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Bas : Dreamvilleの隠れた宝石、J.Coleの右腕として語る音楽と人生とは

Dreamville Recordsは、J.コールと彼のマネージャーであるIbrahim Hamadによって設立され、Ari LennoxJIDEarthGangなどのアーティストが所属しています。

今回ご紹介するのは、Ibrahim Hamadの弟であり、Dreamville RecordsのベテランメンバーであるラッパーBas(バス)です。彼はこのレーベルに約10年間在籍し、2023年12月に4枚目のアルバム「We Only Talk About Real Shit When We're Fucked Up」をリリースしました。

ここでは、あまり知られていないバスの音楽キャリアについて詳しく解説します。

レーベル  : Dreamville, Interscope Records, Roche Musique & Universal Music Group
リリース日 : 2023年12月15日
名前    : Bas
本名    :    Abbas Hamad
年齢    : 36歳
出身地   :    スーダン


ラップへの没頭と音楽への情熱

バスはフランスのパリで生まれ、両親はスーダン出身で、父親はパリでスーダンの外交官をしていました。彼は8歳の時にパリやカタールで過ごした後、家族とともにニューヨークのクイーンズに移住しました。

2007年、バスの兄であるIbrahim Hamadは大学時代にJ.コールと出会い、2人はDreamville Recordsを立ち上げました。2010年、J.コールはXXL誌の「Freshman Class 2010」に選ばれ、全米に名を知られる存在となりました。一方、当時のバスはまだラッパーとしてのキャリアをスタートさせておらず、J.コールがラップをしていることすら知りませんでした。

コールがデビューしたとき、俺はラップもしてなかった。
コールがラップをしているのを知った時、彼がまさかラップをしているとは夢にも思わなかったよ。公園でバスケットボールをやっていて、セイント・ジョンズに通っている肌の明るいドイツ人ってだけだった。
彼はホーミーだったけど、彼でさえあまり口にしなかったんだ。だから俺がラップを始めたのは2010年だったと思う。ホーミーたちは、ただ俺のスキルを向上させるのを手伝ってくれて、芸術性を高める手助けをしてくれたんだ。それは信頼の積み重ねだね。お互いを信じ合っていたよ。

また、バスは初めてラップを試した時にその魅力に取り憑かれ、自ら書いたラップを楽しんで何度も繰り返したそうです。この経験が彼に音楽全般への関心を抱かせるきっかけとなったようです。

正直なところ、ラップは俺にとって初めての創造的表現への試みだったんだ。学校ではいつも文章を書くのが得意で、それが唯一まともにできた授業だったよ。言葉を使うのが得意だったね。それはニューヨークという土地柄だと思うんだけど、あそこでは言葉を素早く使う必要があるんだ。絵を描いたり、楽器を演奏したりすることはしなかったけれど、初めてやった時はめちゃくちゃハマったね。脳に何かを刺激するようなものが起きて、まるで薬のようだった。ラップを書くことを本当に楽しんでいて、それが何度も続けたくなるほど。それが俺を音楽全体に興味を持たせるきっかけになったんだ。

Dreamville Recordsとの結びつき:J.コールとの共演

バスは2010年頃からラッパーのキャリアをスタートし、2011年にデビューミックステープ「Quarter Water Raised Me Vol. I」をリリースしました。

その後、2013年にはこのミックステープの続編である「Quarter Water Raised Me Vol. II」Dreamvilleからリリースし、正式にDreamvilleの一員として認められました。このミックステープには、J.コールをフィーチャーした「Lit」が収録されています。この曲はMiguelのシングル「Do You...」(2012)をサンプリングしており、YouTubeで1000万再生を記録し、バスの知名度を大きく高めるきっかけとなりました。

Bas feat. J. Cole, KQuick - Lit

Miguel - Do You... (2012)

2014年、バスは3枚目のミックステープ「Two Weeks Notice」をリリースし、同じ月にデビューアルバム「Last Winter」を発表しました。このアルバムは、ニューヨーク市での寒い日々をテーマにしており、特にJ.コールをフィーチャーした「My Nigga Just Made Bail」は、友人が保釈されたことを祝福し、成功や困難についての感情を歌っています。

Bas feat. J. Cole - My Nigga Just Made Bail

2016年、バスはセカンドアルバム「Too High to Riot」をリリースし、初めて全米アルバムチャートにランクインしました。このアルバム制作では、自身の物語を忠実に伝えることを重視しており、単にオーディエンスが楽しむための音楽を作るのではなく、自身の真実を伝えることに焦点を合わせています。

「どうしたらみんなが楽しんでくれる音楽を作れるだろう?」と、必ずしも考えていないと思う。それは音楽ビジネスの一部ではあるけれど、俺は、自分の物語を追いかけ、俺の声を知ってくれている人たちに、俺の物語を忠実に伝え続ける誠実なものを作ることのほうに重点を置いている。どうすればそれに忠実でいられるのか?一貫してそれに忠実であり続けること、そして新鮮であり続けるために、サウンド面で自分自身をコンフォートゾーンから押し出すこと。そうやってバランスをとっているんだ。

このアルバムでは、J.コールもフィーチャーされており、彼とのシングル「Night Job」は、Jeremih「No More」(2014)をサンプリングしています。

Bas feat. J. Cole - Night Job

Jeremih & Shlohmo - No More (2014)

