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アルファベット・ハウス:ユッシ・エーズラ・オールスン:ラストシーンの素晴らしきことよ。

「アルファベット・ハウス」(50/2022年)

あの「Q」の作家のデビュー作です。第二次世界大戦中とその30年後の1970年代、2つの時代の物語です。

2人の英国人パイロットがドイツ軍に撃墜されるもなんとか不時着、その後、逃げこんだ列車は傷ついたドイツ兵を運ぶ列車で、2人は死にかけていたドイツ兵と入れ替わり追跡をかわしたが、行きついたのは「精神病院」だった。バレること、それは死に直結する状況の中で、医師や看護師、他の病人たちを精神病患者としていかにだまし続けるか、過酷な戦いが描かれる。
一番厳しいのは2人がコミュニケーション出来ないこと。些細なことで偽装がバレれば、すなわち死が待っているのだ。この緊張感あふれる描写は非常にハードです。

病院での「事件」後、舞台は約30年後のイギリス、ドイツに。2人の英国人の運命はどうなっているのか。それは読んでのお楽しみです。

そして、このラストシーン、リアルというかなんというか、心に染み入ります。人間関係というものは、強固だったり脆かったり、でもそれは表面的なものであり、本当の信頼関係があれば、カタチは問題ないんだなと思いました。自分の思いと相手の思いが相互に理解しあえれば、それだけで良いのです。痺れる結末、是非、堪能してほしいです。


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