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④片平里菜の、これから

「③片平里菜にとっての、大事なことば」から続く】

最新アルバム『Redemption』にも参加して、先週の野音公演にも出演していた、おおはた雄一くんとの接点を個人的にお尋ねしたいです。
そっか、おおはたさんって、盛岡大好きですもんね(笑)。
そうなんです。盛岡の人とよくセッションしてたり、ふらっとやって来る方で。
おおはたさんは、わたしが東京に住み始めてからの繋がりです。デビューした当時、バンドセットでも結構ライブをしてて、その時のバンマスがLÄ-PPISCHのベース・TATSUさんで、色んな音楽家の知り合いがいらっしゃって。“きっと刺激になるから”って色んなライブのお誘いをもらって、その中に恵比寿のカチャトラ(現在は閉店/ライブも出来る飲食店)で、おおはたさんを中心にミュージシャンが集まって定期的にセッションライブをする、というのがあって。そこで何回かセッションをしたのが出会いでした、もうずいぶん前ですね。TATSUさんやハナレグミ・永積タカシさんとかもいらっしゃって皆でワイワイ、楽しくセッションライブをして。仕事というよりはプライベートで関わっていた音楽の先輩だったんです。
ということとは別に、この数年(おおはたと)ライブでご一緒させていただくことが増えてきたのもあったし、あとは、10周年の節目にアルバムを自主制作してみようと決めたものの、客観的に見てくれる人・意見をくれる人が1人でも2人でもいる方が嬉しいなと思って、たまたまカフェでお会いしたタカシさんに相談したら“里菜ちゃん、絶対に、おおはたくんが合うよ!”って。あぁ、確かにその手があったか!と思って、すぐにおおはたさんにオファーさせていただきました。東京で音楽活動をし続けていた故の繋がりですね、ありがたいことに。

アルバムを聴きながら、「風の吹くまま」のギターの音にニヤッとしてしまいました。野音公演の時も本当に、会場をやさしく包むあたたかい音色が響いて。
おおはたさんの弾くギターとお人柄で、心が解けると言うか…皆リラックスするんですよね。今回おおはたさんとは、日常に寄り添った曲を一緒に制作しました。
同じアコースティックサウンドでもOAUは、牧歌的だけどアグレッシブな一面も持ち合わせる、かたや、おおはたさんには生活が見える曲とか心が軽くなるような曲、しっとり聴きたくなる曲を。そういう振り幅でアルバムを作れたら良いなと思って。
とは言いつつ「Blah Blah Blah」は、おおはたくんという(笑)。
そうなんですよ、おおはたさんって、人を傷つけない良い感じの毒もあると言うか(笑)。エッジや皮肉…そういう一面もあって、そこも魅力だなと思ってて。そこで“ブルージーでライブでやったら盛り上がる曲を1曲作りたい”って思って、アルバムの中で唯一この曲だけはゼロから(他アーティストと)一緒に作りました。
おおはたさんに色んなギターのリフを提案してもらってそこに私がメロディを付けて歌詞を付けていったんですけど、頂いたギターリフの雰囲気が“怒り”とか“切迫感”だったんですよね。そこから、今の私の関心事で、気候変動のことにリンクして。それを歌うのは難しいなと思いながらも、でも自分の心から湧いてきたテーマを形にしようと思って。言葉の羅列をいっぱい書き殴って、嵌め込んで、形にして。でも中々、自信がなくて“作ってはみたものの世に出して良いのかなぁ”って思い悩みながら、家に持ち帰って歌詞を書いては消してを繰り返してて。レコーディング前々日ぐらいに“こんな感じになりました”って(おおはたに)歌詞を送ったら、意外や意外“カッコいいじゃん!もっと言っちゃいなよ!”って(笑)。それで堂々とレコーディングしてリリースに至りましたね。
野音でもそんなお話をしてましたね。ギターもサイレン音のように聴こえたり、実際に2人でライブで鳴らした音にはガッツリ心を持って行かれましたよ。
“ちょっと悪の組織っぽいよね”とか言いながら、ニコニコして弾くんですよ(笑)。おおはたさんも、レコーディングは楽しかったんじゃないかなぁ。
そして歌詞もよくぞここまで、という。
背中を押してくださったのもあり、出せました。うん。
歌詞と言えば「不幸自慢」、わたしは好き!
ね〜、そういうお年頃ですね(笑)。20代前半は“好きな人と一緒にいられたら良いや”っていう感じだけど、後半ぐらいから今の年齢に差し掛かってきて、急激に女性としての生き方の現実味を帯びてくる…だから恋愛の曲も変わってきますよね。
「Tom Waits」にしても。
大人になっていってる…いってますかね(笑)?

