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「プレイングマネージャー」が抱えているかもしれない5つの感情パラドックス

株式会社MIMIGURIで、組織コンサルタント・組織ファシリテーターをしている矢口泰介です。

今回は、2024年3月12日(火)に実施されるMIMIGURIの無料ウェビナー「組織変革のパラドックスを乗り越える「新時代のリーダーシップ」を紹介します。

ただ、せっかく紹介するのですから、私の最近の関心にひきつけて、私は「感情パラドックス」をこんなところに感じているよ!こんな話題にもつながるよ!ということを書いてみようと思います。


プレイングマネージャーが抱える葛藤がある

ほとんどのミドルマネジメント層が「プレイングマネージャー」

産業能率大学総合研究所の調査によると、ミドルマネージャーのおよそ98%(!)がプレイングマネージャーである、という結果が出ているようです。

何を隠そう私もプレイングマネージャーなのですが、プレイングマネージャーは、自らもプレイヤーでありながらもメンバーをマネジメントする立場である、という複雑な立ち位置ゆえに、多くの葛藤を抱えることになります。

そしてその葛藤は、正解も前例もない、不確実で不安定な「無理ゲー」化していく社会においてますます深まる傾向にあるのではないでしょうか。

プレイングマネージャーの葛藤は、どこから生まれるのか

プレイングマネージャーの葛藤はどこから生まれるのかというと、それはひとえに「自らもプレイヤーである」ということに由来していると思います。

多くの場合、プレイングマネージャーには、「プレイヤーとして活躍している人」が指名されがちです。営業であれば、優秀な成績を上げているとか、良質なクライアントを抱えている、という人です。

そういう人は、会社からの評価や期待が大きいため、「マネジメントを誰に頼もうか」というときに候補になりやすいのです。
しかし「優秀なプレイヤー」のままでは、マネジメントがうまくいかない、ということがしばしば起きます。

「優秀なプレイヤーである」ことを評価されていたはずなのに、マネジメントになったとたんに、それを否定されてしまう(という気持ちになる)、にも関わらずプレイヤーとしても仕事を続けざるを得ない、ということが、プレイングマネージャーの最初の難関でしょう。

プレイングマネージャーが抱えているかもしれない5つの感情パラドックス

では具体的に、プレイングマネージャーが抱く葛藤には、どんなものがあるのでしょうか?

書籍「パラドックス思考」において着目されているのは、「感情パラドックス」という問題です。

感情パラドックスとは、問題の背後に、矛盾する感情Aと感情Bが存在するような問題です。このどちらかの感情を優先すると、対極の感情が 蔑ろにされ、結果として納得のいく答えが出せなくなるような問題です。

「パラドックス思考」第1章 パラドックス思考とはなにか

感情パラドックスは、一人の人間の中に起きます。人間は唯一の「正解」を持って生きられるわけではなく「あれもしたい これもしたい」という感情を持つのが自然です。
しかし、その感情たちが矛盾を生じさせたとき、「葛藤」となって表れてくるのです。

さらに「パラドックス思考」では、パラドックスの基本パターンとして、5つのパターンが紹介されているのですが、今回はこれに沿って、プレイングマネージャーが抱えてしまう葛藤の正体に迫っていきたいと思います。

1 パターン【素直⇄ 天邪鬼】
2 パターン【変化⇄安定】
3 パターン【大局的⇄近視眼的】
4 パターン【もっと⇄そこそこ】
5 パターン【自分本位⇄他人本位】

「パラドックス思考」第4章 パラドックスの基本パターン

1 パターン【素直⇄ 天邪鬼】 

自分の本心に基づく「素直な欲求」と、本心に反する「天邪鬼な欲求」のあいだで生じる感情パラドックスです。

プレイングマネージャーには、やはりプレイヤーとしてのプライドがあります。このプライドがあると「チームとして成績を上げたいが、自分より優秀なメンバーを認めたくない」という感情が、ついつい発生してしまいます。

マネジメントとしては、優秀なメンバーがいることはチームにとって喜ばしいはずだが、プレイヤーとしてはなぜかモヤモヤしてしまう

そんな嫉妬と焦燥がないまぜになった生々しい感情があるとき、しばし、意思決定がゆがんでしまったりします・・・。

2 パターン【変化⇄安定】

「現状を変化させたい欲求」と「現状を安定させたい欲求」のあいだで感情パラドックスが発生するパターンとされています。

プレイングマネージャーは、会社から「現状の変革」とか「新しい領域への挑戦」とか、そういったことが大小、期待されています

しかし、プレイヤーとしての立場から見ると、着実で慣れた方法を変えたり、新しいことに挑戦することはときに「非合理」に見えてしまいます

ましてメンバーを巻き込もうとなると、自分でも「納得していない」状態でメンバーに相対せざるを得ず、反対意見や不安・心配の声が上がることも予想されれば、ちょっと腰が引けてしまうでしょう。

