普通と優先

前回のnoteで2020年のスターフライヤーの増資について書きましたが、今回は2020年のANAとJALの増資と比べてみて、思ったことについて書いてみます。

コロナ禍が起きた2020年にANAとJALも増資を実行しました。

ANAとJALが増資のお知らせを発表したのは同年11月、増資は普通株式の発行によるもので、ANAもJALも2020年内に発行価格及び売出し価格等の決定に関するお知らせを発表しました。

ANAの2021年3月期の決算短信を見ると、前年3月より増えた発行株式数は1億3580万株、株式の発行による収入は2960億98百万円でした。

JALの2021年3月期の決算短信を見ると、前年3月より増えた発行株式数は1億株、株式の発行による収入は1826億57百万円でした。

コロナ禍がまだ深刻な中で年末に増資を発表し、年度末までに4800億円近い資金を調達できるのは、航空大手2社の知名度のおかげでしょうか。

2社の増資の主要幹事会社には複数の大手金融機関が担当してました。

ANAとJALの増資の引受人の対価としては、引受手数料は支払わず、増資による発行価格と引受人による各会社に払い込まれる払込金額との差額の総額を手取金とするとありました。

ANAの発行価額は2286円、払込金額は2191円、JALの発行価額は1916円、払込価額は1836円、この差額に新たに発行する株式数を乗じた額が引受人の手取金になるのですから、引受人としても日本の交通インフラを維持することと自分の大きなビジネスを両立できるわけですね。

ANAもJALもコロナ禍では経営は大変だったと思いますが、増資の引受人の選定ではさほど困らなかったと思います。

対してスターフライヤーの場合ですが、ANAやJALに比べて規模はずっと小さく、北九州空港を主要空港にする航空会社のため、増資の割当先を探すのは大手2社に比べて大変だったかと、2020年12月25日のスターフライヤーのプレスリリースを見て感じます。

リリースによれば「2020 年8月下旬より複数の投資家候補と資本調達に関する協議を進めていきましたが、 2020 年9月下旬の時点で、初期的な意向表明を受領できたのはアドバンテッジアドバイザーズ株式会社の みでした。」と記述されてました。

大手2社のように複数の金融機関にまかせて、必要な資金を調達することは困難と読めます。

コロナ禍による減収により2019年12月に67億円あった純資産が94百万円になった会社が、次期も持ち直すか不明で、普通株式にすれば希薄化率が209%になるのと同程度の増資を実行しようとするのですから、金融機関が引受人になるのを躊躇したのも仕方ないですね。

リリースを読むと当時のスターフライヤーの業績では、検討したものの一般の投資家を対象とする公募増資や株主割当は、最適な資金調達手段とは言えないと判断したとあります。

たしかに一般の投資家が、いきなり209%希薄化する公募増資に応募するかと言えば、迷って十分に集まらないかもしれません。

そのため資金調達はA種種類株式とB種種類株式という優先株発行と新株予約権になったわけでしょう。

そんな困難な状況でも増資によってスターフライヤーは自己資本を確保できて、2022年8月にジャパネットホールディングスと資本業務提携し、ジャパネットがANAに次ぐ2位の大株主になりました。

スターフライヤーとの提携にジャパネットが、将来性を評価してるのでしょうか。

増資前のスターフライヤーの発行済株式総数は2,865,640株です。

スターフライヤーのプレスリリースの通りに、優先株と新株予約権が全て普通株式に転換されて、希薄化率209%になるなら、その時の発行済株式総数は885万5千株くらいでしょう。

今の発行済株式総数は3,508,840株と、209%希薄化後の約4割なので、スターフライヤーの長期株主にとっては、スターフライヤーの時価総額を2,5倍にすることが望ましいでしょう。

2023年6月の決算説明会資料でスターフライヤーは「達成すること、2025年度売上高431億円、営業利益50億円」と資料で記述してます。

この数字が達成できれば209%希薄化の後も、長期株主の持ち株の価値が減ることがないくらいに、スターフライヤーの時価総額が増えそうな気がします。

決算説明会資料にある「達成すること」が実現するといいですね。



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