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こわれもの:浦賀和宏:浦賀作品だからドキドキする

「こわれもの」(41/2022年)

つくづくも悔やまれます、若くしての死を。まだ未読作品あるので、ゆっくり読んでいきたいと思います。

未来予知ものです。通常の作品ならば「予知」にはトリックがあるという前提で読むのですが、浦賀なので、本当の予知かもしれないというドキドキを持ちながら読み進めます。彼の裏切りが楽しいんですよね。叙述ミステリ作家の場合は、叙述前提で読むからミスリードされますが、浦賀の場合、敢えて言葉にするならば「当たり前」なオチをストレートに持ってくる可能性もゼロではないわけですから。

婚約者を交通事故で突然失った漫画家の先生が主人公です。彼のもとに婚約者の死を予知していたファンレターが届いていたところから物語は始まります。
それと同時に、そのリアルな死とリンクして作品の中のヒロインを作品の中で突然「殺して」しまうのですが、それに猛烈に反発して先生に殺意を抱くマッドなファンの物語も進行します。このファンに対するシニカルな描き方、浦賀の毒の部分が物語を熟成させていきます。意地悪だよね~と思いながら嘲笑しつつも、これは決して他人事ではないという事実を突きつけられます。
物語は基本的にはミステリとして進行していきます。予知能力者にどんどん追い込まれていく先生。それに呼応するかのようにボルテージを上げていくファン。

ネタバレになるのでこれ以上は書きません。
ただ、結末を迎えたあとの、もう一回転はちょっと予想がつきませんでした。想定外の優しさに、動揺したことだけ書いておきます。



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