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渾沌(こんとん)を もう一度

南海の帝を儵(しゅく)と為(な)し、北海の帝を忽(こつ)と為し、中央の帝を渾沌と為す。
儵と忽と、時に相与(あいとも)に渾沌の地に遇(あ)ふ。
渾沌之を待(じ)すること甚(はなは)だ善(よ)し。
儵と忽と渾沌の徳に報(むく)いんことを諜(はか)りて曰はく、
「人皆七竅(しちきょう)有りて、以て視聴食息(しちょうしょくそく)す。
此(こ)れ独り有ること無し。
嘗試(こころ)みに之を鑿(うが)たん。」と。
日に一竅(いちきょう)を鑿ち、七日にして渾沌死す。

https://manapedia.jp/text/3864 の書き下し文より引用


渾沌に出会ったのは高校生当時の古典の教科書です。
当時、自分なりに解釈したりと、どういうことかわからないけれどなんとかしてわかろうとしたお話の一つです。

この渾沌というお話は、抽象的が故にどの分野にもなれるお話だと思います。
例えば、こんな展開に持っていくのはどうでしょう。
この渾沌というキャラクターには、嫌悪感を抱く可能性が十分にあります。「人皆七竅(しちきょう)有りて、以て視聴食息(しちょうしょくそく)す。此(こ)れ独り有ること無し。…」より、渾沌は「視聴食息=目、耳、口、鼻 (計7つの穴)が無い何か」となり、とりあえずよく認知されている人間の形はしていないことがわかります。人間は「よくわからない・不明の・未知の」もので、「害がある」物体に対して防衛心・警戒心が働きやすいです。この見た目で、しかも、調べてみると、この渾沌は空を見ては笑っていたそうです。もし、その笑い声が騒音とされて、外見が判明した折には駆除・捕獲の対象になることも考えられます。渾沌は、「之を待(じ)すること甚(はなは)だ善(よ)し。」=儵と忽を大変厚くもてなした ため、駆除・捕獲を逃れられたのかもしれません。

Googleで「渾沌」と調べると、たくさんのクリーチャーな渾沌を見る事ができます。ぜひ調べてみてね。


ちなみにこの渾沌、絵本にもなっています。私は衝動買いしてしまいました。

『こんとん』 文:夢枕獏 絵:松本大洋
https://www.kaiseisha.co.jp/books/9784033328904

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なるほど、渾沌の、ありのままをを受け入れて、私が選ぶ言葉は、やはり
『きみのことが すきだよ』


こうやっていろいろな解釈を見て、私の渾沌は無くなってしまったかも!とも思いました。が、他の解釈を読んだからこその気づきや新しい考えがあるのだと思います。


生きていれば、また渾沌を見つけられるのだと思います。

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