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高専が今後の日本の未来を作るイノベーション人材の宝庫ではないか、ということについて

こんにちは、どうも僕です。西出大介と申します。
@Awesome Ars Academiaというセブ島にあるグローバルテックスクールのマネージャーをしています。

そんな私が管理しているテックスクールに、昨年2018年の夏休み、今年2019年の春休みと学びに来てくれた高専生がおります(※ 下記がその彼の留学体験談)。

彼は山口県の宇部高専の学生で、高専2年生・17歳のタイミングでトビタテ留学JAPANの奨学金を取得し、シリコンバレーでもいろんな企業を訪問しています。
日本に帰国後も、長期休暇があれば東京へ飛び出し、今をときめくトップスタートアップ企業の人にアポを入れオフィス訪問をしていたり、このままの勢いで活動していってくれれば、将来の活躍が間違いないような人物だな、と思っています。

彼が高専から弊社のスクールに来てくれたことをきっかけに私も気づいたのですが、「高専」の学生は、混迷と低迷を極める今の日本社会において、未来を救う人材の宝庫ではないか、と考えています。

そんな想いが行き過ぎたのか、なぜか僕は逆に宇部高専まで訪問し、高専生に僕の想いを伝えるようなことも、してきました(笑)。

ただ、おそらくこの想いや考えは、一定以上の妥当性を持っていると考えています。
今日は、高専という仕組みやそこへ通う学生のイメージなどを踏まえて、高専や高専生というものが、今後の日本においてどのような価値を持つのかについて、書いてみたいと思います。

そもそも高専とは何なのか?

ではまず、そもそも高専(高等専門学校)とは何なのか、について触れておきたいと思います。

高等専門学校(こうとうせんもんがっこう)は、後期中等教育段階を包含する5年制(商船に関する学科は5年6か月)の高等教育機関と位置付けられている日本の学校[1] 。一般には高専(こうせん)と略される。 学校教育法を根拠とし「深く専門の学芸を教授し、職業に必要な能力を育成する」ことを目的とする一条校である。
出展: 高等専門学校(Wikipedia)

上記はWikipediaからの引用ですが、「上級学校への進学準備ではなく、卒業後に社会に出ることを前提とする」という「完成教育」という教育を標榜している、とも書かれています。
一般的な高専のイメージ通りでもあるのですが、「実用的な技術を身に付けた、専門的な技術者を育成する教育機関である」ということになります。

実際、敗戦後の1950年代の朝鮮特需などを背景に、日経連や経団連など、急成長を見せた産業界の要請に応じる形で、ある種「工業分野に特化する」という形で策定された学校形態であったようです。

実際に、そのような「完成教育」と「工業分野の要請」へ特化した学校形態であるため、現在においても「求人倍率」や「就職内定率」は圧倒的な高さを誇っています。2013年のデータでも、
・5年生の本科卒業生の有効求人倍率: 16.9倍
・5年の本科+2年の専科卒業生の有効求人倍率: 39.1倍

という驚異的な数値となっており、産業界から圧倒的に高い需要・評価を得ている人材育成機関であることが伺えます。

実際に先日私が宇部高専に伺って出会った専科学生の中にも、産業機械メーカーとして世界的企業の一つである、村田機械の最終選考を受験している最中である、という学生もいました(その後内定もらったとも聞きました)。

そんな今も圧倒的な世界シェアを誇る日本の強力なメーカーの人材採用で求められる人材を輩出している場所、というのが高等専門学校なのだな、と思っています。

21世紀の社会におけるイノベーション人材とは?

話を少し変えて、21世紀の社会におけるイノベーション人材とはどのようなものか、についても考えたいと思います。

このあたりの議論は、STEM/STEAM教育の文脈、ベンチャースタートアップ業界の文脈など、既に多くの領域で議論がなされています。
ただ、ここでは一つ、今回の記事で触れている「高専」という文脈において言及すべきイノベーション人材像、つまり「技術者的観点」における「イノベーション人材」に触れたいと思います。それは、

ハードウェアとソフトウェアの両方のアプローチを当たり前に取れる技術者

というものです。

これはもはや多くの人が直感的に理解してくださっていることですし、ITベンチャーやスタートアップ界隈の方の世界観でも、もはや当たり前として認識されていることですが、近年の産業の流れは「ソフトウェア産業がハードウェア産業を食っている」という流れの中にあります。
もう一歩踏み込んで言うと、「ハードウェアのあり方がソフトウェアによって再定義を余儀なくされている・イノベーションを余儀なくされている」という状況だと言えるでしょう。

自動車産業を見れば火を見るより明らかですが、「自動運転」というものは完全にソフトウェア的なアプローチによってハードウェアとしての自動車というプロダクトが再定義されているプロセスです。
もちろん、ドローンなどのような新たなハードウェア産業が、「空飛ぶモビリティをドローン産業と結びつけて設計する」ということを本気で実現させる方向に向かえば、もしかするとAmazonが「自動車産業」のトップ企業になる、という未来も起こりえます。