事程左様に、必要なのはわかっていても、いざ変化を起こすアクションは非常に面倒くさいということが多いのです。

3 パターン【大局的⇄近視眼的】

「俯瞰・大局的な欲求」と「近視眼的な欲求」のあいだでの感情パラドックスです。

マネジメントに求められる視点の時間軸は、年単位の「長期」目標ですが、いっぽう、プレイヤーがつい見てしまうのは、月や四半期単位といった「短期」的な目標です。

「長期」「短期」の目標達成の動きが合致していれば問題ないが、ときに、ずれてしまうことがあります。

例えば営業でいうと、目の前の予算達成は気になるものですが、目の前の数字だけにとらわれると、長期的に望ましい顧客関係性が築けていない、ということも起こり得ます。

しかし、自らも数値を追うプレイヤーであると「予算未達になるかもしれない」というプレッシャーは大きく、長期のことなんか考えてる場合じゃない!となることはしばしばあると思います。

4 パターン【もっと⇄そこそこ】

何かを「もっとプラスしたい欲求」と「そこそこに抑えたい欲求」のあいだで感情パラドックスが発生するパターンとされています。

プレイングマネージャーはとにかく忙しいと思います。自分の仕事でも手一杯なのに、メンバーのサポートやマネジメント業務までが求められるからです。

「プレイヤーとしての仕事」は「仕事をたくさんする」ことでさばけても、マネジメントの業務には終わりがなく、タスクは膨大です。プレイヤーとしての仕事をする時間はほしいが、マネジメント業務はいい加減に休みたい、という状態になってもおかしくありません。

さらに、マネージャーとしては、メンバーに対して「もっと仕事をしろ」とは言えません。自然、自分自身の働き方も「実態はアクセルを踏んでいるが、ブレーキを踏むことを良しとせざるを得ない」という状況になっている方も多いかもしれません・・・。

5 パターン【自分本位⇄他人本位】

「自分の視点に基づく欲求」と「他人の視点に基づく欲求」のあいだで感情パラドックスが発生するパターンです。

マネージャーになると、人を承認するという機会は増えますが、自分自身がほめられたり承認されることは少なくなります

プレイングマネージャーだって、プレイヤーとしての工夫とか、スキルをほめてほしいこともあるでしょう。しかし、マネージャーのことをメンバーがほめたり、賞賛してくれる機会は多くないかもしれません。
また、マネージャーの上司からも、プレイヤーとしての評価はしてもらえないことが多いと思います。

決してほめられたくてやっているわけではないが、まったく承認がないと、仕事のやりがいも減退してしまいます。この点、非常に悩ましい問題だなと思います。

プレイングマネージャーとしての矜持を大切にしてほしい

・・・とつらつらと書いてきましたが、もしかすると、今書いてきたことは、プレイングマネージャーをやっている方であれば「マネジメントのバッドパターン」として、言われたり、学ばれているかもしれません。

しかし、私個人の体験としても思うのですが、人間そんなに器用ではありません。プレイヤーとマネジメント、いちどに、二つの役割をこなすことは、そもそもとても難しいことです。その前提に立って、まず自分の感じている「感情パラドックス」を受容してあげてほしいです。

そして、プレイングマネージャーとしての創意工夫や試行錯誤の結果生まれている、今の役割に対する矜持を、大事にしていただきたいのです。

このnoteでは、これからしばらく「人材育成」や「マネジメントとしての成長とは」といったテーマで、記事を書いていく予定です。

組織におけるパラドックスについて考えてみよう!

最後にもう一回お知らせです!

2024年3月12日(火)に、組織変革のパラドックスを乗り越える「新時代のリーダーシップ」無料ウェビナーを開催します。

企業経営や組織変革時における「新時代のリーダーシップ」や、“矛盾”を乗りこなすための鍵を、『パラドックス思考』著者の2人がお伝えします。(お申し込みいただくとリアルタイムが難しい方もアーカイブ配信のご案内ができます)

ぜひお申し込みください!

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