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【2023年度版】 秘境 ワハーン回廊 自力での行き方/楽しみ方#1 準備編

イントロ:この記事について

険しくも美しい大自然、
シルクロードから現代まで多層的な歴史、
オフラインな人々との関係と人情、
観光化されていないない日常の風景、
その全てが詰まったワハーン回廊に
皆さんも行ってみたくないですか?

前回のタジキスタンの記事の中で紹介した
ワハーン回廊について大々的に取り上げていこうと思います。
本記事を合わせた4部構成で
・ワハン回廊に行く上での知っておくべきこと
・首都ドゥシャンベでしなければならないこと
・ワハーン回廊までの行き方/楽しみ方
・ワハーン回廊からの帰り方(←すごく大事)
を中心に紹介していきます。

一記事目をかざる本編では、
・この記事について
・ワハーン回廊とは?
・ワハーン回廊の見どころ
・どうして今ワハーン回廊にいった方がいいのか?
・大枠な日程
について可能な限り詳細に書いていきます。


どうして今ワハーン回廊にいった方がいいのか?

観光化されていない=予定調和のない旅の快感

首都ドゥシャンベを離れると、
詳細で確立した観光情報がほとんどありません。
決まった時間と価格で動く公共交通機関もほとんどありません。
予約ができる宿泊施設もほとんどありません。

特にワハーン回廊では、
Booking.Comで予約できるホテルはほとんどなく、
現地のお家に泊めさせてもらうゲストハウスが主流です。
加えて、行きたい場所に行ける交通機関があるかは、
その日になってみないと分かりません。
なので、旅の予定が立てずらいです。
オンラインによる事前情報がない=不確定要素が高まります。
予定を大枠だけ決めて、あとは運に身を任せる冒険があります。
予定調和を持たない旅の快感を味わえますよ!!

私の乗るシェアータクシーが途中溝にハマる。

ヒッチハイク

前掲の内容に少し重複します。
ワハーン回廊を含め、首都の外では、
価格や時間が一定の公共交通機関がほとんどありません。
そのため、否が応でもヒッチハイクをする可能性があります。
ヒッチハイクに挑戦してみたい方は、
特にワハーン回廊へ行ってみてください。
誰しもがヒッチハイクするはずです。
ヒッチハイクデビューとしていかがでしょうか?

ヒッチハイクで待ちぼうけ。

難易度高めの旅

前掲の二点と重なる部分ですが、
とにかく難易度の高い旅になります。
明日にどこへ辿り着ける分からない
その日暮らしな日々が続くと思います。
そんなハプニング満載の旅が実はとてつもな贅沢だったりしますよね。

絶景/人/歴史に魅せられる

【ワハーン回廊の見どころ】で紹介するように、
自然が織りなす歴史に心を奪われると思います。
温泉、絶景巡り、秘境、登山が好きな人には、
たまらないと思います。
加えて、アフガニスタン、キルギス、イランといった様々な
地域の信仰や生活様式がミックスした、
過酷な環境を生きる人々の生活も非常に興味深いです。

本記事を読む上での留意点

留意点① 自力で行く人向け

本記事は、
自力でタジキスタンのワハーン回廊や
パミール高原を旅をしたい人向けの記事です。

留意点② 100%正確な情報ではない

本記事の情報は、
私自身が現地で2023年8−9月に調べたり経験したりして得た情報、
現地で出会った観光客から得た情報、
英語/ロシア語で調べたインターネットの情報
をもとに執筆したものです。

残念ながら、100%正確な情報の提供が難しいのが実情です。
その理由としては、
・ワハーン回廊/パミール高原自体の観光が進んでいないことによる
 交通網の時刻の持てないこと
・インターネット上でも情報がほとんどないこと
・(価格や行き先)交渉ベースであること
・それぞれワハーン回廊に行く人の「運(Luck)」が絡んでくること
という点があるからです。

例えば、
ゴルノ・バタフシャン自治州(ワハーン回廊やパミール高原)に
入る上で必要な諸手続きについて、
他の旅人と価格が同じではないことがありました。
加えて、地元の人とロシア語を話せる旅人、話せない旅人では、
交通や宿の面でも価格が異なっていました。
上記の理由から、
大枠の情報や個人的経験に基づく情報は与えることができますが、
100%正確である自信がありません。
観光がいい意味で進んでいないので、
開拓要素が十分に残されている国です。
自身が現地で調べることが求めらる、
めちゃめちゃ冒険ができる国です!!!

留意点③ 今回紹介する旅の経路

本記事のコースは
首都ドゥシャンベ(Dushanbe)→ホログ(Khorog)→
ワハーン回廊(ビビファティマ Bibi Fatima / ランガール Langar)
→パミール高原→ホログ→ドゥシャンベ
の経路です。比較的メジャーな経路です。
東の中国側、北のキルギスのオシュ側のコースを取る方には、
あまり参考になりません。

今回の私の経路。

ワハン回廊とは?

