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大阪行ってきた



■生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2023


 逆噴射小説大賞2023期間中にディスコードチャンネルにてお伺いした催し物。興味を惹かれて調べたらまぁ面白そうなこと!
 いまも使い続けられている建築物。その普段は未公開エリアに入れるというだけでも垂涎もの。自身の仕事もそれほど大忙しというわけではない。お金はどうにでもなる。

 良し行こう。

というわけでたてた旅程がこちら。青太線は徒歩のルート

 結論から言います。
 すんごい楽しかった。
 写真もそれなりに撮ってきたが、運営委員会や建物所有者様のご厚意でWEB掲載OKとのことなので、この日記で逆噴射界隈の方々におすそ分けしたいと思う。

■旅行予定の作成について

 建物の写真が即見たい方はこの項目は飛ばしていただきたい。
自分の備忘録として、旅行予定の作成過程を残しておく。

 まず時間。
 自由にできるのは土曜日の一日だけ。体力に優れているわけではないので日曜は家に帰って家事をする時間とした。
 帰ってきてからの感想としては、イケフェス開催中の土日両方使っても回り切れないほど見たい候補地が多かったので賢明だったと思う。

 イケフェスに参加されている施設は観覧可能時間を設定されていた。どの施設もだいたい10時から見学スタート。遅くとも12時ころから。関東から2,3時間かけて行くとなると10時開始に間に合うにはやや忙しい。前日夜から乗り込めば体力的には安心だ。

 そこで大阪城に目を付けた。イケフェスの対象建物ではないが、一度も見たことが無いのでここも絡めたい。幸い天守閣を除くエリアは普段から解放されているとのことなので、前日から前乗りすればあさイチから見て回れる。9時の天守博物館開館以降はめっちゃ混むという情報もあったので宿と一件目はこれで決定。

 となると二手目も決まった。
 大阪城のすぐ西に位置する大阪府庁本館。市庁舎という建物はそこまで思い入れが無かったが、普段は入れない議場に入れるとのこと。REALさの取材目的でもいいだろうと判断し決定。

 三手目以降は自分の嗜好である小規模建築物が多数見れそうかつ府庁本館から近場を探す。土曜日に空いていて、事前申し込みが要らない施設が条件。イケフェス公式ホームぺージとにらめっこした結果、旅のしおりが出来上がった。

しおり作った。一人修学旅行。

 計11件。ルート上から遠かったのでやむなく外した物件もある。
なお予定は未定のため、どこかの建物でひっかかって時間を使っても良しとした。

■旅程開始

□鶴丸うどん

 朝七時半。まずは腹ごしらえ。
 旅行といえばメシだろうという思い込みがある。念入りに近所を物色して鶴丸うどんをチョイス。素うどんとかやくご飯のセットで350円。上善如水、抵抗なくするっと頂ける。
 自分は関東より関西圏の麺類が好きなのだが、この店も例にもれず美味かった。

地味だが美味い

□大阪城

 腹ごなしに大阪城攻めを開始。マラソンランナーと犬の散歩。アジアからの外国人が多かった。

デッカ……

 デカすぎる。堀が。これが石火矢の射程限界距離なんだろうか。

逆光だった……。

大手門はあかぬもん!

丸じゃなくて四角いほう

四角い矢狭間、変じゃない? 壁厚よりも穴を開けてある石が薄いぞ。

補強材が飛び梁みたい

 へ、へんたいだー!!
 矢狭間を設けるには壁を薄くしなくてはいけない。でも土壁を薄くしたら耐久性が落ちる。
 だから漏斗状に石を削って矢狭間にする。石垣でも強度低下には違いないが土壁でやるよりはずっとましだ。すんごぉい。

空堀になっている。飛び込みたいフワフワな緑。
石垣の隙間を埋めるめっちゃ細い石

手間暇かけてこさえてありますなぁ。

地図にも載ってる巨石。

徳川大阪城のもので、豊臣時代には無かった巨石石垣だそうで。

天守と第四師団司令部

 本丸にたどり着いてまず目に飛び込んできたのは天守閣ではない。こっちのレンガ外装の建物。なんでも元陸軍第四師団司令部だとか。
 個人的には天守よりも目を惹かれた。ディテールの細かさのせいだろうか。

え?! 天守の石垣をぶったぎってバリアフリーを?!

 と思ったら、もともとあった渡り廊下部分へEVを設置した模様。

城見上げ

間近から。みごとな石積み。

「ばけもの屋敷」
良い雑木林だが

 江戸期の伝説によるとこのあたりにあった屋敷で”でた”らしい。18世紀には退治されたとのこと。

北側の堀

 駆け足だったが大阪城とはここでお別れ。北側の堀もひっろい。

付録。大阪城内のトイレ。

丸!
△!


