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医療から生まれたGLP-1ダイエットの実態と”消費者の声”

GLP-1ダイエットのことはご存知でしょうか?
2019年頃から出てきたようですが、ここ最近では特に注目されている新しいダイエット法です。「一体GLP-1ダイエット薬とは何か、そしてなぜこれほどまでに注目されるのか?」この記事ではこの問いに、答えを出します。

下記の画像は私が運営する口コミサイトでの、GLP-1ダイエットの1つである「リベルサス」の利用者の口コミですが、肯定的な声が集まっています。

GLP-1ダイエットの一つ「リベルサス」の口コミから抜粋

私はダイエット商品の口コミサイトを2008年から運営していて、色んなダイエットの流行り廃りを見てきました。その中で、GLP-1ダイエットはちょっとこれまでのダイエットとは異質だと感じています。

その異質さは主に
・実際に痩せる
・医師によって処方される
という2点に集約されます。

多くのダイエット商品が「あまり効果がない」「よくわからない業者が販売してる」という状況の中、GLP-1ダイエットは上記の点でこれまでのものとは一線を画します。

GLP-1ダイエットについて真剣に調べ始めると「実際のダイエット効果の統計分析(後述します)」「口コミサイトでの評価(後述します)」も明らかになり、「これは、ダイエット業界に激震が起こってるのでは?」と感じ始めました。下記3つはここ一カ月の世界のGLP-1ダイエット関連のニュースです。

・GLP-1ダイエット薬を製造してる医薬品メーカー「ノボ・ノルディスク」は売上・利益が急増し、時価総額がヨーロッパで1位に(詳細:「オゼンピック」のノボ・ノルディスク、38%増収-肥満市場の牙城盤石)。
・GLP-1ダイエット薬が登場したことで、米国の肥満問題が飯の種だった企業は破滅するという憶測がウォール街を飛び交う(詳細:減量薬「オゼンピック」、ウォール街への効果絶大)。
・現在、時価総額で世界最大のヘルスケア企業は肥満症薬を製造する医薬品メーカー(詳細:肥満症薬、約15兆円市場に成長する潜在性-ゴールドマンのアナリスト

時価総額のヘルスケア1位、ヨーロッパの時価総額1位がGLP-1ダイエット薬を製造してる医薬品会社で、アメリカのダイエット関連企業が破滅するという憶測が立っているらしいです。
世界のダイエット業界で地殻変動が起きています。

日本でもGLP-1ダイエットは盛り上がりを見せていますが、最近では日本医師会から「GLP-1ダイエットへの注意喚起」が発表され、業界に波紋を広げています。下図は発表資料の引用ですが、かなり強い表現でGLP-1ダイエットへの批判を行なっています。

日本医師会の発表資料の21ページ

この記事では、ダイエット商品口コミサイト管理人が、「GLP-1ダイエットの全体像」「実際の効果」「利用者の体験談」「リスク」「なぜ日本医師会が警鐘を鳴らしているのか」等を説明します。


GLP-1ダイエットの概要

GLP-1ダイエットとは、2型糖尿病治療薬であるGLP-1受容体作動薬を使ったダイエットを指します。
私は医者ではなく、単なる口コミサイト管理人なので、作用機序等の詳しい説明はできませんが、どうやらGLP-1受容体作動薬を使うと「お腹が空きにくくなる」らしいです(他にも色々ありますが、ダイエットに焦点を当てるとこんな感じ)。
詳細は、糖尿病サイトの「GLP-1とは」のページあたりを参照してください。

ちなみにGLP-1ダイエットで使われる薬としては、下図がまとまっていました。

「GLP-1作動薬の開発進む」日経メディカルより引用

名称が少しわかりにくいかもしれませんが、カッコ内が商品名で、カッコ外が成分名となります。
例えば、「オゼンピック」「リベルサス」「ウゴービ」という商品は、同じGLP-1受容体作動薬の成分である「セマグルチド」を含んでいる別商品ということになります。

また、ほとんどの商品は「2型糖尿病」の治療薬として発売されており、唯一「ウゴービ」だけが2023年に肥満症の薬として発売されています(2023年11月現在、肥満症治療薬としての承認は受けてますが発売はまだです)。

GLP-1ダイエットは痩せる

薬の良いところは、公的な組織がしっかりと研究成果を発表してくれてるところですね。
2023年10月13日に横浜市立大学の研究グループが発表した記事によると、GLP-1受容体作動薬の体重減少効果は下図のようになっていました。

日本人2型糖尿病患者における新規GLP-1受容体関連薬の治療効果の違いを明らかに

「2型糖尿病患者」に「マンジャロ」「オゼンピック」「リベルサス」「プラセボ(偽薬)」を使用したところ、プラセボと比較して体重が、
・マンジェロで9.5kg減少
・オゼンピックで4.4kg減少
・リベルサスで2.6kg減少
という結果が出たとのことです。