タジキスタンのゴルノ・バタフシャン自治州の南側
(アフガニスタン北東部と国境沿い)
に位置し、東西に伸びる細長い地形のことです。

紫色の箇所がタジキスタン側のワハーン回廊です。

深く切り立った谷を走るワハーン川をまたぐ形で、
タジキスタン側とアフガニスタン側の住民たちが
それぞれ生活をしてます。
「世界の屋根」として名高いパミール山脈や
ギンドゥクシュ山脈が交わることから、
高山が占める割合が高い位置行きでも知られています。
タジキスタン側ワハン回廊の起点となるホログや
イシュカシムという町ですら、すでに2000Mを超えています。
そのため、気候は真夏でも15℃に届く程度の暑さで、
真冬は、−20℃にまで冷え込む日があります。
一年を通じて降水量が少ないため、
茶色/鼠色の乾燥した大地が多くみられます。

高山で寒冷な地域であり、
農作物も栽培の期間も限られています。
そのため、牛や羊などが貴重な食物資源になります。
草が生える地域が少ないことから、
村の人々たちと協力して、いろいろな場所に移し
草を食べさせ続けているとのことでした。

紀元前4世紀から1700年に渡って、
中国と地中海を繋ぐ道として、
この回廊はシルクロードの経由地でもあり、
多くの商人がここを行き来していたそうです。
マルコポーロもおそらくこの回廊を通ったとされています。
その人流に応じて、この回廊には
宿泊施設や見張り台、城壁などが建ち並んでいたそうです。
20世紀には、南下するロシアとそれに対峙するイギリスが
緩衝地帯として定めた地域でもあります。
この地域に住んでいた住民たちは、
この帝国主義の争いの中で、
アフガニスタンとタジキスタンに
分断されてしまいました。
また、キルギス系の祖先を持つ人々は、
この回廊で羊を飼いながらノマド生活を送っています。

言語や信仰、アイデンティティという様々な点で
タジキスタンの首都、ドゥシャンベとは異なる様相があります。
言語においては、公用語であるタジク語に加えて、
ワハーン語、シュガニー語といった少数言語が話されています。
ワハーン回廊で私が出会った人々のほとんどは、
(少なくとも挨拶や基本的な会話を教えられるレベルの)
ワハーン語を話していました。
谷を挟んだアフガニスタン北東部でもこのワハーン語が話されています。
また、ワハーン語とは称さず、パミール語と呼んでいる方も
見かけました。
ワハーン回廊では、こうした少数言語と公用語のタジク語、
そしてソ連の名残で行政や普段の会話で用いられるロシア語が
交差する言語の仕組みがあります。
ちなみにロシア語も十分に通じました。

首都ドゥシャンベのイスラム教スンニ派とは異なり、
この地域ではシーア派が強い勢力を誇っています。
お祈りの回数やイスラム教の歴史認識などで、
見解が異なります。
加えて、ワハーン回廊を含めたゴルノ・バタフシャン自治州の中では
イラン方面から来たゾロアスター教の信仰も受け継がれています。
例えば、一般のお家などにお邪魔すると、
四角を重ね合わせたように天井の様式を見ると思います。
ゾロアスター教において、太陽とその光は信仰の重要な要素です。
最初の四角形が神アフラ=マズダ、次の四角が火、その次のには地球、
などなどの意味が込められています。

こうした言語的、信仰的差異が、
ソ連独立後の1992年に起こった内戦による悲しい歴史と関連して、
「タジキスタン人」とは別の民族意識を生み出しています。
例えば、パミール高原で
私がヒッチハイクの際に拾ってくれた方は、
シーア派十二イマームを信仰する自身を「パミリ(パミール人)」
と自称していました。
また、私が宿泊したワハーン回廊では、
シーア派、ワハーン語話者で、自身を「ワハーン人」である
と名乗っていました。
タジキスタンという国民国家の中に、
必ずしも自身を「タジキスタン人」と呼称するが
全てではないのです。

こうした独特な気候、多層/多様な言語や歴史が織りなす
非常に興味深い地域です。

ワハーン回廊の見どころ

ワハーン回廊の全ての見どころを回っていないなため、
全てを網羅していないと思います。
私の知り得る限りで、
見どころを紹介していこうと思います。

川の向こうがアフガニスタン

タリバンが政権を奪取した2021年以降、
よりアフガニスタンへの旅行が難しくなった今日この頃。
タジキスタン側ワハン回廊からワハン川を挟むと、
目に見える距離にアフガニスタン側ワハン回廊が見えます。
段々畑や親子が戯れる風景、一般家屋などを見ることができます。
アフガニスタンの田舎の生活を垣間見る貴重な機会です。
ちなみに、タリバンの旗が見えたり、
銃声が聞こえたり・・・・。

川の向こう側にはアフガニスタン!!

