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ヒューマニズムの外

ある人が「ヒューマニズムは人間が過酷な現実を見ない為に創り出した願望的な嘘」と言った。
ありのままの現実世界を冷徹に直視した時、ヒューマニズムの内側に存在する様々な欺瞞に気が付くと言うのだ。
公正世界バイアスなどは最たるところであろう。人間は意味や理由を求めるが、その挙げ句には証明されていない物語に身を委ねる事で、生きる為の精神的安定を図ろうとする。大脳皮質を肥大化させ高度な思考力を持つ代償として、我々は虚構を受け入れる悪癖を持たざるを得なかったのである。
だから我々は皆、この物語でできた殻に守られて存在している。
物語は様々である。
時には宗教であったり思想であったり信念であったり、ぼんやりとした世界観に過ぎないかも知れない。しかしながら人間の心象で作り出されたものは、それがどんな妥当性を具えていようが全て幻想である。我々はヒューマニズムの殻を破る事ができない。ゴータマシッダールタが仏道修行をやめてしまったのは、人智というものの限界が見えたからではないかと思う。
我々はそれぞれがそれぞれの人生を検証してそれぞれの世界観を構築して来たと言えるが、どんな物語を信じ帰依しようとも、何処かでその外側の存在に感づいている筈なのだ。何故なら、タンパク質で出来た生物だからである。
ヒューマニズムの外に神は存在する。
成程、断言できるのはそこまでかも知れない。


2024.4.13

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