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331日目(たんぽぽ)

YouTubeのオススメで映画「たんぽぽ」の英語字幕のゴニョゴニョアップロードが上がってきて、久しぶりに観た。

子供の頃に(たぶん)土曜ゴールデン劇場でよくやっていた印象で、食にまつわる、それぞれが交差しない群像劇と適度なフェティッシュ感あるエロシーンが伊丹十三作品の中で最も印象深い一本だ。
伊丹作品最高峰のエロシーンは「お葬式」での高瀬春奈のダルんとしただらしない巨尻のアップであることに異論はありませんよね?

子供の頃は何の気なしにエロシーンメインを目的に見ていたが大人になるにつれて、それも両親が亡くなってからはあるシーンを見るたびに涙がポロリと流れてしまう。

映画後半のサイドエピソードで井川比佐志演じるサラリーマンがダッシュで小さなアパートに帰ってくるエピソードだ。

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井川比佐志が帰り着くと三田和代演じる妻は今まさに臨終を迎えようとしているところで、今の時代では批判を受けそうな父権バリバリに妻を揺り起こし
「そうだ!飯を作れ!」
と言うと、妻は意識を取り戻してフラフラと小さな台所へ。

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ネギを切り、今にも倒れそうになりながらも焼き飯を作って中華鍋のまま食卓へ運ぶのだ。

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お世辞にも美味そうに見えない焼き飯を父、子供三人がそれぞれの茶碗によそい、四人が食べているところを薄らと笑みを浮かべて眺める妻。

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最後の料理を作り終えた妻はそのままバタリと事切れる。

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というエピソード。
子供の頃はまるでドリフや志村けんのコント番組でたまにある、ちょっと切ないコントのような印象で、どちらかというと笑えるシーンだったと記憶している。

それが何故か大人になるにつれてノスタルジーを伴った涙を誘うシーンになったのは、このエピソードの小さなアパートの間取りが小学生の頃に父と母と三人で暮らしていたタクシーの事務所の間取りによく似ていて、妻が最後に作る焼き飯が僕の父が作る脂っこい焼き飯によく似ているからだと思う。

小学生の頃、父は共同経営のような形でタクシー会社みたいなものをしていて、物心ついた頃には父一人でそのタクシー会社を切り盛りしていた。
ほぼほぼ24時間対応で事務所に寝泊まりしていた父と母。
実家から四キロほど離れた、小学校の目の前に事務所はあって、通学時間が億劫な僕はその狭い事務所で父と母と三人でまさに川の字になって暮らしていた。
この小学校時のタクシー事務所時代はまた別の機会に書くとして、そんな感じで大人になってから、それも両親を亡くしてからは「たんぽぽ」のこのエピソードになるとしっとり泣いてしまうのだ。

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