□大阪府庁舎本館

正面

 ファサード。情報量が少なく、一見すると最近の建物のよう。よくみれば外壁の仕上げが違う。

廊下

 内部にお邪魔。
なお当日整理券配布制だったのだがギリギリまにあった。有難し。
 両サイドは執務室だが学校の教室と言われても信じそうな構成。この雰囲気が学校建築にまで受け継がれたのだろうか。

大理石の腰壁

化石が来場者を見守る。お判りいただけるだろうか。

メインエントランス見下げ

 メインエントランスホール。映画の撮影や近年の貴賓もてなしにも活躍したとか。画面中央左はめったに灯らないという照明。

メインエントランス見上げ
裏手。壮麗な空間にもバックヤードはある。

 

彫刻の数々。新しい建物ではほとんど見られないから新鮮。

  次は議場に入れていただく。
独特の、劇場のような匂いがした。絨毯だろうか。

議場全景。現役。
この椅子が議席数によって改修され、増えたり減ったりする。
柱の彫刻。図柄の選定理由も聞くべきだった。

 

2階は傍聴席だそう


最後は正庁の間。全景写真は撮り忘れてしまったので、下記リンクをご参照ください。

https://www.pref.osaka.lg.jp/otemaemachi/seicyou-koukai/index.html

大阪府ホームページ
天使のレリーフ。なんと歯車を持っている。
天井も豪奢

 個人的に今回最大の見どころ。
 小上がりになっているこの空間は、カーテンをかけられた壁面に天皇陛下の肖像画を飾る計画だったとか。
 そんなやんごとなきこの空間。近年の復元改修が行われるまではプリンター2台が置かれていたらしい。なんでも執務室面積の不足でこの広間も事務室と化していたそうで。ここにプリンターが置かれていた絵を想像すると、失礼ながらめちゃくちゃ面白い。

改修工事前の写真

 ありがとう大阪府庁舎。

付録:エレベーターは〇TIS社

□ルポンドシエルビル

ルポンドシエルビル/旧大林組本店ビル

中では万博に建設中のパビリオンについての展示があった。

20種類の木材の中で自分はどれにあたるか?という診断メーカー的なこともやられていた
裏手は川に面している
盾がある

□ちょっと移動

川を渡る
道中にも見事なたたずまいの建物が
外壁タイルや石の三方枠は重厚感がある
天満宮様にお参り

□天満教会

次の目的地はこの教会。ブロック造だそうで。

ブロックのサンプルと鎮ブロック工法の説明
こじんまりとしながらも開放感のある空間。梁が凝っている。
ガラス、サッシも当時のまま。
パイプオルガンまである。

私事だがFF8の頃からパイプオルガンが好きなのでちょっと興奮している。

きらりと輝く星。この星、回転する。回ると内蔵された鈴が鳴る。

■北村商店 一番蔵
乾物問屋街に到着。

あちこちに古い建物が残っている。
1,2階外壁+うだつも含めて外壁にとりつけている建物も。
高速道路建設時に、道路に合わせて切断するように一部を解体された庫。
正面が斜めっている。
こちらはとある蔵の床下階段。ここから裏手の運河と荷物のやり取りをしていた。
庫の入り口。補強のためか木製三方枠に分厚いひだが取り付けられている。

□中之島 子供本の森

安藤忠雄氏設計の図書館
どうやって打ってるのかわからない綺麗すぎるコンクリート壁
子供心をくすぐる従業員用通路。この下が川底に通じてて秘密兵器が発s
なんだこれわ。時計?テスラコイル?
これも安藤忠雄氏

□大阪市中央公会堂

目的地の公会堂に到着。

辰野金吾氏
伝統的建築物をイケメン擬人化? ほぼ御城プロジェクトREだな!
大集会室。劇場じゃないの?!
ここも装飾が目を見張る。
特別室。日本神話を題材にしたと思われる天井画がある。
下は天沼矛持ってるのだろうか。ちょっと人数が寂しい。
壁にも神話題材の画が。

 西洋風の内装にかずらひねりの人物画。ギャップのせいで自分にはどうしても面白く見えてしまう。

タケノコのレリーフ! そういうのもあるのか! 今回の最カワポイント。
目を惹かれた意匠。何の花だろう?ドアにも植物のリースが描かれている。
吹き抜け部の梁の主張が強い。
外部の免震構造。ダンパーって男の子だよな。
なんか可愛いと思ってしまった和洋折衷エントランス庇。

