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チャットが公文書なら、職員の会話も公文書!?

デジテック for YAMAGUCHI 運営事務局 兼 Y-BASEスタッフのハラマルです。

我らがレノファ山口は、残念ながら先週末の試合は、結果こそ負けてしまいましたが、点を獲られた直後に芸術的なフリーキックから同点ゴールが生まれるなど、盛り上がる展開でしたね。
また、夏休みに入ってからのナイターということで、お子さんの姿も少し多かったように思います。
子ども目線で見ると、夜だし、出店が出てるし、大騒ぎできるし、でお祭りに行った気分になるのではないでしょうか。お子さんの思い出作りにどこか行こうかな、という方は、是非、検討してみてください!きっと喜んでくれると思いますよ~!

さて、先日の報道で、自分的にはかなり衝撃的な記事を目にしました。
「国の有識者会議が、国の職員同士のチャットが公文書に該当する可能性があるので、国に対応を求めた」という内容です。

え、本気で言ってる!?


公文書管理委員会

さて、まずは事実関係を確認しましょう。
ネットでいろいろ調べてみると、内閣府に設置されている「公文書管理委員会」なるものが、7月24日に開催されているようです。

「配布資料」の中に、Microsoft Teamsやチャットツールの機能についての資料がありましたので、きっとこのことだと思います。

ガイドラインの見直し案には、このチャットツールの事は含まれていないみたいなので、いきなりガイドラインを見直すというよりかは、この資料を基に議論が開始されたという段階ではないかと推察されます
(資料が難し過ぎて、解読できませんでしたので、違っていたらごめんなさい。)

7月28日のこの記事の作成時点では、「議事録」がアップされておらず、「議事要旨」だけがアップされています。そちらには、チャットツールについて、以下のような記載がありました。

チャットツールについて、各府省で普及が進み、公文書管理法上の行政文書の定義に該当する可能性があることから、行政文書に該当するか否か、該当する場合の取扱いについてルール等を設けるべきか等を議論するため、日本マイクロソフト株式会社等からTeams の紹介等が行われ、質疑応答・意見交換が行われた。議論の中で、各府省庁の利用状況等を把握しながら、今後も注意を払っていくという結論となった。

「議事要旨」から

概ね、私が推察したとおりの内容だったということでしょうかね?
私は今回の件で、この「公文書管理委員会」という存在を知ったのですが、2010年度から継続的に開催されているようですので、今後、この中で議論が進んでいくのではないでしょうか

チャットツール

話をチャットツールに移すと、皆さん、もうプライベートではチャットツールは利用されている方も多いでしょうから、今更説明は不要でしょう。

コロナ禍でリモートワークやオンライン会議などが普及したこともあって、今や、仕事でチャットツールを利用されている方も増えているようです。
以下のサイトの冒頭部(無料部分)に2022年度の調査結果が示されていました。

こちらのサイトでは、ビジネスチャットの導入企業の割合は約5割(47.9%)、一番多く利用されているツールは「Microsoft Teams」(67.3%)、従業員数に比例して企業の導入率が高まる傾向にあること、利用企業数は増加傾向であることなどが示されています。

私の身の回りでも、最初は無料の「LINE WORKS」などでの試行が始まり、だんだんいろんなツールを使うようになって、気づいたら、現在は、相手方の環境に応じて、「Microsoft Teams」や「Slack」、「elgana」といったツールを使い分けるようになっていました。

こうしたビジネスチャットを利用するメリットとしては、次のようなことが言われています。

  • 素早く情報共有や意見交換ができる(不明なことなどがあればすぐに聞けて回答がもらえる)

  • 複数人で同時にコミュニケーションができる(みんなが顔を合わせていなくてもグループワークがはかどる)

  • コミュニケーションを活性化できる(メールで単発のやりとりをするより、盛り上がりやすい)

一方、デメリットとして、次のようなことが言われています。

  • 通知や既読機能により業務に集中できない(優先順位が低い業務でもすぐに反応しなければならないという事態になりかねない)

  • やりとりが重なりやすいので、重要な事項が流れてしまう(重要事項の後に、何でもないやり取りが続いてしまうと、そういう事態になりかねない)

  • 不要なコミュニケーションが発生しやすい(メールだと会話を切れるが、チャットだと会話が続いてしまう)

上記は個人的な感想も含まれたような書きぶりになっていますが、この辺りのメリット・デメリットは、何もビジネスにおいての特有の事項ではないので、皆さんがグループでLINEをやっているときに感じることではないでしょうか。

まぁ、どんなツールも、結局は使い方が重要ですねってことだと思います。

私見

さて、ここからが本題ですが、便利なチャットツールをビジネスでも利用することが多くなった中、率直に感じているのは、
「このチャットでのやり取り、対面での会話だよね」ということです。
相手と離れているのでチャットを使っていますが、対面でいれば、キーボードを使わずに口頭で会話している内容ばかりだと思います。

