見出し画像

珍しく日本のドラマも観てみたシリーズ2023① 「THE DAYS」「本当に観てほしい人は誰か」についてずっと考えた福島第一原発事故のドラマ

この夏も、これを実施してみることにみました。

珍しく日本のドラマも観てみたシリーズ


普段は海外や韓国のドラマばかりを観てしまう私が、昨年にしてみた日本のドラマ鑑賞。そのレビューが自分が思っていたよりも好評をいただきました。
相変わらず普段全っ然観ないのですが(笑)、やっぱり話題作や評判作の話は耳や目に入ってきますし、今年も面白そうなドラマや「これは観ないとかな」と思ったドラマがありましたので、昨年同様2作をチョイスしてみました。

昨年に私が日本のドラマを観ようと思ったきっかけは「大豆田~」の感想noteで書いてますので良かったら読んでみてください。ま、簡単に言うと岡田将生きっかけです(笑)。

今回はたまたまですが、2作とも今年にNetflixで配信が開始された作品となりました。

というわけで、最初の作品はこちら

「THE DAYS」

あらすじ等はこちら


この作品は2011年3月の東日本大震災時に起きた福島第一原子力発電所事故についてのドラマです。事故の発生から一応の落ち着きに至るまでの数日の過程を、時系列で追っていく物語。事実にできるだけ基づきながら再現している内容となっていると思います。

観ながら改めて、この事故についていろんな感情が湧いたり、ドラマについていろいろ考えたりできたので、私なりに思ったことをまとめてみたいと思います。

※ここから先は思いっきりネタバレしてますので、結末をお知りになりたくない方はご注意下さい。

(この作品は「あらすじもなにも」って感じですが)


先にも書きましたが、この作品は「できるだけ事実に即す」ことを作品に課しながら作られたと思います。題材が題材なだけに、もちろん制作側も「そうしたい」と思って作っていると思います。

というわけで、当時の状況を現実に逸脱しすぎることがないように、現場などをかなり忠実に再現したんじゃないかと思います。配信開始後、特に「事実と違いすぎる」とかいう話で問題になったような感じも調べた限りではありませんでした(よく出てくる陰謀説はあったかもですが、あれはいつもだから)。もちろんドラマなので、起きてしまった出来事から様々なポイントを選んで構成しているはずです。

まずはこの作品を観ながら私が思ったことを正直に書くと、「まだ映像化には早すぎたのではないか」と直感的に感じました。あ、それは「再現がちゃんとできてない」とかいう事ではないです。私には分からないですし。

それは私だけの問題かもしれないです。「観るのがまだ早かったかもしれないな」と。
あの時に感じた恐怖、混乱、不安。心の中で抑えながらも、あの時自分がどうしていたか、どう報道を観てたか、あの爆発の映像を観てどう感じてたか。割とリアルに思い出すことができて。

あれから12年も経っているのに、「まだ早い」と感じちゃう自分にも驚きですが。私自身も「忘れている」と思ってたけど、深いところでは「本当は忘れてなかったのかな」、と。

なので、「観れない」という人がいても全然おかしくないと思いました。

「風化」とよく言いますが、あの時なんとなくテレビやネットを観ながら何が起きているかニュースを観てもよくわかってなかった自分ですら、結構こんな感じだったので。もう10数年、されどまだ10数年。あの時に受けた感情を「どこかで忘れていない人も多くいるのでは」と思いました。ドラマ8話分の時間、反芻してしまうと結構辛いですよね。

私は震災当時は茨城県に住んでいて。東海村のこともあったり、福島県は隣の県で友人も住んでいたので心配だったり。
ふと思い出したのは、私自身はまだそこまでtwitterも見る習慣もなくて、震災きっかけでよく見るようになったような気がします。結構そういう人も多いんじゃないかな。今は生活に欠かせなくなったSNSとの付き合い方も随分変わったな、と実感しました。
本当にいろんなことを思い出しました。

とはいえ、この作品はドキュメンタリーではなくドラマなので、割と「冷静に観よう」と思えば観れました。なので途中で脱落することはなかったです。

では、「ドラマとしてはどうか」というところで話すと、

個人的に一番怖かったのは4話、5話あたりです。現場にいた作業員が「ベント」という、原子炉建屋に入って手動で圧力を下げる作業をしに行くあたり。この2話の監督は中田秀夫。「リング」などホラー作品で海外でも有名ですよね。とはいえ、停電しているから仕方がないんですけど、暗くて何か起きてるかよく分からなかったところもあります。そこが恐怖にもつながるし、わざとだと思うのですが、理解してないとちょっと分かりづらく。
あと、説明は登場人物がしてはくれるんですけど、「実際それをしてどうなのか」ってところは私自身の知識や想像が足りなかったのか、ちょっとついていけなかったり。あと話が進むにつれ、どんどん爆発やひっ迫した状態が起きるので何がなんだかみたいなところもあって、リアルなんだけど「もうちょっと説明というか分かりやすくしてもらえるとありがたかったかな」と思いました。
とはいえ、恐怖や切迫感の描き方は、煽りすぎず、落ち着きながらもよく描けているのでは、と思いました。

