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コンセプトファースト―徹底的にフォーカスして設計されたClubhouseの体験/UI考察


こんにちはカイクンです。Clubhouse、なんであんなにみんな評価するんでしょ。
Product Designをする身としては思想と表現が合致する、価値提供がまっすぐなプロダクトだと考えてます。というわけで、メモがてら書いていきます。

結論Clubhouseのすべてはどうすれば会話が生まれるのかにフォーカスされて体験設計されています。招待制や無駄のないUIなどなど細かい話に意味はなく、Clubhouseが大事にしているコアコンセプトの理解が必要だと考えます。

🚩 A.全体のコンセプトと注力していると予想するグロースサイクルを解説
👨🏻‍💻 B.それらを達成している施策
🪐 C.最後にUI解説

この順番で説明していきたいと思います。

A. 「コンテンツを作るために、価値観の近い人を話しやすくする」以外やらない

Clubhouseは「コンテンツを作るために、知り合い/価値観の近い人で会話が起こりやすい設計」に全てがフォーカスされています。

日本でも人気なPodcastは2人以上で話しているものが多いと思います(Rebuild.fm、COTEN RADIOなどなど)が、これは複数人の方が話がしやすく聞いてる側も面白いからです。
1. テンポと音が変わるので聞いていて飽きない
2. ネタが尽きづらい
3. 話しやすい  etc
からであり、偶然ではないと思います。ラジオもそういう作りになっていると思います。

Clubhouseでもここは意図的に意識して設計しています。徹底的に”知り合い/価値観の近い人と会話が起こりやすい”にフォーカスされています。

コンセプト実現と拡散性を備えた全体のサイクル

「価値観の近い人同士で話をしやすくする」に従って以下のサイクルを回すことにフォーカスしていると考えます。資金調達によってSpeakerのマネタイズ施策が発表されましたが、それも起点となる「A」にフォーカスされていると感じます。

グロースサイクル

つまり

▼ 会話が生まれやすい
1. A = 会話のスタートが容易
2. B = 知り合い(フォロワー)の輪に告知される
3. C = 価値観の近い人と仲良くなりやすい
4. A = 満足してまたSpeakerになる....


を行うことで、話を聞いてもらえる満足度と新しい出会いへの満足度で、またSpeakerとしてRoomを作成するというサイクルが起きやすくなっていると思います。

これが全体像です。このサイクルを強くする工夫やUIを見ていきましょう。

ー ー ー

B.コアサイクルを達成する工夫

ここから実際にどんな工夫がされて体験ができているのか書きます。

1.初めてSpeakerになる設計

この部分はかなり入念に作られていると感じます。そして1度Speakerになればまたやりたくなる満足感を得られやすい設計になっている。

▼ Speakerになることを促す設計
a.招待されてすぐに、招待者との”Welcome Room"作成を促す通知
b.運営による"Welcome Clubhouse Room"
c.1人のRoomに初めて来た人は必ずSpeakerになる
d.ホームUI : 最も便利な位置にある導線は"Create Room"と"オンライン中"

まず”Speakerになる人を増やそう”と考えた時に、安易に「Speakerになりませんか?」「XXXXの話でRoomを作りませんか?」ということをしていない。Clubhouseの思想として”知り合い/価値観の近い人と話す"ことに全てが注力されているので、そういう単純なことをやるとワークしないことを理解して設計されています。

そのため”知り合い/価値観"の近い人というキーポイントを徹底的に利用して、招待者にサービスの使い方を説明させたり、運営自身でつながりの場を提供したりしています。

驚異的なのが2人目のRoom参加者は強制的にSpeakerになる設計です。僕も通知に反射的にタップしてカフェでSpeakerになってしまったことがあります笑

基本的に知り合いor興味がある人をフォローしている(させている)ので、これをやっても結果的に満足感が得られやすい設計になっていると思います。
こうまでして「2人で話した方が体験が良い」「Speakerとして話したが方が体験が良い」設計になっているのが嫉妬するぐらいすごい。
Clubhouse疲れするのは後者のSpeakerの方が体験が良い理由があるからでしょう。

ホームUIは"Create Room"のみを指の届きやすいBottom Navigationに配置。通知など会話を始めるのに関係ない導線は操作しづらいHeader(画面上部)に追いやってます。スマホ画面内のゴールデンポジションに徹底したこだわりを感じます。

