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ジョジョとの邂逅

行きつけの珈琲店の帰り道、懐かしい犬に出会った。
ジャックがまだ小さい頃、羽根木公園の広場でよく遊んでいた黒柴のジョジョだ。
彼もジャックと同い年なのである。

犬同士も懐かしそうに、匂いを嗅ぎ合い、尻尾を小さく振っていた。
昔のように「遊ぼう!」の姿勢をとることもなく、穏やかな様子で挨拶を交わしていた。

公園の広場を陣取り、ロングリードで激しく走り回っていたジョジョの姿が思い出される。あっとういう間に時代が変わり、そんなふうにして遊ぶ子も飼い主も今はいなくなった。

15年という月日は、公園のマナーも変えたのだ。

お互いの健闘を祈りあって、僕たちは別れた。

またどこかで会えるだろうか?

公園で、このところよく出会う飼い主さんや犬たちと今日も戯れた。
誰かが、「ジャックは羽根木公園の最年長ね」と言いだす。
「本当に? それは光栄ですね。励みになります」
「そう、〇〇は4月で15歳って言ってたから、ジャックが一番年上よ」
「そうかあ……」
実際は他にも年寄り犬はいるのかもしれないが、まあ顔を合わせる犬の中で……というざっくりした意味だ。

「〇〇はもういないしね」
「あー、そうそう。17歳だっけ」
死という言葉は使われず、雰囲気と年齢だけが言の葉に乗る。それもマナーなのかもしれない。

長生きすると、たくさんの犬の別れと出会うことになる。
この前も、まだジャックの半分の歳で病死した子の話を聞いたばかりだ。

「じゃあ、夏にくる16歳を目指さないとね」
僕は話を合わせた。
「そうそう。いけるいける」
優しくて頼りになるママさんが力強く言った。
いつもジャックのために小魚を持ってきてくれる人だ。

実際、どれだけ多くの犬がこの公園を訪れているのかわからないけど、もしかして一番年上というのは、どこか気分のいいもので少しジャックが誇らしい。

この数日、ジャックは足取りも軽く、食欲も旺盛だ。
今日だって、結構スタスタと歩いた。

ジャックが匂いを嗅ぐ植え込みの下草がだんだんと緑色になってきたな……と思っていたら、ツツジが芽吹いてきていて、小さな蕾の中に濃いピンク色が覗いていた。

梅、桜……ときて、ツツジ。
そう、次はツツジを目指せばいいんだ。

「ジャック、ツツジもうすぐ咲くな」と話しかけたら、しゃがみ込んでいい形のうんちをした。


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