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ヨーロッパ男のマザコンぶりときたら

ルクセンブルクに住んでいた頃、妻(当時)の唯一の日本人のお友達にエミというのがいましてね。

エミ
大阪出身。バリバリコテコテの大阪人。当時 36歳。ルクセンブルク在住。
マイクというベルギー人のご主人とハンゾウというパグと暮らす。
外国人としか付き合えない特異体質。今まで付き合った男の国籍:オーストラリア、カナダ、イギリス、アイルランド、オランダ、ベルギー 👈今ここ


マイクとハンゾウ

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ご主人のマイクは EU で働く IT エンジニアでした。ラクで自由で高給という、誰もがうらやむ EU 勤務。ベルギー人の特権でしょうか。
日本語は話せないものの、日本食が大好きな日本通。日本食でどうやったらそんなに太れるんだろう?と不思議でしたが、チョコレートとワッフルとフレンチフライも大量に摂取しているのでしょう。ベルギー人の特権ですね。

私と妻とエミとマイクの 4人でよく日本食レストランに行きました。
当時のルクセンブルクには、KAMAKURA(かまくら)というヨーロッパでもトップクラスの日本食レストランがありました(今も健在のようです)が、庶民が行けるところではありません。
私たちが行くのは、ギョーザとかポテトサラダとかホウレンソウのおひたしが値段を気にせずに食べられるお店です。
ヨーロッパに住む日本人の粗食ぶりが想像できますね。

そういうお店で飲んだ後、マイクが〆にきつねうどんを注文しました。
渋いチョイスですね。エミの教育が行き届いていることが窺えます。
マイクはお箸も上手に使います。
しかし、うどんをすすれないのです。お箸で麺を折りたたむようにして口中に運んでいます。

私「マイク、ここは日本食の店だから、音を立ててすすってもいいんだよ」
マイク「ムリムリ!そんなのできないよ」
私「なんで?」
マイク「子供の頃、スープを飲むときに音を立てたらママに叩かれたんだ」
私「きびしいお母さんだったんだね」
マイク「だから、食べるときに音を立てるのは今でも怖くてできないんだ」
私「今はママが見てないから大丈夫だよ(笑)」
マイク「ママは見てるよ。ママはいつも僕の後ろに立ってて僕を見てる気がするんだ」

(背後霊か?)

エミが日本語で言いました。
「こいつマザコンやねん」

エミが英語に戻って続けます。
エミ「マイクは毎週ママに会いにベルギーまで行ってるんだよ」
私「毎週??」
マイク「うん。妹が結婚して家を出たから、家の中がパパと犬だけになっちゃって、ママもさびしいみたいなんだよね」

(ゑ? ホントに背後霊じゃねーだろーな?)

エミ「最近、ママの誕生日に携帯電話をプレゼントしたんだよね」
マイク「そうなんだ。そしたら、ママから 1時間おきに電話がかかってくるようになっちゃって」
マイクの表情は、困っているというより、ノロケているように見えます。

ざわわっ。

ざわざわ


マイク「会議中でも平気でかけてくるんだもん。マイッちゃうよ💗」
私「出なきゃいいじゃん」
マイク「ママからの電話に? そんなのムリムリ!」
エミ「マイクは私と話してるより、ママと話してる時間のが多いよね」

私「てゆか、ママとよくそんな話すことあるね」
マイク「どうでもいい話さ。今日の電話は、新しいテーブルクロスを買おうと思うんだけど、どんな色がいいと思う?って話。昨日の電話は、ショコラ(犬か?パパか?)がいつものやつを食べてくれないの、何か足したほうがいいのかしら?って話だったし」

エミがまた日本語でつぶやきました。
「ビョーキやろ」

ふと妻を見ると、白目になってました。

母さん2


マイクのケータイが鳴りました。
マイク「ママからだ。まだ起きてたのかよ。ちょっと失礼するよ」
マイクはケータイを持って席を立ちました。

(よかった・・・ママ、背後霊じゃなかったんだね)

マイクが席を外している間、会話が日本語になります。
私「エミには電話かかってけーへんの?」
エミ「それは大丈夫や。マイクのおかんフランス語しか話せへんねん♪」

おまえフランス語習えや。

妻「エミちゃん、たいへんだね」
エミ「もう慣れたわ。ヨーロッパの男、こんなんばっかやでホンマ」

愛妻家や恐妻家という言葉があります。
ヨーロッパの男は、愛ママ家、兼、恐ママ家なのです。

エミ「でもやさしいし、ええ奴やねん」

へぇ・・・エミがこんなやさしい顔するんや、とちょっと驚きました。
妻も大切にする男で、妻に直接の害がないのなら、べつにマザコンでもいいんじゃないかな、と思いました。