村本大志

映像演出家 / デニムブランド downnorth jeans 主宰。 小説『透明な耳…

村本大志

映像演出家 / デニムブランド downnorth jeans 主宰。 小説『透明な耳。』双葉社 お問い合わせはHPからお願いします▶︎ http://taishimuramoto.downnorth.jp/ 第5回かつしか文学賞・優秀賞『佐山家の彼岸』

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『あかり。』➀ 相米慎二監督の思い出譚

相米慎二監督という映画監督がいた。いまから20年くらい前に病気で亡くなってしまった。 いま、当時のことを思い出しても胸が痛くなる。 監督が残した映画は全部で13本。その映画には多くの資料や証言が残されているので、詳細はそちらに譲りたい。DVDもある。未見のひとは、ぜひ見ていただきたい。 よく、映画監督が映画を撮っていないときにどうやって暮らしているのか?と半ば、興味本位に話題にする人がいるが、実際のところ僕も同じように思っていた。 自分でも映画を撮ってみて改めてわかったの

    • シン焼きそば(マルちゃん)

      YouTubeを転がしていると、焼きそばのアレンジレシピによく出会う。 みんな普通に作るのに飽き飽きしているのだろう。 どこのスーパーに行っても置いてあるマルちゃんソース焼きそば。 この国に未来永劫あるような気がする。 今夜も袋を開封しました。 まずはレンジで2分加熱(3袋) フライパンにごま油を敷き、麺を並べる。上から醤油を適宜回しがけてから着火。中火で両面こんがりするまで焼く。 その間に具材を用意する……と言っても、もやし2袋とネギのみじん切り、ニンニクのみじん切り、

      • #70 『あかり。』第2部 相米慎二監督監督の思い出譚・コンテ全部書いとけよ

        監督が僕に言った。 「ムラモトくん、コンテ全部書いとけよ」 「あ、はい」 僕はうなずいた。 台本に線を引き、カット割りをあらかじめ決めておくことをなんて言うんだっけ……あ、割り本。 ドラマや映画の場合、こちらのほうが日本だと一般的だと思う。 CMの場合、脚本がなく絵コンテだけである。 SFX系の作品だと丁寧に絵コンテを作り(=ストーリーボード)どこを実写で撮り、どこをアニメやCGにするか、あとでどう合成するかなど綿密に打ち合わせするが、そういうのがなければわざわざ絵コンテ

        • 『あかり。』第2部#69 三馬鹿・相米慎二監督の思い出譚

          監督にとって大切だったのは、俳優やスタッフと真摯に向き合うことだけであって、他のことは結構いい加減だった。 監督を見ていると、『演出すること=仕事』というより『=生き方』に思えた。 考えてみると、アイドルたちが右往左往する恋愛ドラマみたいなものに、なんであんなにエネルギーを掛けたのだろう。 それはCMのほうも同じだった。 どっちだっていいじゃないか……と考えてしまえばそれまでのことに、なぜか一生懸命なのだ。 いわゆるわかりやすい一生懸命さとはまた違うのだけど、演技すること・

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        『あかり。』➀ 相米慎二監督の思い出譚

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        • 下北沢周辺ダイアリー
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          『あかり。』 #68 16mmフィルムで・相米慎二監督の思い出譚

          (#59の続き) あっという間に月日が経ち、テクノロジーは進化したので、いまさらフィルムで撮るかデジタルで撮るかを話すのはナンセンスかもしれないが、僕はフィルム撮影が好きである。フィルムの持つ質感が好きだった。ましてや映画(みたいなもの)であればなおさらだった。 「じゃあ、フィルムで撮れないならやんないってわけ?!」 目の前のKプロデューサーの目が三角になった。 新人監督にそんなこと言われる筋合いはないと言わんばかりの顔つきだった。 「ムラモト君はそんなこと言ってないだろう

          『あかり。』 #68 16mmフィルムで・相米慎二監督の思い出譚

          初代ジャック?