温泉(ビビファティマ、ガラム・カシュマ、ローカル温泉など)

ビビファテマ温泉

パミール高原は温泉の聖地です!!
地元の人々が訪れるローカル風呂から
タジキスタン中から観光客が集まる秘湯まで、
様々な温泉が点在しています。

特に、タジキスタンでも人気の秘湯である
ビビファティマ(Bibi Fatima :預言者の娘)はオススメです。
幸運や多産、安産などの効用があると信じられ、
タジキスタンの様々な地域から観光客が集まります。
時間に応じて男女入れ替わり制です。
下の写真の洞窟風呂では、
温泉の中にある人が一人入れるくらいの穴に入り、
そこに沈む小石を拾って持っておくと、
幸運が訪れるらしい。

ビビファティマ温泉

ヤムチャン城壁

クシャーン朝(45年〜3世紀中葉)により建設されたとされる
城壁の一部です。
行き交う商人たちの保護を名目に建てられました。
特にこのヤムチャン城壁の保存状態が良く、
当時の石造りの建築模様が伺えます。
城壁から眺めは、当時栄えたシルクロードの険しさと美しさを
見せてくれます。

エンゲレスピーク草原(Engels Peak Meadow)


タジキスタンに聳えるパミール山脈は、
「世界の天井」と評される登山国です。
ワハーン回廊には、
6500Mの標高を誇るエンゲレスピークを
正面から迎え入れるように広けた草原があります。
ロンガールという村から4−5時間片道のデイハイクで
行ける距離でありながら、
パミール山脈の絶景を楽しむことができます。
その地に住む羊飼いや牛飼いに会うこともできます。
水源があるため、この草原を起点に、
登山家たちは6000M級の山に挑戦していきます。
パミールの高山に挑戦したい方は、
是非、この草原に行ってみてください!!

塩湖

パミール高原の
標高3000Mを超える場所には塩湖が点在しています。
カラコル塩湖を筆頭に、
パミールハイウェイを走っていれば、
数々の塩湖に遭遇するはずです。
それも高塩度と高標高のため、生命が湖の中で生きることができません。
そのため「死の湖」と喩えられる場所もあります。
年々水量が減ってきているため、
なるべき早く見に行ったほうがいいと地元の人が言っていました。

ゲストハウス

ワハーン回廊では、
地元のお家に泊まらせていただくのが基本です。
その地に住む人と
必ずといっていいほど交流があります。
熱々のプロフ(Prov)に舌つづみをしながら、
温かい布団に出迎えられてはいかがでしょうか。

サイクリストの聖地

中国やヨーロッパを横断して、
ワハーン回廊とパミールハイウェイを横断する
強者が集まります。
自転車好きにはたまりません!!


出発前の準備

ビザの申請が必要か?

このリンクに指定された52カ国の国々は
30日以内のビザなしの入国が可能になりました。
日本もその国の中に入っています。
ちなみに30日以内であれば滞在可能とされていますが、
実際には、入国時から土日を除く10日間以内に
(一部の情報だと日曜日を除く)
OVIRという行政機関で、
レジストレーション(Registration)をしなければなりません。
この申請の手間と出費を避けたいのであれば、
12日目で出国した方が安全です!!

ワハーン回廊のおすすめの時期

7月下旬〜9月上旬です。
高山地域であることから、
最も暖かい時期である夏に行くのが好ましいです。
また、夏は観光業が賑わうので、
他の季節と比べて、交通量が多く、
ヒッチハイクや移動手段が見つけやい時期でもあります。

基礎体力 / 高所順応 / 寒暖の変化

タジキスタンの国土の80%以上が3000Mを超えいます。
そのためとにかく環境が厳しいです。
ワハーン回廊の起点となるホログ(Khorog)という町でも
すでに2000Mの標高に達しています。
そのため、
お住まいの国での運動はさることながら、
登山などをして高所に慣れておきましょう。
もしも自信がない方は、
高山病の常備薬を持っておくといいです。
また、昼夜の寒暖の差の激しいです。
様々な面で体へのケアが求められる旅だと思ってください。

