すかたん:朝井まかて:大坂にタイムスリップ

「すかたん」(81/2022年)

江戸時代は江戸だけじゃない、大坂もあるんだぞと。更に言えば、江戸よりも豪華なんだぞと。江戸が湿地帯だったころから大坂は栄えていたのだから当然でしょう。歴史もあるし、物もある、そしてお金が集まってくる。

そんな大坂に、江戸育ちの女が武士の旦那と共に仕事の都合で引っ越したのだが、早々に旦那が急死。身分の違う結婚を二人で押し切ったという経緯があるので、子供もいない時点で旦那の実家からは体よく捨てられ、たった一人、大坂でサバイバルしなくてはならなくなった主人公、知里の運命はいかに。

舞台は青物問屋。女中として「奥様」の世話をしながら、そこの問題児、若旦那に惹かれていくラブストーリーです。朝井の書く文章はすらりすらりと流れていきます、実に美しい。文字を読んでいることを忘れてしまうくらいです。問屋のビジネススキームや大坂のしきたり、当時の江戸との差異など、様々な情報が詰め込まれていますが、それらが過剰に主張することなく、物語の背景をしっかりと固めてくれているので、江戸時代にタイムスリップした雰囲気を味わえます。

これは映像化に向いてますよね、予算があれば(笑)。ウンチクあり、恋愛あり、ミステリあり、実にバランスよい。ただ、お祭りのシーンはお金かかるなあ。となると舞台化かな。大坂弁が飛び交う中、主人公が江戸弁とインチキ大坂弁を駆使して頑張る感じとか、いいね。



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