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第33回デジタル進化生物セミナー

第33回デジタル進化生物セミナーを開催します。

2023年7月20日(木)15時〜
高木悠花博士(千葉大学 理学部地球科学科 助教)
「浮遊性有孔虫と藻類の『光共生』をとことん突き詰める」

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前回に引き続き、小さい生物が藻類と共生するお話です。色んなところで活躍する藻類がすごいのか、誰からも良いように利用されているのか。同情します。

要旨

海の砂漠と呼ばれる温暖で光に満ちた貧栄養海域では,混合栄養性の生物が適応し,物質循環の重要な役割を担っている。微細藻類を細胞内に住まわせる「光共生(photosymbiosis)」も混合栄養の一種であり,共生藻は光合成産物を宿主へ,宿主は代謝産物を共生藻へ受け渡すことで,相利共生が成立していると考えられている。近年,こうした光共生生態を持つ単細胞動物プランクトン(浮遊性有孔虫や放散虫)のバイオマスが貧栄養海域で非常に高く,物質循環へ重要な貢献を果たしていることが報告されており,海洋において光共生プランクトンが果たす役割について注目されつつある。しかし,継代培養できない外洋性のプランクトンは,生態に関する知見が極めて乏しく,光共生に関しても理解が立ち遅れている状況にある。発表者はこれまで,浮遊性有孔虫(炭酸カルシウムの殻をもつ原生生物)の光共生に焦点を当て,どんな種が,どんな共生藻を,どれほど持ち,どれほど活発に光合成を行っているかを,研究航海による現場観測,飼育実験,光合成生理解析,遺伝子解析を用いて明らかにしてきた。例えば,洋上で様々な有孔虫種の光合成活性を測定した研究では,亜熱帯海域で産する種のほとんどが共生藻を有することが明らかとなり,その光合成も非常に活発であることが示された。また,DNAメタバーコーディングを用いて有孔虫1個体内の共生藻組成を明らかにした研究では,宿主と共生藻の高い特異性が明らかとなってきている。さらに,飼育実験に基づく観察では,宿主の成長に従って共生藻が高い光合成活性を保ちながら増殖することが確認され,有孔虫の細胞内が藻類にとって好適な環境であることが示された。その一方で,宿主が一生を終える直前には共生藻を消化してしまうという興味深い現象も確認されている。このように,浮遊性有孔虫の光共生では,共生藻との関係が相利的なのか,片利的(搾取的)なのか,単純には言い表せないことも見えてきている状況にある。本発表では,発表者これまでの研究の概要を,特に宿主と共生藻の関係に着眼しながら紹介したい。

参考文献

また、本公演のタイトルからAIで画像を生成しました。有孔虫は昆虫ではありません。1枚目はむしろ前回のイオウゴケに非常に似ています。マイナー生物はまだまだ表現しきれないようです。

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