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新しい暖かさ

 


 清々しい光に包まれる4月。染井吉野の花びらが風に舞い、初夏の花と若葉の色とが混じり合いながら野を染め上げている。

 花の写真を撮りによく出かける「日野江植物公園」は、九州最北端の街、北九州市門司にある。この門司は観光名所として有名だが、気象的にとても興味深い場所。小高い山を挟んで西に関門海峡、東は瀬戸内海へつながる周防灘の二つの海に面し、同じ区内であっても、西は日本海側気候、東は瀬戸内海式気候に微妙に分かれているというユニークな地域でもある。

 この植物公園は東の周防灘側の斜面にあり、晴れた日には明るい陽射しが降り注ぎ、海風が心地よい。先日訪れた際にはビオラ作家による新しい品種が展示され、初夏の花シャクナゲやツツジ、サツキもすでに満開に近かった。花壇には見たことのないユニークな花も登場し、賑やかな彩りを添えていた。



 「ヒーリングメソッド」にも多種多様、ユニークなものがあると知ったのは、若い頃ボディワークを習っていたインドのアシュラムでのこと。

    「チベタン・パルシング・ヒーリング」はチベット仏教僧が考案したメソッド。床の上で大の字に横たわるクライエントの手首や足首の脈動を指先で感じながら、ヒーラーは腰や腹に踵を押し当てる。しばらくじっとしていると内臓の中に蓄積されていたネガティブエネルギーが、まるで熱い湯が両足からどどっと流れ出るように一気に解放される感覚がやってくる。

    「カラーパンクチャー」はドイツ人ピーター・マンデル博士によって考案されたもの。鍼灸の代わりに7色のクリスタルガラスをはめ込んだペンライトをツボやチャクラに押し当てる。すると7色の光が経絡を伝って身体じゅうに広がり、身体が必要としているエネルギーバランスが自然に起こる。これだけで深いリラクゼーションが訪れるのだから、身体はまさに神秘としか言いようがない。人間は「光」の存在である証し。因みにこのメソッドは本国ドイツで医療保険適用の対象となっている。



    他にも様々なメソッドを体験したが、ユニークなボディワークの筆頭と言えば「サイキック・マッサージ」をおいてほかにない。

 見た目は普通のオイルマッサージと変わらないように見える。しかし働きかける部位がとてもユニークなのだ。一般的な施術では、身体の緊張、ブロック、痛みなどの「問題点」に働きかけるが、サイキック・マッサージではリラックスしている部位に働きかけるという奇想天外なワークをする。

 このメソッドの創始者アメリカ人セラピスト、サガプリヤ・デロング氏は、誕生の経緯についてこのように語っている。

 ことの起こりは1970年、私がカリフォルニアのエサレン研究所で働いていたときに遡ります。マッサージをしているときのことでした。私は私の手が、マッサージを受けている相手の「生に関する情報」を、拾い上げていることに気づいたのです。それは言葉や映像に置き換え得るものでした。

Happy soul academy



サガプリヤ・デロング氏
Happy soul academy

著書
マスターズ・タッチ
あなたの内の男と女 -愛と自由を手に入れる魔法


 クライエントの身体に触れ、そこから「生に関する情報」を言葉や映像に置き換えて拾い上げるサイキック能力というものはとても稀有なものだろう。

 愚生は30数年前に一度彼女のカウンセリングを受けたことがある。何を質問したか、それに対して何を言われたか、どちらもすっかり忘れてしまった。しかしすぐ目の前に座る彼女の人間離れした透明な白い光のような存在感が印象深かった。人格やエゴ、緊張、そうした個人的な土台が消えてしまい、「存在」にゆったりと寛いでいる人のように感じた。


サイキック・マッサージの概要 〜 創始者 サガプリヤによる説明

 サイキックマッサージとは、ふたつの存在の出会い、ふたつの魂がひとつになることです。

クライアントは本質に触れられ、活気づけられるので身体的のみならず、精神的にも深いリラクゼーションを体験することができます。まるで長い旅路の果てに、かつて住んでいた所に帰り着いたような、ほっとしたくつろぎを感じます。

それはまさに言葉では言い表しようのない、「存在」の中心に根を下ろし繋がった感じです。そこではすべてが気楽で、うまくいかないことなど、何もありません。

サイキックマッサージのセッションには、三つの重要な側面があります。

・第一は、足と七つのチャクラのエネルギーチェックです。

クライアントの身体の中に、すでに瞑想の質にチューニングしている部分を探していきます。これらの部分はセッションの間、直接体に触れ、広がるように誘うことで、サポートされるでしょう。


・第二は、まだ魂と調和していない身体の部分のサイキックリーディングです。

これらの部分は過去の衝撃的な出来事の記憶、幼少期に課せられた条件付け、文化的環境から受け取った誤った思い込みを担っています。セッションの中でプラクティショナーは、クライアントの自然な表現を妨げている、こういった事々を話すことになるかもしれません。


・第三は、サイキックマッサージそのものです。

ボディワークのスキルを使って、筋肉や筋膜、関節などに閉じ込められているエネルギーに接触する新しい機会をクライアントに与えます。こうすることでエネルギーシステム全体が活気づけられます。


