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非内定者エッセイ:おやすみ

私は、多分だめだったと思う。
転職活動の面接が、である。

絶賛就職活動中の中で志望していた会社はご丁寧に内定者エッセイなるものが毎年更新されていて、各々の個性が爆発した生々しい体験記が20個程度綴られている。

こちらはタイトルにある通り、おそらくそうはならなかった人間の生々しい投稿だ。沼の底を細い目で眺めるような気持ちでいて読んでいてほしい。きっとこの先、期待できる言葉は一つもない。

何となく良くない流れはあった。
先週は仕事における偶然の不幸で億単位の案件を吹き飛ばした。
今週に入ってからもそれの影響を引きずってか普段ならしないようなミスを繰り返し続けていた。

そんな中、応援していた推しの選手があとわずかのところでオリンピックの代表権を逃した。本当に惜しかった。

当日はお守り代わりに持ち歩くと決めていた大好きな本を忘れていた。よく見れば読みかけの本と次に読もうとしていた積読のうちの1つだったと家に帰ってから気付いた。

スピリチュアルはなに一つ信じないけど、なんとなく悪い流れは感じていた。ただ、それも全く根拠のない感覚の話だ。他人の人生と自分の人生は関係がないし、自分の問題は自分だけのものだ。目に見えない「流れ」という曖昧な概念のその程度、吹き飛ばせなかった実力不足の自分が悪い。


厳密に言えばまだどうなるかわからない。まだ結果は来ていないからである。
だからいくら面接の手応えがなかったからと言って一縷の望みに期待して明るく待つこともできる。
ただ、心は案外脆いから、より高いところから叩き落とされるよりもはじめから地に落ちておいた方がマシだということで、現在全身から諦めムードを遺憾なく噴出させている次第だ。そして世間では多分これを「負け癖」と呼ぶ。


大一番を迎えるたびに「ああ、今回もだめなのかもな」なと思う節がある。弱気になる瞬間は誰にでもあるとして、その状態から抜けられるかどうかが、できる人とできない人の差なのだろうか。
強気の自分に還るには、成功体験を積むことが大事なんだろうなと思う。

とすると、自分が最後に成功したと思えるのはいつだろうか。大学受験かな。それ以外に何かあったっけ。悲しい哉、全然思い出せない。
かといって不意にフラッシュバックするような強烈な失敗も後悔もない。多分。良いことも悪いことも、ひととおり忘れてしまった。だから、自信はないけど、つつがなく生きていけてるこの人生に別に大した悲観もない。

ああ、まあ、こんなもんかと、いつも通り記憶の奥底へとさらりと流れていくのだろう。人生って多分そういうもんだ。20代半ばにしてこの感情は達観しすぎだろうか。分からない。しかし今はそう思う。


重苦しい面接会場から出てすぐに顔を合わせた誘導役の社員さんに、
「なんだか清々しい顔をしてますね」
と言われた。

自分では失敗したなという気持ちしかなかったけど、感情が顔に出やすいタイプでもあるし、初対面の社員さんに言われるってことはよほど滲み出ていたんだろう。

「詰めが甘かったなと思いました。でも後悔はないです。」
咄嗟に返したあのときの自分の言葉は本心なんだろうか。詰めが甘いのは大いに首肯するものの、後悔がないかと言われると、うーん、どうだろう。悩ましい。分からないけど、こういう時こそ、せめて言霊というやつを信じてみてやろうと思う。

とりあえず今日はもうなにもしない!なにもやる気が起きない!疲れた!食料も底をついたけど、注文した漫画を回収しにいく以外は外にも出ないのだ!そういう断固たる決意で布団から抜けずに過ごしている。

「貴重な日曜を何もせず終えてしまった」と後悔することもセットで成り立つこの休日の空虚な緩い幸福を盛大に噛み締めて生きている。外出はおろか立つことさえもしない。もう今日はそれでいいのだ。会社へと歩くときの地に足の着いた絶望を、感じるにはまだ20時間早い。 


一旦ここで区切りがついたので就活に使えればなんて思ってはじめたnoteも当面公開しなくなるかもしれない。

性格が悪いことに私は「また更新します〜!」みたいな投稿を最後に何年も更新が止まるようなアカウントを見ると寒気がするタイプだ。やるならやれよ、やらないならそんなこというなよ、そんな風に白黒つけたがる節がある。自分でピリオドを打つ美徳もある。
そしてなんとなく、今はこれ以上書く理由がない気がしている。だからnote書かないかもしれないとあらかじめ言っておく。

そうやって白黒つけたがる癖に「やらない」って言って「やる」のは許せる。不言実行への憧れというかなんというか、自分の天邪鬼っぷりが出てる。来月あたりにしれっと更新してそうな感じも否めない。だから「かもしれない」程度に留めてある。

とりあえず今はそんな自分の天邪鬼さに賭けて、面接の結果を待ってみたいと思う。







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