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「DESIGN CAMP @奥大和 2022」開催レポートVol.4 【Day15/マルサンフットウエアー】

2022年8月22日(月)〜9月5日(月)、「DESIGN CAMP @奥大和 2022」を開催しました。

「DESIGN CAMP @奥大和 (デザインキャンプ奥大和)とは?」
アジア各国で活躍するデザイナーと、奥大和地域を拠点に活動する、またはローカルに興味のある国内デザイナーが共同生活を通して地元事業者に寄り添い、様々なご縁をつなぐためのコミュニケーションデザインを制作・提案する奈良県主催のプログラムです。

DESIGN CAMP @奥大和 web」より

今回は、マルサンフットウエアーチームのプレゼンテーションをご紹介します。

「マルサンフットウエアー/Marusan footwear」とは?

株式会社マルサンフットウエアー/Marusan footwear (御所市)

履物の街御所にある工場
HEPサンダルの数々
西邨社長

1955年創業。先々代、先代より受け継いだ技術力をもとに、品質重視の製造がモットーとする。
企業理念は、『足の裏に笑顔を』お客様に笑顔を、作り手にも笑顔を。
国内生産に特化したモノづくりで、ファッションから量販店用まで、履き心地の良いヘップサンダルや皮革靴を製造している。


チームメンバー

<デザイナー/designers>

長光 宏輔/Kosuke Nagamitsu/ INtoOUT&Co.

奈良県山添村を拠点に活動しているグラフィックデザイナー、アートディレクター。
10年間、東京の広告代理店でグラフィックデザイナー、アートディレクターを務め、2014年に奈良でデザイン事務所 INtoOUT&Co.設立。
2019年より元自動車整備工場をセルフリノベーションして山添村へ移転。
グラフィック、Web、プロダクト、ファッション、サイン、インテリア、ブランディングと多岐に渡り、デザイン業務を行っており、県内県外問わず、個人・企業・行政など、幅広い顧客と取引している。
様々な表現の可能性を広げ、発信する場として、2020年7月より同山添村に事務所併設でギャラリーショップ&コーヒースタンドである、doors yamazoe(ドアーズヤマゾエ)を開店。

Gin & Hans(台湾/ Taiwan)/HOUTH

台北を拠点に、ブランド戦略とデザインに フォーカスを置くクリエイティブスタジオ「HOUTH」の共同代表。さまざまな作品を世界へ発信している。
Ginはグラフィックデザイナー。
Hansはクリエイティブディレクターでもあり、写真家。

HOUTH
台北を拠点に、ブランド戦略とデザインにフォーカスを置くクリエイティブスタジオ。さまざまな作品を世界へ発信している。


<通訳・コーディネーター / Translator Coordinator>
荒木琴乃(Kotono Araki)

奈良女子大学大学院博士前期課程在籍。大学で言語学と出会い、以来、言語学一筋に勉学に励 む日々を送っている。奈良の鹿と実家の猫たちが癒し。

Ann (台湾)

日本と台湾での経験後、 今はギャラリーショップ
fruit hotel taipei のスタッフ としてアーティスト応援の形を模索中。

「サンダルのイメージ」の整理、課題、問題点など

「事業者研修」の3日間では御所市を巡り、工場見学をするなど、マルサンフットウエアーの歴史や西邨社長の思いなどを理解していったチーム。

履き心地にこだわるものづくり
フォトシューティング
御所の街並み
御所の街並み
サンダルの型

そしてチームは、最初に「サンダルに対するイメージ」を整理しました。

「少し前までサンダルは、玄関や庭など少し近くまでの用事で履くもの、ヘップサンダルは量販店で売られている安価なもの、『サンダル=だらしない』など、ファッションのコーディネートからは外れるものというイメージがありました。

ところが最近は、スポーツブランドの多くがファッションアイテムの1つとしてサンダルをリリースし、デザインやディテール、素材などにこだわったファッション性の高いサンダルが多く登場してきています。

さらに西邨社長から、『履物業界全体として元気がない』と伺いました。
こうした状況から脱却するために、『品質の高い日本製をアピールすること、そのサンダルを直接消費者へ届ける必要があること』がわかりました」(長光さん)