サイキックマッサージでは、特定の体の部分を選んで、そこに焦点をあてます。どこを選ぶかは、チャクラの開閉の度合いによって、「支柱(アンダーピニング)」──── つまりエゴの土台のように、ほとんど全ての人の中にある、自分自身を「存在」から孤立させる、もしくは「切り離す」古い選択が、どこにあるかによって決まります。

サイキックマッサージのセッションの目的は、ブロックや障害をとりのぞくことではありません。その目的は、既にポジティブな傾向を持つ身体の部分にある、くつろぎ、セレブレーション、歓びの量を増やすことです。

その結果、この質が比例してより大きくなります。

無意識的に凍りついている身体の部分は、この新しい暖かさに影響されます。そしてそこにある恐怖や緊張は、どんな直接的な対面や介入も受けることなく、ほとんど気づかれずに溶け去るのです。

Happy soul academy



 サガプリヤ氏の指導を受けた日本人セラピストからサイキック・マッサージを何回か受けたことがある。やはり身体から言葉や映像化されたメッセージをリーディングできる人だった。
 
 それは普段まったく気づかない無意識の暗闇に光を当てるような体験となった。自分自身の身体の奥に封印されていた心の叫びは、意識の光に照らされる日を長い間ずっと待ち望んでいたかのようだ。リーディングは当時の自分の内的状況を明確に紐解いてくれるものとなった。
 
 ある時のセッションで担当した女性セラピストから言われたリーディングはおおよそ次のようなものだった。
 「激しい波が打ち寄せる断崖絶壁の上に暗い表情で佇んでいる男の姿が見える」と彼女は言った。それはまさに当時の自分そのものだった。現実を前にして途方に暮れ、深刻に思い悩んでいたのだ。
 しかしリーディングを進めていくうち「身体の奥にパン(牧神)のような陽気で軽やかに野を歩く男の子の姿が見える」と言った。それは自分の中にいるインナーチャイルドだった。
 インナーチャイルドの陽気さが中心にある為に、男性性の深刻さに歯止めがかかり暴走せずに済んでいた。そうした状況を「内なる女性性は遠巻きにしてただ傍観していた」のだった。
 その後のマッサージでは、身体の陽気なエネルギーに満ちたエリアに働きかけられた。やがて生に対する深刻さが和らぎ、子供心に満ちた陽気さを取り戻すことができた。その結果、互いにそっぽを向いていたような男性性と女性性とが出会い、バランスを取り戻すことができたのだ。
 このバランスを取ることは、外側の人間関係のバランスを回復させる魔法となる。


 私はクライエントの内的存在ビーイングに出会うための方法を捜します。クライエントが内面の広がりにくつろぐのを助けるような言葉を捜します。その広がりにくつろいだなら、クライエントは自分の取り巻く状況をありのままに見ることができます。何の非難も、判断も、意見も、好き嫌いもなしにです。だからと言って、私がいつもソフトな応対をするわけではありません。時に私の言葉は強い衝撃を与えます。時には鋭く応答します。それでもその言葉が相手の内的存在ビーイングに届いたならば、その人の内奥にあり、真実を知っているその部分は、大きな重荷を降ろし、そしてくつろぐことができるのです。

サガプリヤ著「マスターズタッチ」



 サガプリヤ氏の言葉には、このワークのみならず、私たちの日常における自分自身のこと、或いは人間関係に対する理解へのヒントが少なからず含まれている。

 「サイキックマッサージのセッションの目的は、ブロックや障害をとりのぞくことではありません。その目的は、既にポジティブな傾向を持つ身体の部分にある、くつろぎ、セレブレーション、歓びの量を増やすことです。
その結果、この質が比例してより大きくなります」

 私たちは日頃、自分自身や周囲の人間、社会環境にある「問題や欠点」などのネガティヴィティに気を取られやすい傾向がある。人には本来生まれ持ってきたポジティブな感情よりも、ネガティブな感情を優先する性質「ネガティビティ・バイアス」を持っているからだ。

 しかしながら「くつろぎ、セレブレーション、歓びの量を増やす」ことに意識を向け、重点を置くと、このポジティブな傾向が徐々に大きく広がり、問題や欠点は反比例するように小さなものへ感じ方が変化する。

 精神世界や自己啓発などでよく目にする「自分が変われば世界は変わる」という言葉の真意は、このことからすれば「意識を向ける重点が変われば自分と世界は変わる」ということではないかと思う。




 「無意識的に凍りついている身体の部分は、この新しい暖かさに影響されます。そしてそこにある恐怖や緊張は、どんな直接的な対面や介入も受けることなく、ほとんど気づかれずに溶け去るのです」

 新しい暖かさが広がる時、問題は気づかれずに溶け去ってゆく。

 「新しい暖かさ」─── くつろぎ、セレブレーション、歓び。

 冬の寒さから解放された春の花たちにとって、新しい暖かさに包まれ、くつろぎ、祝い、歓びに満ち溢れることは、まさにお家芸である。


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北九州市 日野江植物公園
























































































































madeleine
junko takamisawa




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