教場0:長岡弘樹:「真摯な指導」

「教場0」(065/2020年)

風間先生が現場にいた時の物語です。現場のころから「先生」をやっていたんですね。事実だけ取り出せば、かなりというかパーフェクトなパワハラ先生ですが、教えられる方がパワハラと感じていなければ「真摯な指導」となるという好例かと思います。

6つの事件に6人の「生徒」が挑みます。現場で無茶な質問をしてくる風間先生に対応して、考えさせられ、誘導され、指導され、犯人と対峙していきます。構成的には、1作品を除き、先に犯人が分かる「コロンボ方式」のミステリです。解説で知ったのですが、短編の各タイトルも本家コロンボのもじりとのこと。ピーター・セラーズと木村拓哉は遠いですが、ワンクリックおいて、田村正和ならば成立するな、とかニヤリ。

全体的に本格的な警察小説というよりは、かなりトリッキーな事件ばかりですが、そこはエンタメと割り切って楽しめます。お気に入りは「指輪のレクイエム」かな。策街トリックはちょっと強引かもしれませんが、それをうわまわるラスト、「安心」の訳は、ジワリと泣かせます。

どれもテレビドラマ向きですね。軸となる風間、木村拓哉は各話にちょっとだけ出てきて、カッコいいアドバイスだけ残し、あとは若手刑事にまかせる感じ。若手刑事と犯人は毎回異なるキャスティングで登場。ちょっと制作費かかるかもしれないけど、見てみたいです。


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