「この案件、○○で良いですよね?」「うん、良いよ。」みたいな軽い意思決定的な内容も、「今度、○○について決裁回すのでよろしくお願いします」みたいなその後の意思決定につながる前さばき的な内容も、あるいは仕事にあまり関係ない雑談めいた内容も、対面でいれば口頭で会話するでしょうし、離れていたらチャットをすると思います。相手がチャットを使っていないのであれば電話やメールでしょうね。
もちろん、決裁が必要な案件については、口頭で話したかチャットしたか、電話・メールしたかは関係なく、きちんと決裁の手続を経る必要があります。

つまり、口頭の会話か、チャットか、電話やメールかは、相手方との物理的距離や連絡手段の違いでしかない、決裁手続きとは別物と思います。
皆さんの職場環境でも同じような状況ではないでしょうか?もしかしたら、重要な案件をチャットの「いいね」で済ませている場合もあるかもしれませんが、きっと、その場合も、記録として残しておかないといけないから、きちんと通常の承認フローは通すのではないでしょうか

「公文書管理委員会」の有識者たちが、どのあたりに問題意識をお持ちなのかが分からないので何とも言えませんが、ここで、もし、「チャットの内容が意思決定に関与している可能性があるから残しておくべき」ということであれば、同じ理屈で、対面での会話や電話も録音してかなければならないということになりませんでしょうか?

あるいは、「チャットは文字(テキスト)だから、そのまま残しておけばいいのでは」ということであるならば、会話を録音しておけば、今や簡単にAIでテキスト化できるので、同じ理屈で、「対面での会話や電話も録音してデータ化しておけばいい(いつでもテキスト化できる)」とならないでしょうか?
現に、YouTubeだって、クリック一つで簡単に字幕が流れます。そこを抜き出したらテキストです。チャットデータか音声データかって、データ形式(拡張子)の違いみたいなことになっていくんじゃないでしょうか?

だけれど、日常の会話や電話をデータにして残しておくべきという議論は誰しもしたくないでしょう。
例えば、昨年度、「デジテック for YAMAGUCHI」の営みの一つとして、「ラーメン×Tableau」というワークショップを開催しましたが、そのきっかけは、スタッフとの何気ない雑談でした。
「前の職場でラーメンが好きな人がいて、行ったことがあるお店の評価を一覧表にしていた」という内容を聞いた時、私が、「そんなデータがオープン化されたら面白いですね」と乗っかったことから話が広がり、ラーメンという皆さんが興味を抱きやすいテーマでデータ分析を体験してみるというワークショップとして実現ました。
このアイデアのブラッシュアップは、対面で話していたので口頭でしたが、もし離れていたらチャットでのやり取りになったと思います。
そして、この内容が意思決定に関係があるのか?ないのか?と聞かれると、非常にビミョーだと思います。
が、仮に、「関係ありそうだから残しておけ」と言われたら、全力で拒否したいです!いや、そんな雑談チックな内容を残しておくって、どういうこと!?

そんなの、会話できなくない?
せっかくチャットツールというもので業務の効率化が図られているのに、それを残しておかなければならないという風潮になると、誰もチャットできなくなりませんか?

「いや、それで雑談がなくなるならいいのでは?」という御意見があるかもしれませんが、何気ない会話から面白い企画が生まれることがあり、そうしたことに着目してチームのコラボレーションを高めるためにチャットツールが導入されているという面もあります。

冷静に考えて、職場での日常会話が録音されていたら怖いですよね。変な発言はしないとしても、よっぽど必要性に迫られない限り言葉を発しないようになる気がします。
チャット履歴を取っておくって、同じことではないでしょうか

報道によると、一義的には、まずは国の対応が求められているとのことです。
が、国でそういう風潮になったら、当然、民間や地方にもその流れは来ると思います。なので、他人事として聞いていたら、いつの間にか自分事になってしまっているということにならないか、非常に懸念しています。

「チャットで残したくないから、電話するor直接話に行く」ということになれば、自由な働き方に逆行しないでしょうか?
「電話するor直接話に行く」が非効率なので、チャットで業務をするようになったはずです。もし、電話や直接会話に回帰させることを誘導するのであれば、行政コスト・企業コスト的にどうなのか、という観点の議論もあっていいのではないかと思います。

もちろん、「正式な決裁フローを通さないでチャットだけで承認しているから、その業務プロセスが不透明になっている」ということであれば、それは改善する必要があります。が、その場合も、チャット履歴を残しておくということじゃなくて、「通常の決裁フローをきちんと利用することを徹底する」という方向じゃないでしょうか。

あまり状況が明確でない中、極端な私見を述べてしまいましたが、きっとそんなことにはならないですよね?と期待を込めて。
私がここに記載することで、何の歯止めにもなりませんが、チャットや会話が記録として残されていくといった変な監視社会にならないか、心配になって書いてしまいました。
デジタル活用を前提とした上で、業務の適正性と効率性が両立できるようなルールが確立されることを期待しています。