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冷たい空気。

どこか遠く、遠くへ行けば
悲しい気持ちや恋しい気持ちから離れられるだろうか。

冬は大嫌いだったから
寒いのも苦手だったけど。

それなのに、
なんだかずっと寒い季節を待っていたような気がする。

空気が研磨され鋭く澄んでいる。

断片的な情景が、セピア掛かったスクリーンの中の一コマみたいに
眠ったままの融解した視界に映る。

立ち入り禁止の鉄格子に沈黙する、
フリルのついた黒い傘

金網をなぞる指の形
瓦解していく廃墟のお屋敷
電波塔

現実から切り離された甘美で退廃的な時間の流れ
私に混ざる、温度や感情のある記憶

あれから、今までずっと
一体どこへ隠れていたの?
反転したように当たり前に戻ってくる感覚。
誰かの普通になろうとして、
なれないって気がついて、諦めたから

私の当たり前や普通が戻ってきた。

誰かの当たり前の中では、呼吸すら出来ない。

呼ばれた感覚を知らないふりして過ごしていたっけ。
でも私には最初から、
そしてきっと最後まで、
それしかなかったんだなって思う。

近くにあるものを大切にできるように、
遠くへ行きたい。

知らない景色にリンクして、
自分に混ざる体温や感情をもっとよく理解できるように。

今日よりも遠くへ。

#日記 #モノローグ #心象

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