いずれにしても、このようなプロセスを見れば明らかなように、「既存のハードウェア産業が、ソフトウェア産業との組み合わせによってアップデート・再定義されている」のが21世紀初頭の状況と言えるでしょう。

このような社会背景の中ですごく大切なのは、「ハードウェアとソフトウェアの双方のアプローチを当たり前に取ることができる人材」は、非常に重要な役割を担える人材である、ということです。
そして、20世紀半ばの高度経済成長へ向かう「ハードウェア産業の成長」の要請の中で生まれてきた高等専門学校という「完成教育」の舞台に、21世紀を席巻する「ソフトウェア産業的観点を持つ教育」を、よりハイレベル・最先端な内容として組み込むことができると、

ハードウェアとソフトウェアの両方のアプローチを当たり前に取れる技術者

という、技術的観点における「イノベーション人材」を多数輩出できるというイメージは容易に想像できます。
そして、そのような人材が、日本にとどまらず、世界の産業をリードできる目線を持ち、活躍できる人材となっていけるであろう、ということも容易に想像できるでしょう。

もちろん多くの高専が既に「情報工学科」を設置しており、相当前からその領域へ力を入れてきている、ということは伺えます(下記文科省ウェブサイトの全国高専の学科一覧)。

おそらく、この高専・高専生の可能性の大きさ、というところについては、まだまだIT業界やベンチャー界隈などのソフトウェア産業界側があまり意識できていないことなのかもしれません。
ですが、高専という場とITベンチャー、スタートアップなどがよりシームレスな人材育成での連携ができるようになれば、日本のお家芸の世界的ものづくりと相乗効果を設計しながら、テクノロジー産業をアップデートしていくことができるのではないか、と考えています。

少なくとも、そのような視野・視座を持った人材が若手人材から増えてくることは、非常に価値のあるものではないかと思っています。

やっぱりデジタルネイチャーの時代であるな、ということ

私個人はAwesome Ars Academiaというグローバルテックスクールを運営する中で、「国境や文化を超えて、デジタルクリエイティブによって世界と向き合うことのできる人材」の育成を常に意識しています。

そして、その一つの模範となる人物が、現在においては落合陽一さんである、と考えています。
彼の考える「デジタルネイチャー」という概念を理解して行動できる技術者は、今回私が議論した「ハードウェアとソフトウェアの両方のアプローチを当たり前に取れる技術者」という要素を、必要条件の一つとして持っているでしょう。
「触れることのできる光」や「自分にしか聞こえない超指向性スピーカー」のような落合陽一さん的発想は、ソフトウェアによって自然をも操作可能なものとして想定し、デジタルとフィジカル、デジタルとネイチャーの垣根を超えた発想を前提としています。
より具体的に、私たちの生活を取り巻く生活環境においても、ボイスインターフェースの世界、AR, VRなどが当たり前となるXR的世界など、もはや具体的な生活環境としても、デジタルネイチャー的な感性は当たり前になりつつあるのではないか、と思います。

「デジタルネイチャー」的なものが社会実装されていくこれからの10年・20年の時代では、「ハードとソフトを両方共当たり前にテクノロジーによってシームレスに取り扱う」という観点を持った人材こそが、価値を非常に持つ、というのは想像に難くありません。

今回触れなかったある種のリベラルアーツ的な要素は、「ハードとソフトを双方取り扱って、自然や世界自体を操作できる可能性を持つ時代」となるがゆえに、「どのような世界を私たちは設計するの?」という「ある種神の視点で世界を見るような視点」として必要となる想像力なのでしょう。

もちろん、より時間的に遠い未来を射程に入れた議論をする際には、落合陽一さんの想像力を超えた人材こそが必要となります。ただ、短期的な人類社会を考え、日本社会を考えるのであれば、「落合陽一さんが提示する概念を理解して社会実装することができる人材」の方が、目に見えた形で、具体的に社会を推し進めていくために必要とされるでしょう。

これらのような観点から、高専という教育機関と、高専生という人々に、僕は大きな可能性を感じています。
僕自身もっと高専という存在について調べを深めると共に、海外テックスクール事業者として、日本やアジアなどの国際的な環境をフィールドとして未来を作っていける人材の育成・教育について深く考えていければ、と思っています。


最後に宣伝ですが、そんな僕が管理しているテックスクールはこちらです。


高専生や、高専の教職員の方、高専にお子様を通わせている親御さんなど、どこかで何かご一緒できることがあれば嬉しいです。

私の管理するテックスクールは、未来を担う人材育成をしたいと考え、私設奨学金として受講生へ割引をしたいと考えています。 もし記事を読んでサポート頂けますと、弊社スクールを検討する学生への奨学金としてプールし、還元していきます。小額でもぜひ、サポート頂けますと幸いです。