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Design Scramble Cast#1 佐々木俊さん

Design Scramble Cast」は、デザインプロジェクト『Design Scramble』が運営する参加型の音声番組です🌈 🎧 🤝

毎回様々な分野の第一線でご活躍されているクリエイターさんと、そのクリエイターさんと「お話がしたい」と応募してくださった若手クリエイターさんをお迎えして対談の様子をお送りしています。
こちらのマガジンでは、対談の内容を一部抜選してご紹介いたします。全ての内容を知りたい方は、音声番組「Design Scramble Cast」をぜひご視聴ください。

今回ご出演いただいたのは、佐々木俊さん(AYOND | アートディレクター,グラフィックデザイナー)と、浅野木の実さん(広告デザイン事務所 | グラフィックデザイナー)です。

Shun Sasaki
AYOND | Art Director, Graphic Designer
1985年仙台生まれ、東京在住。2010年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。2016年AYOND(アヨンド)を設立。2020年JAGDA新人賞受賞。
🔗:tumblr


1. 広告→デザイン事務所へのキャリアチェンジ

木の実:takuo.tokyoという広告系のデザイン会社で4月から働き始めました、浅野と申します。よくSNSなどで佐々木さんの作品やお仕事を見ていて、実際に会ってお話してみたいなと思っていました。よろしくお願いします。

佐々木:僕でよければ、よろしくお願いします。

木の実: 私は今、広告のお仕事をしているんですけど、学生の時は広告の仕事とグラフィックデザインの仕事ってそんなに違わないのかなと思っていたんですね。実際に就職してみて、業界の線引きなど結構違いを感じました。
佐々木さんは、広告の会社からグラフィックの事務所に移られましたが、そのときはどういうことを考えていましたか?業界による差はありますか?

佐々木:キャリアチェンジをした感覚はないですね。大きいところから小さいところに移ったというだけです。
僕は大学出る時に何がしたいとかも明確になく、代理店とか広告制作会社とか、みんなが受けてるから受けて、落ちて、ボーッとして就活時期を過ごしました。最終的にギリギリでアドブレーンという会社に入りました。当時で社員150人ぐらいの、広告制作会社としては大きい会社です。そこで、こういうことすると怒られるんだとか、電話の仕方とか、社会的なことを勉強したり、先輩から技術的なことも教わったりとかして。
広告自体が嫌だったっていうことはなかったのですが、その時点では30歳で独立しようと思ってたから、それを考えると大きい会社から独立すると、わからないことが多すぎると思い、規模の小さい会社に行きたいなと思いました。

そこで仕事をしながら就職活動をして、グリッツデザインという会社に入りました。デザイナー2人と社長1人の小さな会社で、小さいなりの動き方を学びました。もちろん自分でやらなきゃいけないことは増えます。いろんなとこに電話したり、イラストレーターとかフォトグラファーとやりとりをしたり、お金のことを考えたり。そういうことを勉強して、独立しました。
2社目も広告がメインだったのでキャリアチェンジした感覚はないです。大きいところから小さいところにキャリアチェンジをしたけど、広告からグラフィックデザインの会社に行ったという感覚ではない。そもそも僕自身が広告とグラフィックデザインの境目分けてないですし、違いがわかっていないです。

木の実さんは今広告の仕事していて、学生時代に思っていた広告の仕事の内容と、何か違うときがあるなって思うんですか?

木の実:学生時代はグラフィックデザインばかりしてたので、広告制作会社に入って毎日仕事も楽しく、全然嫌とかではないんです。でもグラフィックデザインの展示に行ったときに「ああいいなあ、ブックデザインとかCDジャケットとかもやってみたいな」と思いました。
今の仕事でもたまにロゴとかは作りますが、周りが完全に広告の人たちなので、作ってるものっていうよりは、人の関係性が違うように思います。

