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ノースライト:横山秀夫:これは意外、でも凄い、大満足

「ノースライト」(19/2022年)

横山、こんな作品も書くのか、というのが正直な第一印象でした。警察が出てこないミステリですよ、驚きでしょ。建築家が主人公で、その人の建てた家が謎の中心です。その家を舞台に殺人とか、誘拐とか、どんな犯罪が起こるのか、建築家はどう事件に巻き込まれていくのか、とワクワクドキドキしながら読み進めるも、途中で気が付きます、この話は犯罪小説ではないのだと。そして、人には犯罪以外のミステリも存在するのだと。

ネタバレにならないように最小限のことしか書きませんが、家の他に椅子も出てきます。その椅子は伝説の建築家タウトが作ったものに違いない。その正体が分かれば、家に関するミステリの解決に繋がるのではという思いで、主人公の建築家、青瀬は動き始めます。

家族の問題、離婚して妻と暮らして居る娘の問題。仕事の問題、バブルで散って、どん底まで落ちた後、どう立て直していくのかという問題。そして昭和初期、ナチス政権による迫害から逃れるために日本に渡ってきた近代建築家タウトを巡る問題。そして、本筋である家を巡るミステリ。並みに作家じゃ取っ散らかって、情報だけ消化して終わってしまう作品になってしまいます。

しかし、横山、ちゃんと予想外の展開まで用意しつつ、しっかり読者の胸に刻んでくれます。高評価なの、当然です。ミステリを堪能しつつ、人の様々な生き方を見せつけられ心揺さぶられて、更にタウトに関しての知的好奇心も満たしてくれるのですから。

多分、自分は自分に家を建てることなく死んでいくと思います。でも、これを読んでしまうと、ちょっと残念な気持ちになってしまいました。家、いいですね、建築物に込められた人の思いの強さ、感じ取りたかったな。



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