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祝葬:久坂部羊:死って、何だ?

「祝葬」(97/2022年)

数代に渡る医者の一族。共通するのはみんな早死に、60歳まで生きられない男ばかり。
命を救うこと、生を伸ばすことが仕事と思われている医者という立場から見る生命は、大事な仕事の糧、金儲けの素でもある。そういう視点がきっちり書き込まれているので、本作品は残酷であり、シビアである、そして笑える。

生きてどうする。5つの短編が問いかける。
「祝葬」は「真令子」「ミンナ死ヌノダ」「希望の御旗」、ここまでが現代社会の死に対する向き合い方をブラックに描いています。ラスト、近未来設定の「忌寿」は、癌が撲滅された超長寿社会における医療問題を、今の医療問題に擦り合わせて、面白ろおかしく、そしてシビアに書いている。

しかし、病気の他にも、死を迎える方法は大きく分けて3つある。自殺、他殺、事故死である。

この4つの死に方で、実は病気による死、つまり医療が関わる死が、実は一番問題なのかもしれない。善意と悪意が入り混じり、金銭条件や社会的地位による差別も内包する。
医者以外の人たちは、命を継続するためには医者を頼るしかない。医者も自分では治療できないという意味では同じ立場だが、やはり情報量に圧倒的な差があるので、非医者とは違うと言い切ってよいだろう。

死に対する態度を決めておくことは凄く大切だと思うけど、他者が関わりによって影響される。特に出会ったお医者さんって、実は大きなピースを占めているのではないかと改めて感じました。「お医者さんガチャ」って厳しいな。


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