こうした前提を踏まえ、チームはマルサンフットウエアーの現状の課題と問題点を下図のように整理しました。

70年近い歴史、奈良県産へのこだわりなど、魅力的なポイント

ネガティブな現状がある一方、魅力的に感じたこともあったと長光さんはいいます。

「大きく3つの魅力がありました。1つめは、御所市という履物作りの街で、67年以上の歴史があること。2つめは、奈良県産にこだわって製造されていること。3つめは、長い経験とノウハウで培われた、履物ならなんでも作ることができる幅広い開発知識と、自社で簡潔できるので小ロットで世界に1つだけの履物を作れる強みです。
そのほかにも、マルサンフットウエアーの企業理念である『足の裏に笑顔を』から伝わる抜群の履き心地の良さなど、たくさんの魅力を感じました」

そして、何より魅力的だったのは、社長の西邨さんが何にでも挑戦する前向きな考えと姿勢を持っていることだったといいます。

自社製品をもう1本の柱に。現状からの提案

こうした魅力的なポイントを意識しつつ、マルサンフットウエアーの現状を整理すると下記のようなことが浮かび上がってきました。

これらを改善しようと、チームは下記のゴールを設定しました。

「今まで主流であった卸売業者を仲介した量販店向けの商品(BtoB)に
比重を置いた形から脱却し、自社製品(BtoC)をもう1本の柱として
確立し、利益率をあげる」

そして、そのために各事業を整理し直し、短期〜長期のフェーズに分けて考え、今回は短期のフェーズの中でも特にBtoCの部分について提案していきました。

具体的には、「Webの入口は1本に絞る」、「ECはBASEのみ」、「SNSはInstagramを中心にする」こと。
そして消費者マーケットに焦点を当て、消費者への入り口を明確にすることにより、「新しい繋がりのあるブランドを作ること」としました。

また、これらを進めていくための軸として、下記のスローガンも発表しました。

「Re:GAIN、Walk Forward with a Big Smile 笑顔で前へ進もう」


「Re:GAIN」プロジェクト

チームは続いて、「Re:GAIN」のスローガンを軸に、「新しいものを得るために」として新ブランド名やロゴ、パッケージデザインなどを紹介。

さらに、「お客様との繋がりを取り戻すために」として、ホームページのリニューアル、ファッション分野でお客様とコミュニケーションをとりやすいInstagramの発信に集中する、リアルな体験(自社工場の試着体験やPOP UP&移動式試着車)など、コミュニケーションも提案しました。

そのほか、職人としての誇りを取り戻すためのコラボレーションとして、修験道に合わせた履物、アウトドアでのサンダル開発など、賑やかな街の風景を取り戻すためのオリジナルイベントとして、サンダルファッションショーや履物マーケットなども提案しました。

また、新ブランドは世界中で影響力のあるMADE IN JAPANブランドやセレクトショップで販売ルートを作ること、未来へ継承・つないでいくための長いスパンでの取り組みとして、「ゴセサンダルブランドのマーク」なども提案しました。

そして最後に、西邨社長に宛てたラブレターとも言えるようなメッセージを届けて、プレゼンテーションを締めくくりました。

今は減らしていく時期

西邨社長はチームのプレゼンテーションを受けて、
「今回初めて奈良県の事業に参加しました。色々な勉強をさせてもらって、ありがとうございます。
もともと何でもやらないと気が済まないタイプで、SNSやWEBなど色々やってきましたが、今は減らしていく時期にきていると言われて、なるほどなぁと思いました。
今回提案してくださったことを前向きに検討して、今後も良い商品を作っていけるようにがんばりたいです」と話しました。

【プレゼンテーション資料は下記よりご覧いただけます】

「1歩目のデザイン制作」へ

現状の課題や問題点に対し、様々な角度での提案を行なった各チームのデザイナーたち。

彼らからのラブレターとも言えるようなプレゼンテーションを受け、事業者3社はどのようなことを考えていくのでしょう。

プレゼンテーション終了後に全員で

「DESIGN CAMP @奥大和 2022」に参加したチームは今後、「1歩目のデザイン制作」に取り組む予定です。

引き続き、各チームの動きをレポートしますので、どうぞお楽しみに。