付録

エレベーターは〇TIS社。関西の会社だっただろうか。

□中之島図書館

こちらは中之島図書館
知識の殿堂を自負している感じがビンビン伝わってくる。
メインエントランス吹き抜け。自分の腕では写真でこの空間を伝えることが出来ない。

 円筒状の空間に回り階段が配置され、天井に円形のステンドグラスが設けられている。

 円周上に菅原道真、孔子、ソクラテス、アリストテレス、シェイクスピア、カント、ゲーテ、ダーウィンどの名が刻印されており、建築計画者や設計者が
「ここは知識の殿堂となるんや!」
と全力を注いだ感を受けた。ものすごい圧の空間。

廊下はカワイイ。
資料閲覧室。壁にはすごく小さなボタンがあり、押すと司書が来てくれたらしい。


 車いす使用者用エントランスの銅板葺き屋根。後年の作だと思うが妙にかわいい。亀みたい。

□渡河

ふたたび川を渡る。生駒山地が見える。奈良も行きたいね。

□適塾

緒方洪庵の蘭学塾。江戸時代の木造(耐震改修済)


この木組み!(見えねえ)
土間は寒いが見て回るのは好き。ここで家事仕事はしたくない。
狭いが雰囲気の良い庭。
近年の耐震補強に使われた品々。
伝統的建築物の補強方法はほんとうにいろいろあるなと思う。
復元模型
忍者でなくても一般維新士なら飛び渡っていきそうな屋根
井戸の有る中庭。ここで蘭学者たちが腑分けをしていたそう。

□グランサンクタス淀屋橋

辰野金吾が設計した元銀行の建物を高層マンションの低層部にガチャーンコ!

皮一枚とはいえ上手く使うとこの通りって感じ

□旧大阪教育生命保険ビルと日本キリスト教団浪花教会

辰野金吾とメレルヴォーリズが並ぶ街区
浪花教会のファサード

□旧宗田家住居

大正時代の古民家を改装した店舗。内部にも見どころがあったようだが満員の様子だったのであきらめた。

庇が不思議な形。改修でこうなったんだろうか。

□伏見ビル

大正時代のRC造。元ホテル。
頂部の意匠は何を現しているのか。

□青山ビル

大正時代のRC造五階建て。元個人住宅。
甲子園から株分けされたというツタで外観が覆われている。

□道修町

歩いている最中に知ったが、ここは薬屋が軒を連ねる通り。
適庵があったりミドリ十字を吸収した田辺三菱や武田製薬があったりと集中してる。

□旧武田薬品本社ビル

□田辺三菱製薬 本社

手触りを重視したというテラコッタの外装

展示室には株式会社日本ブラッドバンクやミドリ十字についても言及があった。
上田早夕里著「破滅の王」を思い出す。

□日本圧着端子製造(株) 本社

木製縦ルーバーで覆われた建物

 ここはイケフェスと無関係(※調べたらこちらの建物の見学は中止となっていた)だが、以前仕事で木製ルーバーの納まりについて検索していた時偶然見つけて参考にさせてもらった。
 まさか出会えるとは。

ルーバーと外壁の納まり
たぶん避難用のバルコニー。

□とおりすがり

良い絵だと思ったので撮影。縦板張りのお勝手口。

□芝川ビル

疲労困憊のためサテンを探していたらイケフェス対象店に行き当たる。

昭和二年の鉄筋コンクリート造
ここにもイケメンが
内装がすさまじい。
ティーブレイク
近代建築の窓サッシは桟や額縁が細い気がする。だから綺麗なのか。
伝声管! しかも生きている!
中廊下。いろんなテナントが入っているが、探偵事務所でもあったら楽しそうだ。
最上階階段室の手摺装飾。
普段は入れない屋上テラス。近くここで飲食店が開業するんだとか。
屋上排水。これ建設当初からこの形なのだろうか。よく見る気がするが。
当時の工事写真。鉄筋が丸鋼!太い!支保工が丸太!

□帰る

帰りの駅。改装中だがこんな仮設鉄骨もカッコよく見えてしまった。
新大阪の月。

■終わりに

 また行きたい。
出不精ゆえに、大阪まで意外と近いことに今更ながら気づいてしまった。
今度は後北条の足跡をたどって狭山に行きたい。神戸の大工道具館や六甲、阪神淡路関連施設も前から行きたいと思っていたし、奈良方面では吉野方面の林業に用がある。
 街は歩きはじめると終わり時がつかめないと改めて思った。

いじょうです。

※この記事は取り急ぎまとめたので後日アップデートするかもしれません。
 写真に問題がありましたら遠慮なくお申し付けください。修正、削除します。

サポートなど頂いた日には画面の前で五体投地いたします。