装備

<必須なもの>
ーパスポート
ー帽子
 夕方までは刺すような日差しです。
ーダウンジャケット
 夜が寒いです。
ー長ズボン/スカーフ等
 イスラーム教が支配的な国であるため、
 肌の露出が多い服装は避けるべきです。
 ゲストとして招かれた場合や、
 モスクのような神聖な場所に入る際に、
 着用しておいた方がいいです。
ー持ち歩きができる水のフィルター
 ワハーン回廊では村のゲストハウスに泊まります。
 念の為、水道や山水から水を汲む可能性を踏まえて所持しておきましょう。
ーポータブル充電器
 村全土が停電する、ヒッチハイクが長丁場になるなどのリスクを
 踏まえて、念の為持っておきましょう。
ー非常食
 例えば、カップラーメンやプロテインバーなど。
 現地のスーパーでも、ドライフルーツやスニッカーズなどが購入できます。
 ヒッチハイク失敗時などに備えて持っておきましょう。
ードル/ユーロの現金
 ワハーン回廊では、現金払いが基本です。
 そのため、現地の通貨であるソモニ(Somoni)の
 交換媒体であるドルやユーロを用意しておきましょう。

<必須ではないが、あったら役立つ>
ー日焼け止め
ーテント
 ヒッチハイクが失敗し、路頭に迷った時などに便利です。
 私も一度使用しました。
ーロシア語/タジク語の学習経験やフレーズ帳
 ワハン回廊では、英語は通じないと思っておいた方がいいです。
 私の場合は、念の為ロシア語を半年ほど学習してから行きました。
 ちなみに、ロシア語がなくても、なんとかなります
 (実際何人もそういう人に会いました)。
ー国からのお土産
 現地の人に招待された時のお礼などで
 持っておくと便利です。
 私は折り紙の鶴を渡しました。

タジキスタン入国前に知っておくべきこと

①GBAO Permitが必須

ワハーン回廊、またはホログ(Khorog)方面のパミールハイウェイを
目指す観光客は、このGBAO Permitと呼ばる許可証が必要です。

ゴルノ・バタフシャン自治州には軍の検問所があり、
そこで、パスポートと一緒にこのGBAO Permitを提出することになります。
私の場合は、現地に到着してから申請を行いました。
詳しくは、次回のドゥシャンベ編で明記します。

②Registration (住所登録)をする必要な場合がある

行政の営業日を含めないで10日以上タジキスタンに滞在する場合は、
必ず住所登録が必要になります。
タジキスタン入国から、
平日に日数が10日以上を超える前に、
住所登録をしなくてはなりません。
ただし、行政営業日に土曜日が含まれているのではない?
という噂もあるので、
申請やその時間的/金銭的コストが気になる場合は、
12日以内にタジキスタンから出た方いいでしょう。
この申請も【ドゥシャンベ編】でお伝えします。


旅のおおよその日程

ここでは大枠の日程とその期間中に
最低でもやりたいことを記載しておきます。
おおよそ10日から13日ほどの期間を見ておけば
安全に出国にたどり着けると思います。

長時間の移動が続くだけでなく、
ホログ(Korogi)以降は
常に2000M-3500Mの標高にいることになります。
そのため、高所順応や休息のために
余裕を持った日程を設けた方がいいです。

加えて、前掲でお伝えしたように、
ワハーン回廊を目指す場合は、
ドゥシャンベ、または、その他の主要都市にて、
ゴルノ・バタフシャン自治州に
入るための許可証を取る必要があります。

これ以降は、Google Mapのリンクと共に
地名を載せておきますので、ご確認ください。

【1日目/2日目:ドゥシャンベ(Dushanbe)
・GBAOの申請(必須)
・Registrationの申請(タジキスタンにて2週間以上の滞在の方は必須)
・両替やキャッシングによる現金調達
・Sim Cardの購入

【3日目:ドゥシャンベ→ホログ(Khorog)
・ホログへ移動

【4日目】
・深夜にホログ到着
・休憩?

【5日目〜10日目:ワハーン回廊
・ワハーン回廊+パミールハイウェイ観光
ガラム・カシュマ温泉(Gram Chashma Hot Spring)
イシュカシム(Eshikashem)散策
ビビファティマ(Bibi Fatima)
ヤムチュン城壁(Yamchun Fortress)
ワハーン回廊沿いの村々
塩湖
エンゲレス・ピーク草原(Engels Peak Meadow)

【11日目:ホログ→ドゥシャンベ】
・ドゥシャンベへ帰還

【12日目〜14日目】
・観光
・出国(ウズベキスタンのサマルカンド/コカンドへ移動も可能)


いかがでしたでしょうか?
なんとなくでも
ワハーン回廊へ行ってみたい方、
タジキスタンへ行ってみたい方、
冒険/ヒッチハイクに挑戦したい方、
登山家、
バックパッカー、
その他の読者さん、
の参考になれば幸いです。

これ以降は、
ドゥシャンベ編、ワハーン回廊編、帰還編の3部を
個人的経験と調べた情報を交えながら冒険譚風に
書いていきます。


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