惑星遺民たちの同窓会 (3)

今日も今日とて妖怪惑星クラリスの話をします。

魅力その3 没頭できるシナリオの数々

先日紹介した通り、確かに妖怪惑星クラリスのシナリオは頭がおかしいものが多い。いかなる文脈でも、与謝野晶子8億人とベートーベン18兆5億人が侵入してくるゲームは正気が疑われてしかるべきだ。

一方で、妖怪惑星クラリスの全てがこのような意味不明なギャグエピソードだったわけではない。妖怪惑星クラリスには真っ当なストーリーがあったのだ。

惑星クラリスは、人類が外宇宙での環境適応性を探る実験場だった。惑星クラリスを最初に発見して、その名付け親でもあるクラリス博士は、その非人道的な計画に反対したが、逆に自らもその計画の被験者となってしまう。移住の際に接種されたDNA変異ウイルスにより化け物になってしまった人々を見て、クラリス博士は彼らを救おうと決心した。だが、そのためには実験を観察するために設けられた、惑星クラリスにある様々な研究施設と、化け物になってしまった人間たちの生体サンプルが必要である。彼女自身には強力な戦闘能力はなく、地球への恨みから暴徒化する人々による妨害を乗り越え、ワクチンを作り出さなければならない……。

三人いるシナリオライターの一人、星野一人さん(おそらくシリアス担当)のサービス終了時のツイートより引用。スタッフにさえ知らされないほど唐突なサービス終了だった為、部分的にしか描かれてはいなかったが、その分とても丁寧に描写されていた。

たとえば、この『鏡の国』というエピソード。自分の姿を見ないために鏡を憎むキャラクターの登場するのだが、その描写がプレイヤーの心に訴えかけてくる。

『鏡の国』のメインキャラクターのおにゃんこ^~。
シリアスなエピソードでは通常名前の持つ意味は無視される。

こちらはNPC。現実感のない狂気と悲しみが感じられるだろう?

今さらの説明になるが、妖怪惑星のエピソードは基本的に一話完結でエピソード間のつながりはない。それどころかギャグエピソードでは世界観自体が狂っている場合も多く、急に芋煮会を開いたり、廃課金者のスマートフォンを生贄に呼び出された悪魔と戦いを繰り広げたりする。エピソード間でキャラクターの名前すら一定ではないが、概ね近いものとしてはポプテピピックだろうか?

ギャグとシリアスが完全に分離していて、しかもどちらも吹っ切れている。プレイヤーはまっさらな気持ちでエピソードを読み始めるしかなく、とはいえ冒頭の空気でこれがギャグかシリアスかは簡単に判別できる。

これが実に功を奏していた。普通ならこれほど吹っ切れたギャグを連続して浴びせられるとプレイヤーは感覚が麻痺してツッコミを返せなくなる。端的に言うとギャグが滑るのだが、そこにシリアスなエピソードが混ざる場合はどうだろう? 少しだけ身構えた状態でぶつけられるトンチキ話ほど面白い物はない。図らずも、妖怪惑星はそれを実現していたというわけだ。

妖怪惑星クラリスの全てのエピソードは、非公式の原作セリフbotの固定ツイートにあるGoogle Driveに画像形式で保存されていて、ニコニコ動画にはファンコミュニティ(通称『下水道』)が作成したボイスドラマ動画(第一弾第一弾リメイク第二段)がある。『下水道』はボイスドラマの他にもファンサイトとそのツイッターアカウントを作るなど、妖怪惑星クラリスの文化の保存に勤しんでいる。文化振興の一環として、ちょうど今非公式人気投票企画が行われている。


何もかもおかしいソーシャルゲームではあったけど、みんなあの惑星が大好きだったんだ。

#ふるさと

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