          春の嵐なのか。昨日からの湿気、雨、そして強風。 予想通り公園の桜は半分以上散ってしまった。 儚いものです。 午後遅くになって、ようやく雨も上がったのだが、身体がベッドから起き上がれない。こちらも看病疲れ、睡眠不足が続いている。 数値が下で安定したのか、身体が病気に慣れたのか、それとも春だからか、ジャックはこのところ元気だ。 今日も散歩が待ちきれずソワソワして、玄関先で「早く行こうよ」とばかりにワンワン吠える。 実際ダッシュするのは数十メートルで、そこからは自転車のカゴに

          初代ジャック?

          ブルーベリージャムのサンドイッチ

          お手製のブルーベリージャムをいただいた。 毎度、ありがたいことである。 市販のものとは鮮度も味も違う。 摘むのにも手間暇がかかることは、ブルーベリー狩りをしたことがあるので少しはわかっている。 いつもながら感心してしまう出来栄えのジャムで、いただいた帰り道にリッツを買っておいてよかった。 深夜、リッツにジャムを乗せながら映画を見ていた。 朝方になって、またお腹が空き、せっかくだからサンドイッチを作りたくなる。 クリームチーズにバゲット、それにブルーベリージャム。 あるいは

          ブルーベリージャムのサンドイッチ

          ジョジョとの邂逅

          行きつけの珈琲店の帰り道、懐かしい犬に出会った。 ジャックがまだ小さい頃、羽根木公園の広場でよく遊んでいた黒柴のジョジョだ。 彼もジャックと同い年なのである。 犬同士も懐かしそうに、匂いを嗅ぎ合い、尻尾を小さく振っていた。 昔のように「遊ぼう!」の姿勢をとることもなく、穏やかな様子で挨拶を交わしていた。 公園の広場を陣取り、ロングリードで激しく走り回っていたジョジョの姿が思い出される。あっとういう間に時代が変わり、そんなふうにして遊ぶ子も飼い主も今はいなくなった。 15

          ジョジョとの邂逅

          インコとサクラ

          公園にインコがたくさんいた。 今日初めて聞いたのだけれど、元々はペットとして飼われていたインコが、飼い主が飼うのを放棄してしまったせいで、野生化したものが、いつしか増殖したそうだ。 緑色も鮮やかなインコたち。 「害鳥なんだって」 「桜の花の蜜を吸うために、枝にとまって、ああやってゆするから、花びらがみんな落ちちゃうのよ」 確かに。 咲いたばかりの桜が、なぜかその木だけ散っている。 見ているそばから、花びらが地面にはらはらと落ちていく。 こちらとしては、やっと桜を見る

          インコとサクラ

          『あかり。』#67 タクシー・相米慎二監督の思い出譚

          タクシーを停めて監督を見送るとき、いつも寂しいようなホッとしたような気持ちになった。あれはどういう感情なのか……。 その頃は、懐具合がよかったようで、監督は飲むとたいてい帰りはタクシーだった。 あまり電車で帰る監督を見たことがない。 僕らが監督を見送り、監督が窓越しに軽く手を上げる。 あの景色はいつまでも映像となって記憶に残っている。 タクシーが去るのを待ってから、僕らは飲みに行ったり、あるいは電車があれば電車で、なければタクシーでそれぞれの家路に着いた。 なぜかよ

          『あかり。』#67 タクシー・相米慎二監督の思い出譚

          サクラを見た。一緒に見られた。

          午前一時半、風呂上がりに自転車で近所のローソンに走った。 先日買ったローソンの食パンが気に入ったのだ。ふんわりしっとり八枚切り。サンドイッチを作るのにちょうどいい。 それに、ジャックの薬を包んで飲ませるのにちょうどいい。 うまく騙されてくれる。 日にちの過ぎた水分の抜けたパンだと薬だけ歯の隙間から吐き出すのだ。 相手もだんだん学習する。 土曜日あたりから気温の上昇と共に公園の桜がぐんぐん咲き始めた。 花見客で賑わっている。 しかし、桜を見上げても死を間近に控えたジャックと一