また、口コミサイトでの「体重増減の集約結果」でも痩せたという口コミ(円グラフの濃いオレンジ)の方がかなり多くなっています。

GLP-1ダイエットの効果

この辺りを総合的に見ても、普通に痩せると言ってしまって良さそうです。

GLP-1ダイエットが流行する理由

もちろん1番の理由は「実際に痩せる」ということだと思います。
しかし、私なんかは「副作用怖くない?」「肥満症と診断されるくらい太ってなくても病院で処方してもらえるの?」「肥満外来とかに行くのはちょっと・・」等の理由で、なんとなく手を出しづらいのではと感じていました。

ただ、使用者の口コミを見ていると、
・医師から処方されるため安心
・特別太ってなくても処方される
・インターネットで完結
上記のような理由から、敷居がかなり低くなっているようなのです。

実際の利用者の声

減量効果に加え、こういった入手までの敷居の低さが、GLP-1ダイエットが流行している要因だと考えられます。

GLP-1ダイエットの評価は高い

さて、体重減少効果のあるGLP-1受容体作動薬ですが、消費者の評価はどのようになっているのでしょうか?
私が運営するダイエット商品の口コミサイトにもGLP-1受容体作動薬への口コミが相当数投稿されていまして、次のようになっていました。

GLP-1ダイエットの消費者評価

それぞれ、下記口コミページからの引用となります。
オゼンピックの口コミ
リベルサスの口コミ
ビクトーザの口コミ
サクセンダの口コミ

さて、評価点は概ね3.6点となっており、これはダイエットカフェ的には滅茶苦茶高い評価です(中央値が2.78点なので)。副作用の多さも目立っていますが、とにかく痩せたという口コミが多く、結果として高評価となっているようです。

日本医師会は怒っている

というわけで、「普通に痩せる」「敷居が低い」「消費者からの評判も良い」Gl P-1ダイエットですが、それで「夢の痩せ薬がついに実現できた・・」と喜ぶのは早いです。冒頭でも少し触れた通り、日本医師会が怒っています。

日本医師会の発表資料より再掲

批判ポイントとしては次のように様々な問題を孕む状態となっているからのようです。
・健康な人に医薬品を使用することのリスク
・糖尿病治療のための薬の安定供給への悪影響
・適応外のダイエット目的での使用
・医の倫理に反する行為

この中で、特に「健康な人に医薬品を使用することのリスク」「糖尿病治療のための薬の安定供給への悪影響」の2つが直接的な被害ですので少し詳しく説明します。

GLP-1ダイエットの副作用

まず、日本医師会の発表資料に副作用についての記載があったので引用しておきます。

日本医師会の発表資料の16,17ページ

ダイエット目的で使用した場合の副作用は・・・
・明らかではない(適用外使用なので、報告されてない)
・あらゆる好ましくない医療上の出来事が表に出にくくなってる
・GLP-1製剤(例:リベルサス)には重大な副作用がある

ということで、「報告されてないので、よくわからんが、重大な副作用が起こりうる」とのことです。現状流通してるGLP-1受容体作動薬は全て「糖尿病治療薬としての認可しか受けていない」ため、適応外使用であるダイエット目的で使用した場合の副作用は報告されてないみたいなんですよね。

ちなみにダイエットカフェに投稿された副作用の口コミは下記のようになっていました。人によって副作用の出方は異なるものの、副作用を訴える口コミの割合は他商品と比較すると格段に多く、そのキツさも強烈なものが多い印象です。

前述のGLP-1受容体作動薬の口コミページから引用

さらに、口コミ本文から副作用を抽出してグラフ化すると、下図のように「吐き気」「気分が悪い」「便秘」「倦怠感」を訴える方が多いようです。

前述のGLP-1受容体作動薬の口コミページから引用

医師の診断ではなく、あくまでも使用者の口コミから抽出した副作用ですので参考程度に留めておいてください。

もっとヤバいサプリもある問題

少し話はズレますが、X(旧Twitter)で、「変なサプリを輸入して飲まれるより遥かにマシ」という意見がありました。

これは、正直一理ありまして、一昔前(今もありますが)は海外から輸入したダイエットサプリを飲んで重篤な健康被害に遭う事例も起きていました。私が運営する口コミサイトにも、そういったサプリには激ヤバ情報な雰囲気漂う口コミが多数投稿されています(話変わるのでここでは省略)。
そういったサプリの詳細は、下記の厚労省の注意喚起をご覧ください。
「ホスピタルダイエット」などと称されるタイ製の医薬品成分を含有する無承認無許可医薬品による重篤な健康被害事例について

