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ロジカルシンキング③:理学療法の推論は仮説演繹法か?

仮説演繹法という言葉を聞いたことがありますか?

「仮説を立てて」というフレーズから始まるこの方法論は、実は意外と複雑です。カール・ポパーの提唱した仮説演繹法について、米盛裕二氏は、これが仮説をテストする演繹的手法であると指摘しています。つまり、仮説が決定された後、実験的テストを通じてその仮説を演繹的に吟味するプロセスです。言いたいことは、仮説演繹法では「仮説は最初から決まっている」ということです。

しかし、ここで一つの疑問が生じます。
仮説は本当に最初から「決まっている」のでしょうか?
現実を考えれば、仮説を立てる過程には多くの苦労が伴います。

興味深いことに、福澤一吉さんの有名な記事には、仮説演繹法の中に帰納法が組み込まれています。福澤さんのモデル図では、実際に帰納法が演繹法よりも多く用いられています。

ロジカルシンキング②でも書きましたが、科学的探究の思考過程はアブダクション(くわえてアナロジー、帰納法)で仮説を形成し、演繹法で実験を設計し、帰納法で実証的事実を集めて結論を導くというプロセスです。
これは福澤さんのモデルと一致しています。


本来の仮説演繹法とは、文字通り仮説を演繹する方法であり、これは科学的探究の思考過程の一部でしかなく、不適切なネーミング
(「仮説演繹帰納法」や「仮説演繹法と帰納法」などがこの文脈で使うとすれば適切かもしれません)と、後世の拡大解釈と実際には帰納法であるという事実が理解を困難にしています。
(その意味でも福澤さんよる「仮説演繹で主張を生み出すプロセスの図」は意味を正確に捉えた適切な表現であり、その正確さに敬意を表します。)

僕が理学療法における仮説演繹法の意味をあまり理解できなかったのは、この点に原因があるのかもしれません。

結論としては、理学療法は帰納法により近いと言えるでしょう。ロジカルシンキング②に記載したように現実的にも自己修正的なプロセスなのだから。
広義で使われている「仮説演繹法」は一見単純なようでいて、実はその背後に複雑な思考のプロセスが隠されているのです。


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