つづいて話した後の体験。また話したくなる状態に持っていきやすくしています。

2. Speakerになると満足度が高い

▼ 1度Speakerになると満足感を得やすい設計
a.基本的に2人以上で話す設計になっている
b.部屋に参加者数はなく、"1人の人"と意識して話せる
c.話し手のソーシャルグラフに通知が飛ぶ=参加者増/出会いも増

まず既に触れた2人以上で話しやすくする体験にしている点。これによって誰もRoomに入らなかったとしてもおしゃべりは楽しいので、満足できる設計になってます。
Clubhouseは基本的にソーシャルグラフ=知り合い/価値観の近い人しか表示されないので、これが実現できています。コアコンセプトにフォーカス。
Podcastなどやったことがあればわかるのですが、1人で話すのは辛いです。しかもコメントも何もつかないとさらに寂しくて続けられたものではないです。

Room画面のUIですがこれも秀逸です。"話し手が気持ちよく会話できる"設計になってます。
1.参加者数という”数字"がない
2.代わりにRoom内のユーザーアイコンが表示され"人に話している感覚"
フォロワー数とかいいね数が重視される時代に「1人の重み」が重視される設計になっています。これが"Clubhouse"というネーミングにも現れているのが綺麗だなあ....と思うわけです。
リアルな場で人が集まって会話しているような体験。"ちゃんと聞いてもらえてる感覚"が話し手を満足させるんだと思います。

さらにSpeakerになるとSpeakerのフォロワーに通知が飛び、新しい人との出会いを加速します。これもSpeakerとしての満足度を上げますよね。
会話を起点に新しい出会いや、聞いてくれる人が増えるという設計になってます。

満足度が高いと、またSpeakerになりたくなるし、”あの人も呼んだら面白いんじゃない?”という飲み会に人を呼ぶ体験に近い想起で招待にもつながります。

3.結果的に知り合いが"知り合い"を連れてくる設計

Clubhouseがこれだけバズを生む理由としてソーシャルグラフを利用して通知を送ったり、Roomを表示する仕組みがあります。
ただ、この根幹は”知り合い/価値観の近い人”を出会わせて会話をしやすくするに集約されます。

▼ 会話を始めると通知が飛ぶ
1. Speaker同士は知り合い/価値観が近い可能性が高い
2.Speakerになるとフォロワーに”XXXが話し始めたよ"通知が飛ぶ
3. Roomに訪れたフォロワーを紹介するためにSpeakerにしやすい
4. また通知が飛ぶ.....輪が広がる......(けどうるさい笑

基本的にRoom内ではSpeakerになり話を始めやすい設計になっているのは先に書きましたが、新しくSpeakerになるとその人のフォロワーに通知が飛ぶのでさらに知り合い/価値観の輪が広がる設計になってます。
つまり、話しやすい人と出会いやすい設計になっているのです。

▼ Room UI  - 知り合い/価値観の近い人の可視化
・Followed by the speaker / Others のエリアがある
= Speakerは他のSpeakerも含めた知り合い/価値観近い人を探しやすい
= 聞いている人も同様

Room内もエリアがわかれていて"知り合い/価値観近い人"を可視化しています。これによってSpeakerにできる人を探しやすく、新しい会話や接点を生みやすいきっかけになってます。

さらにいうとオンラインの知り合いをRoomに呼ぶ機能もあります。徹底して話が生まれる方向に機能やUIが設計されていると考えられます。

以上がSpeakerを生みやすくし、さらに満足度を高める設計になっている点でした。次に聴く側の面白さにも触れておきます。

4. コラボの破壊力 - 知り合いの話は気になってしまう

基本的に「2人以上の知り合いや価値観近い人が話している」状態を生むことにClubhouseが絞っていることを今まで書いてきました。

この結果”知り合い/価値観近い人のコラボが常に生まれている”ことになるんですね。これがClubhouseが疲れると言われる原因であり、Clubhouseを面白くしている点です。

▼ 「コラボが基本」設計が生んだ破壊力
・基本的に2人以上で、知り合い/価値観近い人が話している
・フォローしてると通知がバンバン飛ぶ
・アプリを開けてもコラボしてる部屋しか出てない

”会話のしやすさ”を追求した結果こういう設計になってしまっていると考えています。人と会えない、ネット時代に興味しか湧かない空間になってしまっているんです....。

