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DMOとまちづくり幻想〜深刻化する財源と人材不足〜

週刊トラベルジャーナル3月15日号は「岐路に立つDMO」という特集タイトルでとても興味を引きました。もちろん購入し読みました。

さまざまなメディアや媒体に執筆活動されている、木下斉さんが新書を出されました。こちらも読んでDMOについての「深刻化する財源と人材不足」についてつらつら書いてみます。

●なぜ財源と人材が不足するのか?

不足するにも理由があると思います。個人的に共通して言えるのは、DMO内、行政、議会を納得させるような事業計画を作っているかどうかです。財源と言っても、行政の中には観光セクションがあり、さらには観光協会が存在していれば、そこに予算はあることへの仮説が立ちます。となれば優先順位として3番手にDMOが存在してしまっているのではないでしょうか?そこに事業予算をつけないといけない、人を雇わないといけない程度にしか思われていないのかもしれません。

なぜ3番手になってしまうのでしょうか?それはDMOが何をするのか説明できないからです。マーケティング、マネジメントという言葉が具体的に何をするのか分からないからではないでしょうか?これらはフレームワークはあっても、それを当てはめるだけでは答えが導かれるわけもなく、そもそも前提になる考え方を学びやコミュニケーションを通じて、参加メンバーに対して共通のベクトルに合わせる作業を行わなければ、それぞれの俺マーケティング、俺マネジメントが発生しがちだと思っています。どんな事業を行うにも考え方が合わずに頓挫するのが分かるからなのか、外部業者や有識者に依頼して半ば力業で合意形成を得ていくやり方が多いのではないかと感じます。

DMOの収益とすると、主に公益事業と収益事業に分かれると理解しています。公益事業は行政からの委託を受ける事業。収益事業は独自にイベントや物販、チケット販売など事業を興して収益を得ていく事業です。公益事業は、一般的には公示されて入札するのが一般的なものですが、DMOは入札して公益事業を取得しているものもあれば、入札を行わず委託を受けるものもあります。

事業に応じて人のやりくりをしなくてはいけなくなると、適材適所の人材を探す必要が出てきます。しかし、この公益事業自体が単年であったり、永続的に続く事業でなければ、専門性を持った人材はアサインしたいと思うでしょうか?行政のルールで行うことは専門性を持つ自分のプライドを崩しながら忖度やしがらみの中で実行するもどかしさの塊しか生まないものなのかもしれません。更に言うと評価判断も専門性を知らない人たちによる行政のルールでの評価でしかありません。

結果的に人材が不足するのは、働きたい人はいても雇用する側の問題で躊躇するのではないか?と感じています。行政からのOBや出向者がいれば、行政のルールでしか成り立たない組織になり得るのは想像がつくと思います。専門性を持った人材がそんな中で働きたい人がいない、チャレンジ精神だけで入るが「豪に入っては郷に従え」に合わせながらも、独自性を作れるようなスーパーマン的な人材はそんなに世の中いないようにも思えます。給与面でも観光協会をベースになるので厳しいのが現状ではないかと感じます。

●人材が活躍するための土台すら作れない

専門性を持った人材が活き活きするためには、しがらみや行政のルールに合わせないで作ることが必要だと思います。合わせないとは言っても、過去の活動や取組など歴史を紐解く、温故知新は必要だと思っています。それを今の時代に合わせたことを作り上げることが必要なのです。

しかし、その土台をしっかり理解していないと的外れなものになりがちだと感じます。しかし、その土台は長期的なもので短期的なものではないので、新しいB級グルメやゆるキャラというものが生まれ、「まちづくり幻想」でも語られているようなインバウンド、関係人口といったものが生まれ続けてしまうのかもしれないと感じます。こういったワードが生まれて、取り組んでは効果が出ず、全国の自治体が飛びつき、上手くいかず続かない焼き畑的なことになってしまうのだと感じます。これはDMOも同様です。

大手旅行会社や広告代理店などに大枠を託す、好きにやってもらうことが正しいと思っている時点で間違っていることに気付くべきだと思います。地域の人たちが土台を作り、部分部分で依頼してこそノウハウを持つが大手旅行会社や広告代理店などが活きてくるものです。

観光地域のマネジメント、マーケティングの推進を観光庁から言われていますが、行政にその素地があるとは思えず、専門性を持った人材を活かすことすら出来ないではないかと思うのです。結果がんじがらめにして塩漬けにした結果、去って行くといったパターンになるのではないでしょうか。

そんな状況だからこそ、帰路に立つと言ったという話題になってしまうのかもしれません。土台を作り、事業計画を作れる人材を理解し、新しい取り組みを横展開に手助けするような体制が作れる自治体でなければ、DMOを作れば観光地域づくりが出来るというのは幻想だと思っています。

\「まちづくり幻想」発売記念イベント開催 LDLゼミナール/
発売したばかりの木下斉さんの新書「まちづくり幻想」の発売を記念して、出版記念イベントが開催されます。事前に参加者のみなさまより「まちづくり幻想」事例を募集し、その中から当日いくつかピックアップしたものを、著者の木下さんも交えて共有します。参加者のみなさまと「幻想」を共有し、語り合うことで、明日を生きる力にしていただければ幸いです。


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