猫との対話

ダンディー (♂) 2. - おいしい水

おいしい水、と言ってもあのボサノヴァの名曲ではなく、本当にただの美味しい水のおはなし。

どうやら私はどの猫からも人間とは思われていないらしく、来る猫来る猫どの猫からも「ねぇちょっとー」と声を掛けられる。老若男女、老いも若きも‥である。
特にダンディーは♀の猫よりも女の人がお好きなご様子で、時折比較的ご年配の女性の膝に陣を取りそこですやすやとお昼寝などをなさっておられるご様子。昨日は高校生のカップルの足下で、その前は公園でゲートボールを一人観戦なさっている見た目80歳ぐらいの女性の膝の上。

そんな年上好きのダンディーに一度だけナンパされたことがあった。いえ、私がアラフィフよりも上に見えたからではないことを切に願いながら、この記事を書いているのだけど(笑)。

ダンディー: ねぇねぇそこにキミぃー‥、いつも元気そうに走ってるじゃなーい?たまには俺と茶ーでもしないかい?そうそ、旨い水が飲める場所を知ってるんだ。ついて来いよ。

これ、なにげにナンパよね。

私: はぁ‥ 人間が思う「美味しい水」とは概ねアルコールを意味するわけですが、そんなお洒落な場所をあなたはご存じなのね?はいはい、ついて参りますわよ。

そしてとことこと彼、いや猫について行った先は案の定神社の奥の奥の端っこにある、至って普通の水飲み場であり、確かに猫の立ち飲みスタンドとしては最適な場所ではある。‥

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で‥ ここは水飲み場と言うより、お浄めの場所なのであーたくし、ここのお水は今は呑めませんわ‥。

テレパシーでダンディーにそう話し掛けると「俺の誘いを断るなんて千年早いぜ」と言い、踵をかわして私と距離を取るダンディー。その回りにいかにもアゲアゲな若い♀猫たちが一斉に群がり、その中で黒一点「間に合ってます」風な堂々っぷりで毛繕いを始めるダンディー。

嗚呼、もう勝手にしなさい。でもいい運動になったわ。
さて私は家に帰って本物の、美味しいお茶を頂きますので失礼致します‥、って三つ指ついたわけではないけれど一応丁寧に御挨拶をして水飲み場を立ち去った。
──『一応ここの主はあなたたち猫じゃなくって神さまなんですけどご存じかしら?』

ダンディーは次の狩りの準備に忙しそうに、あっちの毛こっちの毛と全身の毛を舐め尽くしている最中だった。暫く手が離せそうにはない雰囲気で。



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