          サクラを見た。一緒に見られた。

          MacBookの通院

          朝方、配信でドラマを見ていて、ちょっと疲れたのでパソコンを閉じた。 目薬を差してから、もう一度、液晶を上げるとブラックアウト。 初めてのことでため息が出た。 かたわらのiPhoneで検索すると、電源ボタン長押しとあるので、試してみると復旧。 やれやれと思って、またしばらく鑑賞。 その後、同じことが何度か起きて、やがてそれでは立ち上がらなくなり、次の段階へと進んだ。それもダメになり、やがてうんともすんとも言わなくなった。 そのまま起きていて、アップルケアに電話した。 すぐに繋

          MacBookの通院

          糖度保証されたリンゴの足元に

          先日、糖度保証されているリンゴ(ふじ)をいただいた。 それはとてもおいしかった。 今期のふじには裏切られることが多かったのだが、それはきっと安物だからで、立派なふじは歯応えもパリッとしていて見事なものなのだ。 それはすぐに無くなり、リンゴ難民になった。 リンゴ一個で医者いらず……の理由はよく知らないけど、今、うちには病犬がいるので、おやつにリンゴは相応しい。 今日、まいばすけっとで、買い物をしていたら、リンゴがばら売りしていた。 一個500円弱。 糖度保証がされている。

          糖度保証されたリンゴの足元に

          『あかり。』第2部 #66 監督の部屋・相米慎二監督の思い出譚

          あの頃、あれだけ一緒にいながら監督の部屋に入ったことは一度しかない。 家の前まで車で迎えに行ったり、送りに行ったりしたことは何度かあるが……あれはどうして部屋に入ったのだろう。その理由が今となっては思い出せない。 さして広くなく、割と片付いていて、ものが少ない……のは思い出せる。 印象としては鶯色の部屋だった。 畳の縁の色か、カーテンか、座布団か……それとも壁の色だったのか。 とにかくそんな印象を覚えている。 例えるなら、明治時代の書生のような部屋だった。 「お茶淹れ

          『あかり。』第2部 #66 監督の部屋・相米慎二監督の思い出譚

          ブリサンド、BLTサンド、卵サンド!

          なんとなくサンドイッチを腹一杯食べたくなった。 用意したものは、ブリの切り身の塩焼き(頂き物)葉玉ねぎ、ミニトマト。ベーコン。レタス。卵。 ◉鰤サンド イスタンブールの露店でイワシサンドを食べたことがある。 それをイメージしたが完全に自己流である。 ・塩焼きにしたブリの切り身をほぐしておく ・アイオリソース風(マヨネーズ・ニンニク・レモン汁・オリーブオイル) ・葉玉ねぎ、ミニトマトのスライス ・トーストした食パン アイオリソースをパンに塗り、ブリのほぐし身を挟む。レモン汁少

          ブリサンド、BLTサンド、卵サンド!

          『あかり。』第2部 #65 人の群れ、魚影の群れ・ 相米慎二監督の思い出譚

          映画『魚影の群れ』にはいくつもの名シーンがある。 想像するだけでスタッフにとって吐き気がするような長回しの連続が山ほどある。 だから、ここぞとばかりに質問攻めにしたくなってしまうのだが、続け様に聞くのもはしたない気がして、監督の機嫌がいいときを見計らって、あのときはどんな感じだったのですか?と聞くようにしていた。 十朱幸代さんと緒方拳さんの長い長い追っかけのシーンがある。どれだけ走るんだと観客がため息をついてもなお、まだ走り続ける。画面はやがて雨が降る。土砂降りになる。それ

          『あかり。』第2部 #65 人の群れ、魚影の群れ・ 相米慎二監督の思い出譚