スターオーシャン セカンドストーリーのリメイクを前にした基礎知識

スターオーシャン セカンドストーリーとは何か

『スターオーシャン セカンドストーリー』がPlayStation向けソフトとして発売されたのは1998年7月30日のことですが、発売元はエニックスであり、当時はまだスクウェアとの合併がなされていない時期でした。

時期的にいうとスクウェアが『ファイナルファンタジーVII』で全盛を極めつつあった頃でもあり、当時は発売されるRPG作品の多くがその影響を感じさせるものだったわけですが、この作品もその例外ではなく、また当時エニックスの看板作品であるドラゴンクエストシリーズが世評の芳しくない時期にも該当していたことから、本作は適度に亜流の作品であるという認識も存在していたような記憶はあります。

本作の最大の特徴はマルチシナリオ・マルチエンディングであり、当時は次世代機の登場によって様々な可能性が模索されていた時代であり、その可能性がシナリオという部分にまで波及した結果としてマルチシナリオ・マルチエンディングが叫ばれていたという時代背景がありました。

ちなみにそれで話題というか問題になったのが同じPlayStationで発売された『ティアリングサーガ ユトナ英雄戦記』であり、これも当初『ファミ通』などの雑誌のインタビューで開発者がマルチシナリオ・マルチエンディングを強調していたわけですが、実際に発売されてみたら完全な一本道だったということで多少物議をかもした記憶があります。

もちろんマルチシナリオ・マルチエンディングの作品はアドベンチャーゲームなどを中心にそれ以前から存在はしていたわけですが、本作の最大の特徴は全86種類ともいわれるエンディング数の多さにあり、たしかにこの点においては次世代機の性能を最大限生かしたものであったといえるでしょう。

そうしたこともあり筆者の中では『スターオーシャン セカンドストーリー』こそ正真正銘のマルチシナリオ・マルチエンディング・ゲームという印象があるほどであり、良くも悪くも一つの潮流を象徴する作品ではありました。

ただし関連作品から正史を絞ることは可能であった

このマルチシナリオ・マルチエンディングという要素は実は前作である『スターオーシャン』の時点で実装されてはいたわけですが、前作の登場人物であるロニキス・J・ケニーが今作の主人公であるクロード・C・ケニーの父親であるというかたちで明確な役割を与えられていることに明らかなように実際には正史と呼べるようなものがあるわけであり、実は今作もその例外ではありませんでした。

そのことが最初に示されたのは2001年6月28日にゲームボーイ用ソフトとして発売された『スターオーシャン ブルースフィア』であり、本作において後日譚的な内容が語られたことから、マルチシナリオ・マルチエンディングとはうたわれるものの実際には正史が存在することが示唆されていました。

制作者目線でいえば物語に筋道を立てたいと考えるのは自然なことであり、それによって本来売りとしていたはずのマルチシナリオ・マルチエンディングを自ら否定することになったというのは皮肉といえば皮肉な話ではあるわけですが、必然的な帰結ともいえたでしょう。

また、全86種類のエンディングとはいうものの、その多くは登場人物同士の関係性が多少変化する程度の誤差といって過言ではない差異にすぎず、大きな物語においては事実上の一本道であったということは指摘しておく必要があるでしょう。

要するに『スターオーシャン セカンドストーリー』という方程式においては解は一つでじゅうぶんなわけであり、その最適解を導く過程での気の迷いとしてその他のエンディングを位置付けることはできるでしょう。

技術的な面においてもPlayStation 2の時代にはマルチシナリオ・マルチエンディングは実現できてあたりまえという状況になっており、それをわざわざ売りにする必然性もとぼしくなったこともあり、むしろこの潮流は後退していったと考えることができるでしょう。

そういった面においても本作はマルチシナリオ・マルチエンディングという概念を象徴していたといえるわけです。

PlayStationからXboxへのプラットフォームの移行

その後『スターオーシャン セカンドストーリー』は第1作とともにPlayStation Portable向けのソフトとしてリメイクがなされることになり、当時のゲーマーにとってはリメイクというとこの印象が強いでしょう。

しかし、発売された『スターオーシャン1 First Departure』と『スターオーシャン2 Second Evolution』はともに原作を担当したトライエースが関与していないということもあって一部に軽薄なリメイクという評価があったのは事実であります。

その後2009年2月19日に発売された『スターオーシャン4 -THE LAST HOPE-』は再びトライエースが開発に関与することになり、一定の評価を得るとともに本体として選ばれたXbox 360の国内での売り上げに大きく貢献することになり、カプコンのバイオハザードシリーズなどとともに沈み行く船としてのPlayStationから逃れXbox陣営を選択するという当時多くのゲームメーカーが選択した道をたどることになりました。

こうした歴史的経緯から、傑作との評価が高い『スターオーシャン セカンドストーリー』そのものはPlayStationで発売されたものの、作品の文脈そのものはPlayStationを離れたとみるのが妥当であり、PlayStation信者とよばれる人々にとっては過去の遺物になったといっても過言ではないでしょう。

その『スターオーシャン セカンドストーリー』のリメイクがまた今年になって発売されるということで話題となっているようですが、映画などの世界でもよくいわれるように現代はあらゆるアイデアが出尽くした時代であり、リメイクという一種の二次創作・同人活動、悪くいうとパクリが主流となった時代ともいえます。

時代の必然としてその復活を素直に喜びたいものですね。

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