これが”その場限りの特別感”を出す要因にもなっていて、招待制がうまく回る仕組みや聞き逃しが怖い設計になっているんじゃないかなと思います。

5. 招待は原則、知り合いか価値観の近い人

一応招待制にも触れます。誰でも招待できるわけではなく”携帯の連絡帳に電話番号を登録している人”のみ可能になってます。

単純に電話番号ならサービス内にフォームを作って招待を飛ばす...とかもできそうですがやってないです。これは”電話帳に登録しているぐらいの関係性の人"に絞っているのが理由かなと思います。
つまりtwitterとかに投稿して誰でも招待〜ではなく、ある程度の知り合いのみを呼び込む設計になっているのかなと考えます。

ちなみに登録の初めに「フォローをしよう!」画面があると思うのですが、あれ招待者のフォローリストを参考にレコメンドされてます。
ここでも知り合いと価値観近い人を近づける工夫が見えます。

知り合いとは話をしやすいのでこれもコンセプトに従っていると感じます。

ー ー ー

体験を生む:思想と表現のコントロール

この5項目がすべて”知り合い/価値観近い人”とは話がしやすいに紐づいているのでここまで強いプロダクトに仕上がっていると考えています。

日本からなぜ生まれなかったんだ・・・・という声も初期見ましたが、創業者の方の過去のソーシャルサービス経験、Pinterestでのプロダクトマネージメント経験、音声サービスを1度失敗していると経験から生まれる、徹底したプロダクトへの思想と表現をコントロールできるスキルから生まれていると考えます。

創業者のPaul Davisonが前身のサービスとして作っていた「Talkshow」という簡単にポッドキャストを始められるサービスでの学びや、Pinterestに買収された「Highlight」での経験から来ていると予想します。

意味を創れるコンセプトを強く定義できるスキルに、プロダクトや施策への具体的現場感覚を持ち、数字で客観視できるオーナーが成した技ですよね。

勝手ながら少なくとも日本の現場には思想と具体感覚を持ったオーナーが少なく、数字や規模での評価に偏っている場面が多いなと感じたりはしています。

体験としては以上です!
最後に具体UIをささっと見て、終わりにします。

ー ー ー

C. 思想を表現するUI

最後にビジュアル付きでUIをみていきます。
大事なのは細かい要素が大事ではなく、思想があった上でこのUIであることへの理解だと思っています。

1. ホームUI

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とてもシンプルですが、やりたいことがはっきりしているからでしょう。

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何も考えないとBottomNaviに置きそうなものはHeaderにあります。
検索とか通知とか。優先度が低いからですね


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知り合い/価値観近い人=フォローしている人にめちゃくちゃ寄ってます。
Roomのロジックもフォローしている人が居る部屋のみ表示ですし。
会話が始まりやすいロジックを徹底してます。

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数が見えるのはここだけ。Room内には見えない

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ここが機能し始めるとこのサービスは別のサービスになります....

2. Room UI

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すぐに気になる人をSpeakerにPickして会話を盛り上げることもできます。

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空間(club/house)を意識できる設計に、結果的に1人の人として意識できる設計に。数を負わなくても満足もできます。

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会話をリスナーに邪魔されないんですね。あくまでインタラクションはSpeaker同士のみ。交流したければSpeakerになってね、体験良いし広がるから。というシンプルさ。

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不思議な楕円の理由、調べたら他に理由があるかも....

3. Welcome Clubhouse

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この通知にはびっくりしましたね...

ー ー ー

"デザイン"にはコンセプトが必須

すべてのものを取り込んでも上手く機能しづらいことは多いですよね。
そこで優先度や選択が発生するのですが、その判断基準はすべてコンセプトだと考えます。

事業、会社、動画などなんでもそうですが、デザインをする際にはこの視点を後回しにせず世に受け入れられるものづくりをしていきたいと思わせてくれるClubhouseでした。
(ちなみに僕は通知がうるさいのと、聞いていても残るものがないので、アプリはほぼ見ないようにしてます笑)

最後に東京から福岡に移住して会話の機会を欲しているので、記事を読んで気になった方がもしいらっしゃればお気軽にtwitter等でDMくださると嬉しいです。オンラインでお話しましょう。
Clubhouseで話すのもいいかもしれませんね〜。IDは@takumii_kaiです。

あ、もう1つだけ。Webデザイン、UIデザインを学びたい人向けのYoutubeもやっているので動画を見ていただいたり、紹介してくださいね🙋‍♂️

それでは。





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