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しわを芝居の味方にしよう!

小林でびです。
先日『俳優のためのデモリール撮影ワークショップ』を3日間、おかげさまで大盛況だったのですが、ちょっとした「気づき」があったので書いてみます。

それは「しわ」について。

今回は意外と年齢層が幅広くて、60~70代のシニア俳優が何人も。 午前中に自己紹介動画を撮影したんですが、彼らを見ていて「あ~。しわがいい味出してるなー」と思ったんですよね。

そう、しわはその俳優さんの「表情の履歴」なのですよ。

この俳優さんは笑顔で人生を過ごしてきたんだなーとか、必死で歯を食いしばって生きて来たんだなーとか、作り笑顔で周囲に気を使って生きてきたんだなーとか、不安なことがいっぱいあったんだなーとか、皆に愛されて生きてきたんだなーとか・・・顔のしわの寄り方でその俳優さんの人生が透けて見えるんです。

なので例えば自己紹介動画の撮影中に、そのシニア俳優さんが何もせずに普通に立っていても顔に「履歴」が現れているので、もう既にそれがしっかりと自己紹介になっているんですよね。これは役をキャスティングしやすい!

しわ、いいな~と思いながら、午前中いっぱい自己紹介動画を撮り続けました。そして昼食をはさんで午後、いよいよ演技のシーンの撮影です。これはまたいい画が撮れそうだなーと思っていたら、ところがどっこい。ここで予想外な展開が!

しわに抵抗する俳優さん。

自然体で演じている俳優さん達は、見事にしわを味方にして演じていました。しわが役の人物に年輪を与えて、存在感と味わいが増す。しわが演技を強調して、深みを与える効果があったんです。いや~素晴らしいなと思いました。

ところが自然体で演じるのではなく、表情を意図的に作って演じようとする俳優さん達は・・・それと真逆だったんですよね。

演技で意図的につくった表情が、その俳優さん本来の顔のしわとケンカをするんです。

怒りしわがクッキリと刻まれているのに、満面の笑顔で演じても、何か裏がありそうな表情になってしまって、素直に笑顔に見えないとか・・・その逆も。ウソの表情を作ってる顔に見えてしまうんですよね。

その俳優さんが日常的に使っていない表情筋をムリして使って演じようとしたときに、そのお顔に刻まれたしわと矛盾して、よくわからない表情になってしまうのです。
ひとがひとに嘘をつくときの表情というか・・・とにかく魅力的じゃない!

なのでそういう俳優さん達には、意図的に表情を作って演じるのを控えてもらって、本当に心が動かして、それが表情と連動するように演じてもらう流れに演出しなおしました。
そうすると徐々にしわがいい効果を出して、味わいのある芝居になっていったんです。

しわは俳優にとって宝物。

俳優さんが役の人物として、心の底から笑ったり怒ったり悲しんだりするときに、しわはその表情に深みをあたえます。人生の年輪を与え、魅力を与えます。

しわは俳優にとってじつは宝物なんです。

しわが邪魔になってしまうのは、自分自身に不自然な芝居をした時です。
たとえば若ぶった芝居をしようとするとき、しわは逆に浮いて、悪目立ちします。


でも自分に素直に芝居するときには、しわは味わいを生み出します。
しわは悪いもんじゃありません。
親が子供を慈しむ、おじいちゃんおばあちゃんが孫を慈しむ、恋人のことを可愛いな~と思う時、ひとの顔には自然にしわが寄るじゃないですか。そのしわしわな顔はこれまた魅力的じゃないですか。

芝居の中でいい人ぶろうとするときも不自然なしわが寄って、その俳優さんが本来持っているしわとケンカします。詐欺師みたいな表情になっちゃうんですよね。詐欺師の表情って不自然じゃないですか。あれですよ。
ここでひとつ教訓を。

しわを、年輪を芝居の味方にしたければ、無理に表情を作って演じるのはやめましょう。

しわはそのひとの「表情の履歴」であり「感情の履歴」であり「コミュニケーションの履歴」でもあります。情報のかたまりです。
そしてその俳優さんの個性のかたまりでもあるんです。悪いしわなんてありません。どれもその人が一生懸命生きてきた人生の履歴なんですから。

しわを隠すのではなく、「よいしわ」を育ててゆきたいですよね。

表情筋も「人生の履歴」!

俳優さんのしわについて色々書きましたが、これってじつは筋肉の発達にも言えるなーと思います。

どの表情筋が発達しているか、どの表情筋が全く発達していないかも、その俳優さんの「人生の履歴」そのものですよね。
体の筋肉もその俳優さんの「生活の履歴」そのものです。


映像ってそれらが正直にすべて映ってしまうものなのでw、隠したりごまかしたりすることはできません。それらを全肯定したときにすばらしい佇まいがあらわれるのでしょうね。ボクは深くそう感じます。

よいしわを、よい顔を育てましょう!

小林でび <でびノート☆彡>


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