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【教育現場でデジタル活用】近未来教育フォーラム2022「Being AVATAR」を開催しました。

2022年11月24日、デジタルハリウッドは「近未来教育フォーラム2022」を開催しました。

デジタルハリウッドの教育実践と研究成果を発表する場として、2010年より毎年開催している近未来教育フォーラム。教育DXの現在地をよりよく理解することを目的に、デジタルハリウッド内外の有識者による講演を行っています。

3年ぶりのオフライン・オンライン同時開催となった今年のテーマは「Being AVATAR」。コロナ禍により急激に進んだ仮想空間=メタバースの進化。この別次元の創出ともいえるテクノロジーの発展により、メタバース内で使用されるアバターと実在する人間との関係性が複雑化しています。

今回の近未来教育フォーラムでは、株式会社Moguraの久保田 瞬さんをお招きし、「アバターが生み出す新時代のデジタルライフの意味や価値」をテーマに講演。また、教育DX、高大接続に関する講演も行い、多くの方にご参加いただきました。

このnoteでは、当日の様子と講演者によるアフタートークをお届けします。

Being AVATAR:アバター文化の現在地

最初のプログラムは、アバターが生み出す創造的なデジタルライフの意味や価値について、改めて問い直すための基調講演です。

イベント全体の司会進行を務めたのは、デジタルハリウッド株式会社まなびメディア事業部の細野 康男(ほその やすお)と、デジタルハリウッド大学4年生の田中 あゆみさん。

田中さんは、一般社団法人lightfulの代表理事として公教育の改革に現在進行形で取り組んでいる教育実践者。「今日は、教育の現場で活躍されている先輩の話を聞くのが楽しみです」と、意気込みを語りました。

オフライン会場であるデジタルハリウッド大学(DHU)の駿河台キャンパスには、教育機関・自治体・企業の皆様が多くお集まりになりました。オンライン会場のYouTube Liveには、青森や京都、宮崎など全国各地から「見てます!」というコメントも。

ほどなく基調講演へ。久保田 瞬さんはリモートかつアバターでの登壇となりました。

久保田 瞬(くぼた しゅん)さん
株式会社Mogura代表取締役 /「Mogura VR」編集長 / XRジャーナリスト

冒頭、会場の参加者へ「アバターをお持ちの方は?」という質問を投げかけると、パラパラと手を挙げる方がいました。YouTube Liveでは「ゲームプラットフォームのTwitchで使ってます」という声が上がる一方、「まだ持っていません」というコメントが多数を占めました。

これに対して久保田さんは「ひとり1つ以上のアバターを持っている人は、現時点では少数派」と話しつつも、「マクロな変化は起きていませんが、ミクロな観点ではアバターやVR空間の発展が、個人の働き方や余暇の過ごし方などに、大きな影響を与えている」と主張。

個人の変化は大きなうねりとなり、いずれ社会変革が起きると久保田さんは予想しました。

教育DX:学びの再定義。デジタル活用の促進

有識者3名が、教育データの利活用について議論

続いてのプログラムには、デジタルハリウッド大学大学院学長補佐・佐藤 昌宏(さとう まさひろ)先生、慶應義塾大学総合政策学部教授・中室 牧子(なかむろ まきこ)先生、奈良教育大学学長補佐・小﨑 誠二(こざき せいじ)先生が登壇。

左から、司会の細野、小﨑先生、中室先生、佐藤先生

講演テーマは、教育におけるデータの活用目的や、教育現場の現状、課題を解消するためのアクションプランについて。

佐藤先生は「いつでも・どこでも・誰でも質の高い教育を受けられるために、教育データが必要不可欠」と主張。何らかの事情で教育を受けられない学生が増えており、社会インフラとして学習者本位の体制を整備する必要がある、と危機感を示しました。

中室先生は「教育データは献血のようなもので、きっとどこかで困っている人の助けになるはず」と話します。個人情報の漏洩リスクにも触れながら、従来のマス教育から個別最適化教育に移行するために、データ活用が重要であることを強調しました。

また小﨑先生は「データやテクノロジーを活用することによって、客観性の高い評価ができる。それを学生本人や先生、友達などが共有し合い、わいわい楽しく学習できる環境が理想」と教育にテクノロジーが介在する未来について語りました。

アフタートークその1

トークセッションが終了したあと、佐藤先生と小﨑先生に追加取材。イベントを終えての感想を聞きました。

——本日はご登壇いただきありがとうございました。お三方で議論をされてみていかがでしたか。

小﨑先生:学校の授業とは違って、世代がさまざまな不特定多数の方へ向けて話すのは新鮮で、専門的な話になりすぎていないかは若干心配でした。ただ、別大学の立場が違う先生とお話しすると、話したいことが次々と湧いてきて、フォーラム自体は楽しむことができました。

佐藤先生:僕も小﨑先生と同じで、楽しかったというのが一番の感想です。それぞれアプローチは違えど、教育に掛ける思いや理想像は通ずるものがあって、違う現場でも同じ場所を目指していることを実感しました。

——教育DXに関心を寄せる、たくさんの方が視聴されていたと思います。

小﨑先生:教育DXと言うと、スケールの大きな話に聞こえたり、教育現場と関係がない人にとっては遠い話に聞こえてくるかもしれませんが、わたしは身近なことだと思っています。

今は学校や塾だけが学習する場所ではありませんし、そもそも何が学びで何が遊びなのか、カテゴライズできない状況です。いよいよ、遊ぶように生涯学習ができる時代になると僕は考えています。

