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言語に関するあれこれ

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言語や語学学習についてあれこれ書いた記事を集めてあります。
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記事一覧

十一月に 2

十一月に 1  いつになく図書館が混んでいるのは急激に外が寒くなったせいだろう、と憂鬱な思いを抱きながら、カテジナは肩が触れ合いそうなほど近くに座っている隣の席の少女を見やった。今カテジナが座っている簡素な造りのテーブルは四人掛けだが幅が狭く、通常なら知らない人間とは同席したくないくらいの大きさだ。カテジナが通う高校のすぐ側にあるこの市立図書館は、図書館としてはとても小さい。カテジナはプラハ市内に点在している市立図書館の中では旧市街広場の近くの中央図書館が一番好きだったが、

『巨匠とマルガリータ』への偏愛を語る~『別冊「羽ばたく本棚」』に寄せて

 昨年11月に発売されたつる・るるるさん著『羽ばたく本棚』では扉絵のご提供に留まらず、るるるさん、とき子さん、橘鶫さんと共に本について語り合う座談会にお呼ばれするという幸運に恵まれた。  その昨年五月に行われた座談会にて「とにかく何かが起こりまくる小説」の代表としてスルっと私の口からこぼれたのがミハイル・ブルガーコフ著『巨匠とマルガリータ』だった。この二月に開催される文学フリマ広島6ではるるるさんは『羽ばたくセット』と銘打って『羽ばたく本棚』に鶫さんのステッカー、拙ポストカー

墨で深山 vs. 西黒丸…鴉

はい、今年もやります、墨で鳥! 先日「私の描いたカフカ(ニシコクマルガラス)をミヤマガラスと言う輩が…」などと愚痴りましたが、私にはそんな偉そうな口を利く権利は全くございません。未だにニシコクマルガラス以外のカラスは皆同じに見えてしまうくらいで。 もう20年ほど前の話ですが、チェコ語にはカラスを表す言葉に「havran」と「vrána」があることを知り、「なんか違うの?」と聞いたところ「havranのほうが大きいんだよ」と適当な説明をされた記憶があります。以来「大きいカラス

なにも茶阿流豆参世って表記しようって言ってるんじゃないんだ。

イギリス国王エリザベス二世が2022年9月8日96歳で崩御された。と同時に女王の第一子であるチャールズ皇太子がチャールズ三世として新国王に即位することが決定した。そのニュースは世界中で大々的に取り上げられ、私の住むチェコ共和国も例外ではない。女王崩御が報じられた後は、私も英王室のニュースを(そんなに熱心ではないが)ちょこちょこ読んでいる。 チェコでの報道を目にして、すぐに「おや?」と思ったことがある。 「エリザベス二世崩御、チャールズ皇太子がカレル三世として即位」とある。

クマタカの素朴な疑問

この、聞いてもどうしようもないような疑問を投げかけるために、久々のペン画の練習もかねて一枚漫画を仕上げました。むむ、今見直すと最後のクマタカの嘴が長すぎる感がありますな…。両翼を合わせてモジモジしているところを描きあらわしたかったのですが、こんな中途半端な感じに見えるのなら、もっとデフォルメしてキャラ化してやれば良かったなぁ。 ことの発端は鳥描きマスター橘鶫さんの絵。 このポハク族男性のモデルのカンムリクロクマタカ、ヘアスタイル(?)イカしてるよなあ、と思いググってみたん

外国語で俳句~チェコ語編

noteには俳人がとても多いように感じる昨今。自分がフォローしている方々がnote上の俳句クラブ(?)に所属しているからか、最近は「あなたへのおすすめ」としても、俳句関連がよく表示されるようになった。 個人的には俳句を詠むなどという風流な趣味は持っておらず、日本語母語話者として血肉にしみわたっている七五調で、俳句とも川柳ともはたまた短歌とも言えないような言葉の連なりが頭の中を駆け巡ることは頻繁にあっても、ついぞ「作品」として仕上げたためしがない。 しかし俳句とは何か妙な縁

ワイシャツのワイ。

冒頭で言及している素敵な記事、というのはみきみき@作家(美樹香月)さんのこちらのエッセイ。 楽しくてオシャレで、文章を書くプロって、こんな風に書くことで「遊ぶ」ことができるんだなあ、とほれぼれ。ぜひ皆さまもお読みになってください。 で、本記事の本題に戻りますが。 …ああ恥ずかしい。恥をしのんで描きました。本気出して「ワイシャツの名称の由来は襟とボタンの列がYに見えるから」と信じ込んでいました。一体いつから?全然覚えていません。 外国語の新単語は、何かエピソードや語

浦島太郎と、呼んでくれ。

最近になってやっと、「〇〇とは」で分からない新語を検索する知恵を身につけました。 最後のコマで、「エモい」を好んで使っている方の気分を害さないかと内心ビクビクですが。どうか見逃してやってください。 「アラサー」「リア充」くらいまでは、母語の知識をもとに見当がついたのですが、さすがに「ガラケー」の「ガラ」はお手上げで、父とスカイプしたときに教えてもらいました。 しかし、浦島太郎も竜宮城に滞在しながらリアルタイムで故郷の情報を手に入れられる、便利な時代になったものです。