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日本以外全部沈没:筒井康隆:1973年の日本はカッコ良かった

「日本以外全部沈没 パニック短編集」(132/2021年)

「日本以外全部沈没」、大御所しか書くことが出来ない作品です。カッコいい大人たちのカッコいい仕事ですね。こんな時代に大人でいたかったです。

シンプルな話です。世界が水没、陸地はチベット近辺を日本しか残っていない。世界中の人が日本に来る。その中でも、権力者、政治家や重要人物、大金持ち、ハリウッドスターたちがいち早く集結するのだが、その人たちに対する日本サイドのディスり方が、もう下品でえげつなくて、失笑です。筒井の毒がバーストします。多分、本家・小松左京も嬉しかったことでしょう。プロとプロが本気出すと、こんな素敵な事件が起こるのです。ああ、プロがプロであった時代かな。

その他にも「あるいは酒でいっぱいの海」「ヒノマル酒場」「パチンコ必勝原理」「日本列島七曲り」「新宿祭」「農協月へ行く」「人類の大不調和」「アフリカの爆弾」「黄金の家」「ワイド仇討」といった、毒気満載の短編集です。

「農協~」は今だったら書けないよな。「パチンコ~」バカっぽくて最高。一番のお気に入りは「新宿祭」、ギリギリのところ攻めているけど、学生運動をここまで馬鹿に出来るってことは、それなりの敬意があったのかな。あの頃ならではの秀作ですが、今に通じるよな。

大人の短編集です、超楽し!



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