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オンラインシンポジウム「郊外住宅地再生フォーラム2020」開催記録3 〜新百合ヶ丘・実践

2020年6月6日、郊外未来デザインラボでは「郊外住宅地再生フォーラム2020」を開催しました。ここでは、その報告として、フォーラム前半の事例報告の内容を紹介します。後半のディスカッションについては、2021年7月に発行予定のプロジェクトレポートに掲載しています。全体概要についての記事はコチラ

事例報告②新百合ヶ丘

<実践(株式会社ミサワホーム 石塚禎幸)

持続型住宅地のあり方をモデル化


 ミサワホームでも今まで多くの分譲地を作ってまいりましたが、分譲地としてはあまり大きなものはなくて、小規模〜中規模のものが多いために、私たちがこの取り組みの中で行なってきたのは、ミサワの分譲地も含めて地域全体をフィールドとして持続型住宅地のあり方についてモデル化をしていこうと、このように考えて取り組みをしています。1つの切り口として、住居と交通の視点から高齢者のみならず全ての生活者が外出あるいは来客を増やすための住環境や仕組みづくりを探っていこうと考えています。交通については、小田急電鉄さんが新百合ヶ丘地区で実施を行う予定であったオンデマンド交通の取り組みがあり、これにのらせていただきました。

オンデマンド交通


 オンデマンド交通について簡単にご説明します。オンデマンド交通は需要に応じた時間、経路で運行する交通のことを言いますが、基本的な運行方法としてはお客様からのアプリを通じて呼び出しに応じて、近くの出発地、これをミーティングスポットと呼んでいますが、随時経路を変えながら運行して到着地近くのミーティングスポットで降りる、こういう交通のことを指しています。新百合が丘地区においてはですね、駅を中心にして一定のエリアの中で、バンタイプの自動車で運行をしております。次に、今回の取組のスキームについてのご説明です。2つのフェーズに分かれております。第1フェーズとして、オンデマンド交通を実証されている小田急電鉄さんと共同しまして、運行地域の居住者(ミサワのオーナー)に対して、継続居住の意向やニーズ、あるいはオンデマンド交通の利用実態に対してアンケートやインタビューを行うと、いうことを東大と一緒にやっております。第2フェーズとして、実装のフェーズになりますが、そのアンケートの結果を受けてですね、継続居住のために必要な環境整備のモデルつくって、実際に改修を行っていこうと考えています。

アンケート調査


 本日は、調査結果を中心にお話をしていきたいと思います。新百合ヶ丘地区は小田急線で新宿駅から快速急行で25分ほどの位置にあります。地形的には多摩丘陵の一角になっていまして、坂の大変多い地形になっています。麻生区の高齢化率は約22%ではありますが、この地図でご覧になって分かる通りで、高齢化率の高い所が部分的にあります。例えば、駅の南部の王禅寺地区、 あるいは、私たちの分譲があるような千代ヶ丘地区です。
 調査地区内には、ミサワホームのオーナー様は約813戸ございます。このなかで弊社の分譲地2地区を少し説明したいと思います。1つ目がオナーズヒル新百合ヶ丘で、千代ヶ丘にございます。1985年に分譲した31区画の分譲地になります。分譲から35年が経過していますが、その間に敷地分割等もございまして、31区画が現在35区画に増えています。空き家はございませんが、その途中に住み替えが12件ほど発生しています。ただ、現在でも非常に良好な住環境が維持されています。もう1つがプライムタウン新百合ヶ丘です。新百合ヶ丘の駅からはバスで20分以上ということで比較的離れた場所にありますが、現在のところはリフォーム等が適正になされていて、街区としても非常に良好に維持されています。
 3番目に、ここからはアンケートについてお話をしていきたいと思います。説明した2つの分譲地も含めたオンデマンド交通運行エリアの中で、 弊社ミサワのオーナー様にアンケートを行いました。 特に高齢化が進むエリアにおいては、将来のお住まいの居住意向など把握することを目的にしてアンケートをとりました。 アンケートに回答いただいた方が90名いらっしゃいますけども、属性としては、年齢が70代が中心、その次に50代になります。それから世帯種別としては夫婦のみと夫婦と子が大多数を占めます。それから居住年数としましては15年から20年が1つの山、また40年以上がもう1つの山となっております。
 このアンケートを三つの視点でまとめています。一つ目の住まいの利用状況と改修意向です。これは現在使用してない部屋についてお聞きしていますが、アンケートの中で、51%は現在洋室を使っていない。その使っていない洋室の中で、74%は2階にあり、子供部屋のことと推測されます。また駐車場についても現在使用していないという回答が16%ほどありました。
 二つ目は継続居住の意向です。これは80%の世帯が継続居住の意向を示しています。その中でも住まいの継承予定者(多くが子供だと思います)への相続意向の確認をしているという方は40%にとどまっているということ。住まいの継承の見通しが立ってないという方、またその理由としてすでに子供が住宅を保有している、あるいは遠隔地に居住しているというのが上位になっています。
 それから三つ目、地域でのコミュニティ形成です。住民との繋がりがなにかしらあるよという回答が65%でした。そのうち60%の方が、来客が何かしらあると答えておりまして、多くは友人、あるいは親族だということです。一方、近隣住民の来客があるというのは10%と少なくなっています。この結果を受けて、高い継続居住意向があるものの、それを現実のものとするために対策の方向性をまとめています。
 1つ目の住まいの利用状況と改修意向ということで、空室の多くは二階の洋室ということです。それから町との接点としての庭、あるいは駐車場の活用の仕方、これをきちんとイメージとして持ってもらうためにモデルの提示が必要と考えています。2つ目として、継続居住の意向です。これは次世代へ継承するための制度をきちんと啓蒙すること、それから、ストックの活用などによって資産価値を持ち続けるための改修、この必要性を訴求していくことが必要かなと考えています。それから3つ目、地域でのコミュニティ形成についてですが、多様な活動を可能にする空間のあり方、このモデルの提示をしっかり行なっていくということが必要かなと思っております。
 現在、2回目のアンケートをとるということで計画をしています。これはオンデマンド交通のその利用の前後での生活の変容や、あるいは来客や外出の機会を増やすための住まいの改修ニーズがどういうところにあるのかというようなことを調査します。その中で改修イメージを提示しまして、モデルとなるモニターを募集して実際にこの改修を行なっていく予定です。

新型コロナウイルスの影響


 最後に新型コロナの影響ですが、1つは住宅地においては、中心市街地に集積していた機能の一部、これを住宅あるいは住宅地が代替するというようなことだろうという風に思っております。住宅地の中では、買い物やコンビニなど必要だろうということは、すでに言われている通りですが、ミサワホームでもこの地図の中で水色の丸印があるかと思いますが、いわゆる48条許可をとってコンビニを作るというようなことも行っています。
 今後の話ですが、今よりもコロナが落ち着いて、外出や交流だとか、気をつけながらもある程度できる状況になれば、駅前にワークスペースや保育、飲食、こういう機能の拡充が求められるのだと思います。いずれにしても中心市街地が持つその業務機能が家とか家の周りだけで完結するのではなくて、駅付近も含めた街としてその機能を代替するというようなことが今後求められると思います。そういう意味でも今回取り組んでいる交通と住まいの視点、こういった取り組みが役立ってくのではないかと考えています。以上になります。