佐藤先生:教育分野で活動している方だけでなく、それ以外の方が参入いただけるのは、とても喜ばしいことです。デジタルハリウッドの関係者であれば、自身のクリエイティビティをどんな分野と掛け算するか考えるかもしれませんが、ぜひ教育にも目を向けてほしい。

僕たち内部の人間の凝り固まった視点ではなく、新しい観点から意見をいただくことで、新たな常識が形成されると思っています。

高大接続:2025年の入試をつくる、そして考える。

学生と社会人が一緒に考える「これからどうなる!?大学入試」

最後の講演のテーマは「高大接続」。ゲストとして、学校経営コンサルタントや教育YouTuberとして活躍中の山内 太地(やまうち たいじ)さん、「スタディサプリ進路」編集長の仲井 美夏(なかい みか)さんが登壇。デジタルハリウッド大学が行っている入試改革の実践例に触れつつ、これからの大学入試について考えるセッションです。

左から、司会の小勝、田中さん、仲井さん、山内さん(リモート出演)

DHUからは入試広報グループの小勝 健一、在学生代表として司会の田中あゆみさん、キャンパスPRプロジェクトの鳥丸さん、白川さんがトークセッションに参加しました。

左から、鳥丸さん、白川さん

山内さんは受験生が抱える問題として、学力を測る入試に挑む学生と、学校推薦型選抜や総合型選抜を活用する学生の間にある分断を取り上げます。

それに対してYouTube Liveには「AOや推薦が先に行われて、一般が最終手段というのが分断を生んでいるひとつの理由だと思う」という生の意見が届きました。

仲井さんは、これからの大学入試について「就活に近い形になる」と予想。

普段から高校生と接する機会が多い仲井さんは「今、学外での活動に力を入れている学生が多くなっており、皆さんエピソードをためている」と話し、学校推薦型選抜や総合型選抜を見据えている高校生が増えていることを強調していました。

また、このプログラム内ではDHUの入試変革プロジェクト「#DHUEEX2025」の審査結果も発表されました。

#DHUEEX2025
高校生の皆さんと一緒に、これまでにない新しい入試をつくるプロジェクト。60名以上の高校生から新しいアイデアが投稿されました。もしかしたら、この中のアイデアがDHUの2025年度入試で実際に導入されるかもしれません。

最優秀賞に輝いたのは、梁本 真優(やなもと まゆ)さんの「なぜ、デジタルハリウッド大学のマスコットキャラクターには友達がいないのか。じゃあ、創ろう。」でした。

企画概要
・入試のテーマは「DHUの新たなマスコットキャラクターを創ること」
・大学側が期待する役割、マスコットとしてどのように貢献するかをグループで話し合う
・イラストと共に企画を発表し、試験官からフィードバックをもらう
・それをもとに改良案を考え、再度発表する

「#DHUEEX2025」の審査員を務めた山内さんは、このようにコメント。

「『キャラクターを考えよ』というシンプルな問いなのに、出題者の意図から受験生に考えさせる奥深さがあります。従来の総合型選抜は大人が求める答えに、学生がいかに近づけられるかを評価していました。しかし、この最優秀賞やそもそもコンペ自体が、出題者(大人)のアイデアを超えてほしいという意図を感じます。これが実現できるのはデジタルハリウッドだけかもしれません」

同じく審査員の仲井さんも、「自分で何を創るか定義して進める、というプロセスが良い。グループごとに自由に創造できるので、発表内容やイラストから個性が発揮されそうです」と梁本さんのアイデアを称賛していました。

アフタートークその2

最後に、登壇を終えた仲井さんへ本日の感想を伺いました。

——本日のプログラムはいかがでしたか。

印象的だったのはDHUの学生さんと関われたことでした。白川さんや鳥丸さんがDHUの入試を振り返る際、「面接では、ただ自分の好きなことや、やりたいことを伝えただけだった」と話していて。

高校生のなかには、自分の意志よりも試験官が求める答えを回答する生徒も多いんです。一方で、DHUさんには「すべてをエンタテインメントにせよ!」というアドミッションポリシーに合った学生が、入学されているのだなと感じました。

——プログラム内でも、入試は就活に近くなるとおっしゃっていましたね。

そうですね。だから大学側から見れば、入試は採用に似ているのかもしれません。

DHUさんはすでに実施されていますが、大学側が提示するアドミッションポリシーをできる限り凝縮した入試が、今後必要になってくると思うんです。それが実現できれば、学生がより自分にマッチした大学に行けるのではないかと思っています。

——ありがとうございました!


上記の講演のほか、当日はデジタルハリウッドの教員が研究内容を発表。教育関係者・自治体に勤める多くの方にお聞きいただきました。


AKI INOMATA「デジタルハリウッド大学大学院でのアーティストインレジデンス」


齊藤 知也「フリーランスのクリエイティブチームを組織化する時代〜DX、デジタル化の組織に必要なのは多様性に富む人材にいつでも相談できる関係構築〜」


茂出木 謙太郎「アバターを活用したゼミ実践から見えてきたメタバースの課題と展望」


石川 大樹「学生に能動学修を促すオンライン授業手法の実践と課題」



以上、近未来教育フォーラム2022のアフターレポートでした。

デジタルハリウッド、そしてDHUは「未来生活を発明し文化を創造する大学」という価値を提供するため、これからも教育のアップデートに挑み続けます。

デジタルハリウッド大学の教育研究活動に興味のある方は、ぜひ「DHU2025構想」もご覧ください。

▼DHUの “これから” を知る「DHU2025構想」

▼研究紀要などが読める「メディアサイエンス研究所」


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