私は以下の事故についてNHKがまとめたサイトを観たりしながらドラマを追っていくような感じでした。


4話、5話以外の話は監督は西浦正記。フジテレビ系のドラマを主に監督している方でした。この作品のPDの方ともつながるので、後で少し触れたいと思います。

役者でいうと、役所広司や小林薫などが上手いのはもう当たり前感なのですが、やっぱり素晴らしい演技でした。

でも、今作で一番良かったというか個人的に刺さったのは竹野内豊の演技です。彼の役は架空の役だそうで、1号機の当直長。私より少し上の年代で、現場の監督とかによくいる世代。もちろん吉田所長も大変なる責任だったと思いますが、現場の長の重圧と苦悩を竹野内豊が凄く丁寧に演じていた印象でした。
私が持っていたイメージが「ビーチボーイズ」とか「ロンバケ」で止まっててひどく古すぎたというのもあり(笑)、とてもいい演技で結構びっくりしてしまったという。慌ててインスタのフォロワーさんに最近の代表作を尋ねてみたら全部ドラマだったんで、「私が観てないだけで、日々の仕事で着実に演技を積み上げてきていたんだろうな~」と感じました。昨年観た「忘れられた男」の草彅剛もそんな感じで本当にびっくりしたんですけど、似たような感じでした。完全に浦島太郎状態ですね(笑)。


さて、「原発についてのドラマ」というと、海外ドラマがお好きな人はあの作品が頭に浮かぶのではないでしょうか。

「チェルノブイリ」

2019年にHBOで公開されたドラマです。「HBO」ってだけで「多分容赦ない」って予測が立つと思うのですが。現在、世界中で話題の「THE LAST OF US」を手掛けるスタッフ陣が制作した作品ですね。

日本での放送スタート時ですら、予告を見ただけでも私は「無理かも」と思ってましたが、今回「THE DAYS」を観るにあたり、「やっぱり観ておいた方が比較もできていいかな」と思っていて。
でも「THE DAYS」を数話観た時点で、「やっぱりこっちは無理だな」と思いました。私は心情的に「チェルノブイリ」は観れないです。ちょっとあまりに原発が身近すぎて冷静に観れなそうだし、絵の刺激も役者の演技の刺激もとても強そうで。心が弱くてすみません。予告だけでも、完成度の高そうな感じや見応えは保証されている感じは凄く伝わってきますし、だからこそ高評価だと思うので、大丈夫そう、かつ気になった方はぜひ観てほしいと思います。

この「チェルノブイリ」と比較されるのは大前提として「THE DAYS」は制作されたんじゃないかと思います。制作元がワーナーでNetflixで世界配信だし。だから私も「対外的な点を意識して制作されているんだろうな」と思ってて。ただ、やっぱり「チェルノブイリ」とまともに比較してしまうと、どうしても足りないところもあると思うんです。そういうレビューもいくつか見かけました。予算の問題もあるでしょうし、ドラマ制作のフォーマットの違いもあると思うし。日本で起きた未曾有の事故を日本で描いてるので、詳細に描ける代わりに制約もあるかと。アメリカとイギリスが制作した「チェルノブイリ」とは制作過程もかなり違うと思います。

実際に「THE DAYS」を観ていて、海外ドラマに慣れてしまった目からすると、描き方がちょっと単調に観えてしまったり、役者の演技は熱演なんですけど目が離せないというところとそれ以外の落差を感じてしまったり。最終話は「吉田社長の独白というか説明が多すぎるかな」と思ったり。
観ていて、これは少なくとも技巧的には、今までの日本ドラマを逸脱した表現を目指していくという感覚は「あんまりなかったのかな」と私は思いました。

でも、日本のドラマを観慣れている人達からすると(私みたいな人の方がまれだと思うので笑)、このドラマはとても観やすいと思います。
役者の選択もそうですし、このドラマはPDが元フジテレビのドラマPDだった増本淳。フィルモグラフィーにあった「救命病棟24時」や「コードブルー~」を見て、凄く納得したんです。私とは逆で日本のドラマしか観ないうちの夫が、2本とも大好きで録画とかして観てたりしてて。この「THE DAYS」も夫の方が先に観てたんですよね。だからそういう人、日本のドラマが好きな人にはフィットしやすいんじゃないかと思います。西浦監督は「コードブルー~」の映画版の監督もしている方で、確かにこのドラマ全体も似ている雰囲気があるんではないかな、と思いました。

これは個人的な勝手な推測ですけど、おそらく扱っている題材から海外で話題になることを見越しつつ、本当に観てほしいのは「やっぱり日本の人たちに一番観てほしかったんじゃないのかな」と思いました。

この事故自体は全然収束していなくて、ただ爆発がおきなかっただけで、立ち入り禁止区域もあるし、廃炉作業もこれからみたいな状態で。

ラストにそれが強調されるんですけど、だから日本の問題として今後もずっと考えて行かなければならない問題で、そのことを改めて考えるきっかけには十分になりえる作品です。

ただ、それが今、成功していたかというとどうでしょう。「海外ではどれ程観られているのかな」と単純にNetflixのランキングサイトで観てみたところ、海外では公開後60か国以上でTOP10にランクインしています。非英語作品のランキングとはいえ、この数字は私の感覚では「大成功と言えるんじゃないかな」と思います。題材もあって世界の関心が高かったのではないでしょうか。

日本でも配信開始後、数週はおそらくランキングしていたと思うのですが、私が日頃ネットなどを見ている感覚だと、話題としては次に観ようとしている作品の方が「日本国内では盛り上がっていたかな~」と。
逆に日本にいるとあの事故については話題にしづらかったり、最初に書いたような理由で観れない人もいるんじゃないかと思うので、仕方がないのかもしれません。

あの時の対応が正しかったのか、この事故の根本の問題は何か。抱えきれないくらい重い問題のドラマではありますが、考えるきっかけとしてや、日本のドラマの一面を知ることもできて「私は観て良かった」と思えた作品でした。

気になった方はぜひ観てみてください♪

おまけ

「この役よく引き受けたな」って思った二人。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?