いながら)両目から涙が溢れ出てるよ。

父:(涙を拭い)……っ、こんなに成長しているなんて……思わなくてな……。
父:……ルイ、お前は良い腕を持っている。
父:料理人になって、存分にその腕を発揮しなさい。

ルイ:(嬉しそうに)うん!!

【間】

ルイ:いらっしゃいませー!!
ルイ(M):今日もいつも通りお店を開ける。
ルイ(M):賑やかな店内、美味しそうな料理の匂い。

父:ルイ、来たぞ。

ルイ:(笑って)お父さん……来過ぎ。

父:(笑って)お前の料理が美味いのが悪いんだ。

ルイ(M):あれから何年か修行し、自分のお店を持った私。
ルイ(M):一番の太客は、かつて私を公務員にしたがっていたお父さん。

父:ルイ、いつものやつ、頼むぞ。

ルイ:はーい!
ルイ(M):お父さんが頼むモノ。
ルイ(M):それは泣き虫な私が作った、ちょっぴりしょっぱいトマトパスタ。


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