佐々木:それぞれの業界によって人は変わってきますね。今、僕は本やCDジャケットの仕事の比率が高いですが、会社に勤めていた時は、本の仕事はしたことがありませんでした。
何故本の仕事をするようになったかっていうと、個人に本の仕事の依頼がきたからです。最果タヒさんという詩人の方から出版社を経由して詩集のデザインしてくださいっていう話があって、そこから僕の本の仕事が始まりました。結局、会社がどうということは関係なかったんですよ。

死んでしまう系のぼくらに

▲ 最果タヒさんの詩集『死んでしまう系のぼくらに

会社の仕事の隙間で自分が思いついたものを作り、ネットとかSNSとかに上げるっていうのをライフワークにしてたんですよね。それを見てくれる人が何人か居て、その中に最果タヒさんがいて、仕事が来るようになったということです。
結局僕がやってることは、環境ではなく個人的なことから始まったこと。もちろん会社から教わった社会的な礼儀やソフトの使い方とか予算の付け方とかいろいろありますが、個人的なものと会社から学んだものを合わせて今の僕がいるという感じなです。だから、会社とかどうこうよりも、自分がどうありたいかの方が大事かなというふうに思います。

木の実:頑張ります…!

佐々木:チャンスは何かやってれば巡ってきます。それを取りこぼさないかどうか、ということかな。

2. デザインの仲間をどうやって見つけたか

木の実:同世代で活躍されてる方々が、同じ大学出身だったとかあると思うんですけど、そういった同じようなマインドというか、目指すところが似ている人と出会うにはどうしたらいいのでしょうか?何かのコミュニティに属することは、当時考えていましたか。

佐々木:いや、一切考えていなかったです。
同じマインドを持つ人間っていうのは、インターネットを見れば、自然と目に留まってくると思うんですよ。この人の考えてることとか、作る形とか、物事の捉え方とかって、私の感じてるものと似てるなとか。この人が作ってる作品の、ここが気持ちいいと思って作ってるんだろうなみたいのがわかる瞬間ってあるじゃないですか。ネットじゃなくてもいいんですけど、世界中の表現というものを見ていると、そういうものに出会ったりとかする。
仲良くなりたい、仲間になりたいとかっていうよりも、どっちかというとライバルを作ることが大事です。なんか気に食わないやつを増やすほうが重要です。別にその人と仲良しになる必要はなく、監視していればいいと思うんですよ(笑)あの人、気に食わないな!みたいな人を見つける方がお友達を作るより、デザイナーという立場では大事な気がします。

でもそういう風に思っていると、その人と結局会っちゃうタイミングっていうのは、いずれ出てくるものです。そこから知り合ってくってこともあるし。だからコミュニティに属そうみたいなことは考えなくていいと思いますけどね。自分がいいと思うものを作って行けば、おのずと引力を持ってそういう人と繋がりだすんじゃないですかね。
学生の時は出会わなかったけど、これからそういう人と出会うかもしれないし。木の実さんが僕をライバルとしてそういう目で見てもらってもいいですよ。僕もめちゃめちゃ木の実さんをライバルとして監視していこうかな(笑)

木の実:めちゃくちゃ怖いです...(笑)

佐々木:今のは冗談ですけど、僕は年齢とかもそもそも関係ないって思う。若くても、年配者の人でも共通に表現する人であるならば、そこは年齢とか性別とか関係なく、何か「悔しい存在」を探して出会っていく仕事なのかなって。そういうふうに目を光らせてると、自分の表現が磨かれるということに繋がると思います。

3. オリジナリティとは

木の実:私が去年卒業制作をやっていたときに、先生や大人の方に「誰々っぽいね」みたいなことをよく言われてて、ずっと悩みの種でした。制作においてオリジナリティとは何か思うことはありますか。

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▲ 木の実さんの卒業制作「2020 / graphical park」

佐々木:自分らしくしようみたいなことは考えたことないです。そもそもオリジナリティーとか個性とか言われますけど、個性とはもうすでに持ってるものの話なんです。それと、何かと似てるか似てないかみたいな話っていうのは、そもそも別な話なんですよね。