2018年、バスは3枚目のアルバム「Milky Way」をリリースしました。このアルバムを通じて、彼は自分自身を表現し、アーティストとして、外部からのプレッシャーや様々な要因が日常的に存在し、それらが時間とともに重くのしかかり、自身の変化や不安、焦りを感じることがあると述べています。

このアルバム「Milky Way」全体を通して言えるのは、自分の進むべき道を見つける過程なんだ。今の時代、アーティストになると、外的なプレッシャーや要因がたくさんあって、それが時間の経過とともに重くのしかかってくる。そして、どのような職業に就いている人であれ、目標を持ち、それを達成しようと努力している人は、他人に見捨てられたり、自分の価値が認められなかったり、あるいは過小評価されたりすることを感じることがあるだろう。
でも、俺は自分自身を取り戻すために自分を捉え直さなければいけないと思うんだ。自分の人生に起こっている素晴らしいことにしっかりと足をつける必要があると。わかるかな?いつもバラの香りを嗅ぐことを忘れてはいけないと思うし、そのための最も効果的な方法は、他人や自分自身への愛に身を置くことだと思う。君の人生にやって来て「待てよ」と思わせる人たち。世界を手に入れることもできるけど、ただそう思わせてくれる人もいる。それは物質的なものよりも強く、それ以上に強力なものなんだ。

また、このアルバムからリードシングルの「Tribe」は、Edu Lobo「Zum-Zum」(1970)をサンプリングしており、Spotifyでは2億回以上ストリーミングされ、彼の代表曲の一つとして挙げられています。

Bas with J.Cole - Tribe

Edu Lobo - Zum-Zum (1970)

BasのDreamvilleでの役割と成長

2019年にリリースされたDreamvilleのコンピレーションアルバム「Revenge of the Dreamers III」は、全米チャートで1位を獲得し、グラミー賞の「最優秀ラップ・アルバム賞」にノミネートされました。
このアルバムには、J.コールJIDEarthGangバスなどが参加し、リードシングル「Down Bad」は、グラミー賞の「ベストラップパフォーマンス」にノミネートされました。
バスはこの曲の制作に関して、南アフリカからの長いフライトの後、直ちにスタジオに向かった出来事を語っています。

南アフリカから帰国したばかりで、スタジオに直行したよ。Aルームに入った途端、JIDがこの曲を始めていて、最初のバースとフックをやっていたよ。この曲は文字通り、17時間のフライトの後にアトランタに到着して最初にレコーディングしたバースだったね。その時、J. ColeはT-Minusと一緒に「Middle Child」を仕上げていて、彼も突然「(その曲に)参加したい」と顔を出したんだ。

Dreamville feat. J.I.D, Bas, J. Cole, EarthGang, Young Nudy - Down Bad

彼らはこのアルバムで成功を収めましたが、バスDreamvilleのプロジェクトやレーベルは、一夜にして生まれたものではなく、長い時間をかけて成長してきたものであることを述べています。その過程で、レーベル全体がどのように成長し、多くのアーティストが独立してツアーを行えるまでになったことを明かしています。

これはすべての集大成で、一夜にして生まれたものではないんだ。俺たちのレーベルがどのように成長していくのかを見るのは最高だったし、ある意味では俺たち全員が同じような考えを持っているんだ。このプロジェクトのおかげで、多くのアーティストが独り立ちし、アーティストとして活動できるようになり、ツアーもできるようになった。このプロジェクトに参加していると、常に次のステップに進みたいと思うし、物事をより早く進めたいと思うものだ。しかし、5年間を振り返ってみると、これはとんでもない進歩だと思うよ。

2021年、J.コールのアルバム「The Off-Season」では、バスはゲストアーティストとして2曲に登場し、J.コールの右腕としてだけでなく、Dreamvilleのメンバーとしても不可欠な存在として成長しました。

バスは、自身のキャリアの展望について話しており、幼い日にアーティストたちから音楽の楽しみ方や新しい音楽の探し方を学んだと述べています。彼は自分もそうした影響を与えるアーティストの一人になりたいと考えているようです。

幼い頃、音楽の聴き方を教えてくれたり、俺の耳にとても新しいものを紹介してくれたりして、俺を音楽の道に導いてくれたアーティストがいた。Daft Punkにしろ、名前を挙げきれないほどたくさんのアーティストにしろ、そういったバンドやアーティストは、新しい方法で音楽を発見する方法を教えてくれた。俺は子供たちにとって、そういうアーティストの1人になりたいんだ。俺はただ時代を超えて残るような音楽を作りたいんだ。

おわりに

バスは、ラッパーとしてのキャリアを自分のペースで着実に積み重ね、Dreamville Recordsの重要な一員として成長してきました。彼の音楽は、パーソナルな出来事や真実の物語を伝えることに焦点を当てており、自身の人生や成長を音楽を通じて表現しています。
この長い旅の中で、彼はDreamvilleの成功や成長を体験し、自身のアーティストとしての発展だけでなく、レーベル全体の進化も見てきました。

彼は常に新たな音楽を見つけ出し、オーディエンスに革新的な響きを届けることを願っており、今後もその想いを追求し続けるでしょう。彼の物語は、自分のルーツや経験を音楽を通じて語り継ぐこと、そして次世代にインスピレーションを与えることを目指しています。バスは、自分の音楽が時代を超えて、多くの人々に共鳴することを望んでいるのです。

次回は、バスの新作アルバム「We Only Talk About Real Shit When We're Fucked Up」に焦点を当てて解説します。

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