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マイクロ・ティーチング実践(インストラクショナル・デザイン)

大学院で学ぶ「学習のデザイン」、今回はID(インストラクショナル・デザイン)で実際の模擬授業を行なった内容です。

マイクロ・ティーチングとは

これまでIDでは授業を設計するために、学習目標・評価方法・教授方略の3要素で組み立てること、授業の効果・効率・魅力を高めるためのメソッドを学んできました。

ただし知識だけでわかった気になるのは危険で、教える側の自分が実際にできる技能や態度の3要素がそろってはじめて習得したといえます。

技能や態度は実践しないと学べません。そこでマイクロ・ティーチングという手法を用います。通常なら45分とか90分ある授業を15分に凝縮して、生徒役も数人に絞って行う、簡易的なロールプレイのようなものです。凝縮することで落としてはいけない大事な要素を見出せるという効果もあります。

学習目標を定める

僕の研究テーマは、こんなキーワードが要素に含まれます。

  • 創造性

  • 設計

  • 作品づくり

  • 科目の横断

まだ生煮えの状態ですが、これらを含めて授業として組み立てるためにマイクロ・ティーチングを行なってみました。演習はオンラインだったのでスライドを用いた内容を紹介します。

教授方略で実践する

では授業をはじめます。今日は顔の描き方を教えます。といっても絵の上手さではなく、ポイントは「観察」です。

人の顔には、目・鼻・口・耳・眉毛・髪の毛などのパーツがあります。このパーツの位置関係をじっくりと観察すると、絵の上手い下手とは別に、正確な人の顔が描けるようになります。

ここでは、おおまかな法則として位置関係のポイントを伝えるので、配布したプリントを使って、隣の人をみながら正面の顔を描いてみましょう。

でははじめます。

まず、顔の輪郭から描いていきます。

人によって割合はもちろん違うけど、日本人だと平均的には縦が3対して横が2にくらいになります。補助線を使って描いてみましょう。

次は目です。目はどの位置にあるのか。縦で見ると全体のちょうど真ん中あたりです。横で見ると真ん中からちょうど半分あたり。ここが目の中心です。まずは円や棒線で描いてみましょう。

今度は鼻。鼻はもちろん真ん中にあります。じゃあ先端はどのあたりかなというと、目と顎のあいだくらいになります。鼻の形もよく観察するといろいろだけど、とりあえず三角で描いてみましょう。

耳はどこか。メガネをかけている人の顔を見てみてください。メガネのつるは目の高さとおなじです。つまり耳の付け根と目の位置は同じになります。そして下のみみたぶと鼻の先端の位置もおなじくらいです。

口を描いてみましょう。鼻の下よりもあごの方が広いはずです。なので目の位置から2/3くらいの位置がバランスよいはずです。

最後に毛を足します。意外と見落としがちだけど、髪の毛って結構ボリュームあるんです。なので頭の上にポンとのっている感じで足してみましょう。眉毛はおでこの下あたり。

顔のパーツの位置関係を比率で示すとこうなります。これはもちろん平均的な傾向なので、ここから顔の特徴を見つけていくとそれぞれの人の顔らしさを描くことができます。

どうでしょう?これまで漠然と見ていた人の顔、もっと細かく見るようになれましたか?

人の顔だけではないです。身体だったり、植物や動物だったり、乗り物などの人工物でも、こういった位置関係を意識して観察することで、より多くのことに気づけるようになります。教科書を読むだけでなく、手を動かしてみて学んでみてください。

用紙は授業の最後に回収しますので、残り時間で位置関係を直してみたり、目のかたちなど具体的に描いてみてください。

今日の授業はここまでです。

学習評価をする

あらためて、この授業設計はこのように組み立てています。

  • 学習目標:物理を解剖学的に観察して可視化する技能を身に着ける

  • 評価方法:プリント用紙を回収して内容を理解しているかを確認する

  • 教授方略:位置関係を教えながらステップごとに描いてもらう。

自身の研究テーマのキーワードでは、こんな点を含めています。

  • 創造性:頭で理解するだけではなく描く技能を身につける、基本を理解したうえで応用の表現ができるようにする

  • 設計:解剖学的な観点で位置関係の成り立ちの視点を得る

  • 作品づくり:自分ならではの顔を描ききる

  • 科目の横断:理科をベースに数学や美術要素を取り入れ、解剖学や設計工学の入門的な要素を1つの作業に統合する

今回のマイクロティーチングではプリントを回収することは再現できなかったけど、生徒役の人からは「絵を描くってそういう観点があるんだ」という関心を高めるコメントをもらえたりしました。

録画をしていたので、自分の話し方、テンポ、重要な点をしっかりと伝えられているかを確認します。めちゃ恥ずかしいですが、自分を客観的に見ることで改善点に山ほど気づけます。

学んだこと

実践の前後を比較して解像度の違いを自覚することができます。

いくら理屈でそれらしい組み立てができていたとしても、やってみないと具体的に気づけなかったことがたくさんありました。普段の仕事でもプレゼンをぶっつけ本番でやるより、さっと練習するだけで対策は立てられるので、授業でも同じことだと体得できました。

知識・技能・態度がそろって「学習のデザイン」ができるものだと再認識できました。

今日はここまでです。


デザインとビジネスをつなぐストラテジーをお絵描きしながら楽しく勉強していきたいと思っています。興味もっていただいてとても嬉しく思っています。