オリジナリティは誰しもが持ってるから、もうそのことについても考えなくてよくて、表現においては、やっぱり似る似ないみたいなものはつきものだと思うんですよね。

その場合に、どうしたら何かに似ないかというと、やっぱり知識とか経験とかに寄ってくると思うんですよね。だから学生は別に何かに似ても、別に僕は何の問題もないと思う。社会に出て、社会性をまとって発表する機会を持った場合には、何かに似ないようにする必要があるんですけど、それはやっぱり何回も作っては失敗するを繰り返すことで、形成されていくものだから、自分らしさみたいなものについては考えなくてよいと思います。
僕は自分自身を「自分の中に取り入れた知識とか経験とか技術とかでできた装置」みたいなものだとして、その「装置」にクライアントからの条件であるとか、そういうものを注ぎ込んで、そっから排出されたものが表現だと思うんですよ。
だからもう自分らしさというよりは、自分から通過して出てきたものが表現だと思うから、そこにオリジナリティは別にいらない気がするんですね。これ、伝わってるかな。(笑)

木の実:(個性を)出そうと思って出していないってことですか?

佐々木:考えてもうまくいくことって、あんまりない気がする。繰り返していくとまたこれをやってしまうとか、またこの色を使ってしまうとか、そういうことから、自分がわかってくる。
でも学生の時間内でそれを発見するっていうのはなかなか難しいことだから、何かに似てしまうっていうのは気にしなくてよくて、これから何者であるかとか、自分が何が作りたいのかっていうのを、探す作業を始めるのかなっていう気がしますけどね。

僕は「蛍光色とか派手な色を使いますね」って言われるんですけど、派手な色を使うぞって思ってるわけじゃなくて。素敵な組み合わせを考えてるだけなんですよ。でもそう言われるから、そこが世間と考え方が違うってことだと思うんですよ。僕が派手と思われてしまうけど、僕は世間の色使いが鈍いように見えるだけなんです(笑)個性と言えば個性だし、でも自分でそれを打ち出してるわけじゃないから、僕もモノクロの仕事もありますし。そうそれは繰り返したからで、そういうものが増えてたってだけじゃないですか。数を作ると見えてくるってことじゃないでしょうか、オリジナリティーは。

4. デザインをするときのスタンス

木の実:デザインをしてるとき、お仕事とかもそうなんですけどAかBか迷ったときどっちを残すとかそういった基準っていうかありますか。

佐々木:やっぱり同時に複数の案がいろいろ出てくると思うんですけど、作ってるときの、実際の自分のその案ができたときの感動し具合とか、そのドキドキした感じとか、このデザインが世の中に出ていったとしたら、例えばポスターが駅に貼られたとしたら素敵だなと思ったりとか、本屋さんにこんなデザインがあったらきっと面白いなとか、そういうことを作ってるときに思えた方を残す。
デザインでやっぱり社会に置かれるもんだから、基本的に作るときの感覚としては、こういうものが世の中にあって欲しいっていう願いみたいなものでもあると思うんですよね。だからそういう感覚を持てる方を選ぶと、なんか自分に正直なんじゃないかなと思いますけどね。僕はそうしています。

木の実:ありがとうございます。私も似ているかもしれません。自分が直感的に「いいな」と思った方を選ぶことが多いです。

佐々木:それでいいと思いますよ。正しいと思います。

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佐々木さん、木の実さんありがとうございました!
Design Scramble Cast」ではその他に以下のようなお話をしています。
興味をお持ちいただけたら、ぜひこちらから聴いてみてください🚪

💭 東京の美大に行かなかったコンプレックス
💭 SNSでの発信
💭 提案するアイデアの数

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📮 Design Scramble Castへの参加者を募集しています

「Design Scramble Cast」では毎月1つ、対談を配信予定です。
また、憧れのクリエイターさんと「お話ししてみたい」「相談してみたいことがある」という若手クリエイターの方も募集しています!
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それではまた、お会いしましょう👋🌈

Design Scramble Cast 公式サイト: https://designscramblecast.jp/

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