岩手県盛岡市で開催される
「いしがきミュージックフェスティバル」にて
里菜ちゃんとおおはたくんで
2人一緒にこのフェスに出てくれたら嬉しいな
と夢見ています🎶
いしがきPhoto by 石井麻木

では最後に、片平里菜が歌っていきたいことや、これからやってみたいことって何でしょうか?
休みたいな〜(一同笑)。だから野音の後はちょっとだけ休んで、今度は11周年。これまでは、デビューから10年が地続きで、今までの活動がちゃんと報われるように10周年を迎えたいっていう気持ちで続けてきたのがあって。“あの時もっと本腰を入れて頑張っていれば”とか、たらればも後悔もいっぱいあるけどそれで終わらせないで、やってきたことが報われるように10周年を迎えたいっていう気持ちだったから、そこまでは頑張ろうって。
でもそこから先は、もっともっと自由に歌ったり表現したいなぁって思ってて、野音が終わったら本当に行ったことのない場所…都市部からはちょっと離れてるんだけど、だからこそローカルならではのシーンがあったり面白さがある場所にちょっと行ってみたいな、そんなツアーを5月中旬から目論んでいますね(「風の吹くまま」ツアー/こちらから)。
まだまだ行きたい場所があると。
今の生業・生きていくためにライブしないと食い扶持がっていうのもあるし(笑)、そもそも楽しいし、外に出てる方がやっぱり、自分の風通しも良いから元気ですしね。
そして夏の恒例になっている、福島でのワンマン公演は?
8月11日に、郡山(@HIP SHOT JAPAN)でやります。8月は毎年、自分の地元でイベントをする感じにしたいなぁって思ってますね。
片平里菜にとって、歌っていくということは揺らがないことですよね。
揺らがない…けど、もっと原始的にと言うか、“歌って何だろう?”“声って何なんだろう”っていうのを、ずっと探索したいと思ってたんですね。これからやりたいのは民謡とか、和歌とか。日本語が持つ元々の美しさ、それがメロディに乗ってる歌でなくとも、日本語の言葉って、一音一音が音・音色であるらしくって。日本語の言葉の響きの奥行きだったり、そういうところにも踏み込んで表現してみたいなって今は思ってます。
日本語でやっていきたい。
英語も大好きですけどね、でも日本に住んでるから。沖縄に行って沖縄民謡を聴いた時、ただ単に地元の人が歌ってるだけなんですけど感動しちゃって。その民謡を知っているわけでもないし住んでたわけでもないけど、懐かしさとかあったかさが伝わってきて、民謡の力ってすごいなぁと思って。まだ(地域に)息づいている民謡を探しに行きたいなと思ったり、そもそもの日本語が持つ響きとか美しさというのを再発見したいなぁ、って。
福島・東北にしてもたくさん民謡がありますしね。
それこそ(野音で披露もあった)じゃんがらも、歌ってるし。歌ってみたいから誰かに教えてもらおう、っていう気持ちです(笑)。「満月の夕」も沖縄民謡の“イヤッサッサー”っていう節回しですもんね。ポップスも勿論素晴らしいんですけど、そもそもその土地に根付いていたものをもっと知りたい、ということをすごく思っています。

片平里菜:1992年福島市生まれ シンガーソングライター
高3から地元のライブハウスで音楽活動をはじめ
「閃光ライオット2011」審査員特別賞を受賞しメジャーデビュー
2018年から個人事務所で音楽活動を続ける
2023年10月から始まった全国47都道府県・51箇所の
ツアーファイナルを先日、日比谷野外音楽堂にて開催

【おしらせ】『片平里菜 Redemption TOUR 2023-2024 FINAL』
日比谷野外音楽堂でのライブレポートを近日掲載予定です。お楽しみに!


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