「それは違う」と言える強さ

『What would you do?』というアメリカのテレビ番組があります。

誰かが人種差別や障がい者差別、いじめをしている場面に出くわしたり、子どもが危険にさらされている場面に遭遇したら、周囲にいる人間は行動を起こすのか、を観察するテレビ番組です。

テレビ番組ですので行動を起こした人々だけをつないで編集されているのかもしれませんが、多くの人が差別的発言をする人間に対して怒りを表しながら意見していきます。「そんなことはやめなさい。」「それは間違っている。」と言うことに躊躇しないところが印象的です。

アメリカを最後に訪れたのはもう15年ほど前ですし、私がアメリカに留学していたのは20年以上も前なので、今のアメリカ社会を包む空気感を知ることはできません。そして根っこのところで変わったのかは、正直わかりませんが、この番組を見ていると、留学していた頃と今とでは、少し意識が変わってきたのかなと思います。

大学時代にお世話になっていたホストファミリーのお母さんは明るく気さくな人で、友達を家に招くことや友達と出かけることに理解ある人でした。友人付き合いに口を出してくることはたった一人、ナイジェリアからの留学生をのぞいてありませんでした。

彼は大学で工学を学んでいました。真面目で成績、英語力ともに抜群でした。英語力がまだまだだった私に辛抱強く教えてくれる親切な人でした。ある日留学生何人かで遊びに行くことになり、車のない私を迎えにきてくれました。迎えに来てくれた時には何も言われませんでしたが、家に帰ってから、ホストマザーに「二人で遊びに行ったのか?」と聞かれました。

普段はそんなことを聞かないので変に思いながらも「みんなで映画に行くことになったけれど、私は足がないので迎えに来てもらった。」というと、「それならいいけれど、彼は私たちとは違うから二人で遊びに行くのはやめておいたほうがいい。」というようなことを言ってきました。

この一言は本当に強烈でした。ホストが人種に関してそんな風に思っていることを知ってショックを通り越して、その考えに正直引きました。私を迎えに来たせいで陰でそんな風に言われ、申し訳なく迎えに来てもらったことを後悔しました。

ただその時の私は『What would you do?』に出てくる人々と違って「それは違う。」と声をあげる勇気がありませんでした。ホストと言い争いになるのが嫌でだまってしまったんです。

20年以上経った今、どんな言動を取れる人間に成長したんだろうかと、『What would you do?』を見るたびに思います。

「それは違う。」と言える強さを持った人間になっていると信じます。

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