正直、こういったヤバいダイエットサプリと比べると「(適応外ではあるものの)日本で認可された薬」ですし、「(どこまでしっかり診察されてるかは不明瞭な部分があるものの)医師の診察あり」なGLP-1ダイエットの方がマシな気はします。
ただまぁ、それは「もっとヤバいモノがある」というだけで、GLP-1ダイエットを肯定する理由としては弱いかなと思います。

糖尿病治療のための薬の安定供給への悪影響

正直、GLP-1ダイエットの問題が副作用だけであれば、「個々人が、医師の診察をしっかりと受け、副作用についても適切に説明され、納得した上で使用するのであれば、それを止める権利は誰にも無いよね」と思います(それとは別に、不健康なダイエット反対という理念も持ってます)。

しかし、日本医師会の発表によると問題はそれだけでなく、医薬品供給不足という問題が勃発しているとのことです。

日本医師会の発表資料の14ページ

要するに、GLP-1受容体作動薬がダイエット目的で適応外使用されまくっているため、本来使われるべき糖尿病患者に行き渡っていないわけです。
これは非常に大きな問題であると共に、「そんなにダイエット目的で使われまくってるんか・・」という驚きも感じます。

ちなみに米国でもGLP-1受容体作動薬の需要が急拡大し、やはり品薄になっているとのこと。このノートの冒頭でも記載したように、GLP-1ダイエット薬を製造してるデンマークの医薬品メーカーが時価総額でヨーロッパで1位になったりと、GLP-1ダイエットは日本だけでなく、世界的に使われまくっているようです。

糖尿病リソースガイドより

これだけ需要が急拡大しているとなると、今後は粗悪品や偽造品といった問題も出てくる可能性はあるでしょう・・・と思ったら、既に欧米では偽造品が出回っているようでした。

AnswersNewsより引用

日本より進んでる欧米でこの状況ですので、近いうちに日本でも似た状況になる可能性は高そうです。ヤバい。

我々が納めた保険料が不正に使われてる問題

まだまだ問題が出てきます。

糖尿病治療薬をダイエット目的で処方する事例が多発している。全額自己負担の自由診療だけでなく、公的な保険診療での処方が疑われる事例もあることが、健康保険組合連合会(健保連)の調査で判明。

東京新聞:「糖尿病治療薬でダイエット」が横行か 品薄で薬が必要な人に届かない…専門家が「罪深い」と語る理由

すなわち、糖尿病では無い人に、「糖尿病」だということにして3割負担でGLP-1受容体作動薬などの糖尿病薬を処方してる疑いがあるということですか・・・(残りの7割は我々が納めた社保とかから出てるということ)。

そして、今後のGLP-1ダイエットの行方は・・

既に流行してるGLP-1ダイエットですが、今後どうなるのでしょうか?
恐らく、もっと盛り上がります。

2023年初頭、GLP-1受容体作動薬の「ウゴービ」が厚労省より「肥満症治療薬」として承認されました。

2023年1月27日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会で肥満症を適応としたGLP-1受容体作動薬セマグルチド(商品名ウゴービ)の承認が了承された。2型糖尿病治療薬として既に使用されているオゼンピックと同成分だが、最大用量は2倍以上の2.4mg。2021年6月には、米食品医薬品局(FDA)により継続的な体重管理を適応として承認されている。

肥満症治療、セマグルチドの登場でどう変わる?:日経メディカル

2023年11月現在、まだ発売されていません(理由は供給不足、医師会の反発?)が、ダイエット業界では「GLP-1ダイエットが厚労省の承認を得た」という風にうつっていると思われます。
ウゴービの発売を待たずとも、他のGLP-1受容体作動薬を医師から入手することが可能な現時点でも、GLP-1ダイエットは大流行しています(需要が多過ぎて、供給が追いつかないくらいです)。

これで、今後ウゴービが発売に至ると・・・、さらに盛り上がりを見せることは間違いないと思います。

さらに言うと・・・

もっと言うと、ウゴービの少し前に「アライ」という薬も肥満症の治療薬として承認されました。
詳細:抗肥満薬「アライ」が要指導医薬品に(日経メディカル)

元々、肥満症治療薬として、厚労省に認められていた薬は1992年に承認されたサノレックス(マジンドール)だけであり、アライ・ウゴービ共に約30年ぶりの承認となります。
共にまだ未発売ではありますが、今後発売されれば、「アライ」「ウゴービ」だけでなく、アライと同じ「オルリスタット」を含んだ薬、ウゴービと同じ「セマグルチド」を含んだ薬なども勢いを増すことは容易に想像できます。

今後、単なるサプリや食品ではなく、こういった「薬」を用いたダイエット(いわゆるメディカルダイエット)が広がりを見せていきそうです。

逆風としては、「薬の供給不足」「日本医師会等からの反発」あたりが考えられますが、ダイエッターの飽くなき痩身願望、一部の医師やインフルエンサー等の金儲け願望は様々な抜け道を見つけ出し、当分は流行し続けると考えられます。



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