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【Interview企画/学生小委員会】怒涛の10700文字!土木学生は〇〇に挑戦せよ!新たに就任した土木学会長が語る、土木技術者が行うべき3つのチャレンジ【土木学会田中会長-Vol.1】

はじめに

みなさんこんにちは!
土木学会学生小委員会インタビューWGです!
今年度から学生小委員会では、ユニークな経験やアイデアを持った方々との対話を通じて、これからの土木や社会に関わる若者に有益な情報を提供することを目的にしたインタビュー企画の連載を開始しました。

第2弾は、田中茂義土木学会会長にインタビューを行いました!
Vol.1では、私たちインタビューWGメンバーと田中会長が「土木技術者の現状と目指すべき未来」を題材に行ったディスカッションの様子をお伝えします。


会長プロジェクト「土木の魅力向上」:ゼネコンの経営者だからこそ、建設業界全体の社会的評価を上げる

西川貴章(学生小委員会)――――――
 田中茂義さんは6月9日から会長に就任されたというタイミングで、技術者の技術的な部分と、広報などのプラスαの部分の両輪で、これから1年間、土木学会としてどんなチャレンジをしていくのでしょうか?

田中会長――――――
 土木の魅力向上プロジェクトは、元々、会長になると会長プロジェクトっていうのを立ち上げる仕組みがあって、上田先生は グローバル化の話をされて、その前の谷口さんは土木のビッグピクチャーを作るっていうのをされて、 みんなそれぞれされてきたんですね。

 私は、会長になった時に、当時の専務理事をはじめ皆さんから、「ゼネコンの会長らしいことをしてほしい」という風に言われたんだよね。 ゼネコンの会長らしいことってね、それは何かなって色々考えたんだけれども、 学術的に云々っていうのは、先生たちが長けてる、あるいは、そのインフラの整備の手法、あるいは予算組み、それは官の方が長けてる。

 そんな中で、じゃあゼネコンの会長として何をしようかと考えた時に、 これは土木界全体の社会的評価を上げるというのは必要なんじゃないかなっていうね。土木が果たしてきた、あるいは今も果たしているその社会的な役割の重要性に比べて、評価されてないのではないか。

 それは、施工サイドだけじゃなくて、コンサルタントの方も、役所の方も、みんながそう思ってるんだよね。だけどもそのまま放置されてきた、1つの大きな問題なんだね。

 これを、この1年で解決できるとは思わないけれども、継続的な取り組みを、この1年かけて土木学会の中に残して、ずっとやっていってもらいたいということを意図して、土木の魅力向上プロジェクトを作ったわけです。 


自分の言葉で自己主張をしないと、 正当な評価を受けられない


 会長になった時の動画でも言いましたけど、土木はこれまで、自分たちのことを、自分の言葉で、世の中にあんまり発信してこなかったんだよね。「縁の下の力持ちでいい」 「自分たちがやってることは役に立ってる」という確信があるから、もうそれでいいんだという、悪く言えば、自己満足、 自己完結的な、そういう思いを持ってる方が多かったんじゃないかと。

 だけど、これから、世の中に出ていく、あるいはそのグローバル化で世界に出ていくといった時に、自分の言葉で自己主張をしないと、 正当な評価を受けられないと思うので、ここはなんとかしようという風にまず思ったと。

土木からスターを生み出す

田中会長―――――― 
 それともう1つ、それに付随するけど、土木って、あんまり個人を前面に押し出してこなかったよね。土木は集合体であった。ですから、土木の中でスターを作ってこなかったわけです。
 そんなことだから、個人のアピールも全然していないんですよね。そこが非常にまずいなと。

 この間ね、委員会の人たちがフリーディスカッションをした時に、「土木の世界に大谷翔平がいるか」っていう一言があった。確かにそうだよなと思った。で、建築の世界には、一応いるんですよ。 建築ってね、デザイナーとそれ以外っていう感じなんだけど、デザイナーの中に一応いるじゃないですか。
 
 今だったら隈研吾さん、昔だったら丹下健三さん黒川紀章さんとか、いっぱいいらっしゃるでしょ。 で、そういう人が一応スターなわけだね。それで、一般の国民の中には、「建築」って言うとそっちの方が思い浮かぶわけだよね。

 現場にいる人、一般の設計やってる人は全くその土木と一緒。同じだから、建築も土木も。建築のデザイナー以外はもう僕は土木と一緒だと思ってるの。ほとんどもうみんな一緒。土木側と一緒です。全く同じ。 「現場でモノを作ってる」っていう、建設ということをやってる方は全く一緒。彼らにとってみたら同じなんだよね、一部のスターがいるだけ。

 だけど、土木にはそのスターさえもいないね。ということで、土木に対するこの魅力がね、中にいる学生、あるいは土木学会の会員も感じてないんじゃないかなと。 だから、そういうスター的なものをこれから作ってもいい。どういう形になるのがいいかわかんないけどね、そういう風にも思っている。

土木技術者への社会的リスペクトを高める

田中会長――――――
 それともう1つは、日本では技術というものに対するリスペクトがあんまりないんじゃないかと思う。

 その最たる例はね、昔から、土木事業っていうのは、 為政者、平清盛だったりさ、武田信玄だったり、徳川家康、そういう人たちが、 土木事業的なものを行ってきたんだよね。それで民の安心、安全、安寧を実現してきたわけなんだけど、そこに土木技術者っていう切り口は全くないんだよね。

 平清盛は、例えば大輪田泊を作ったけれども、 そこに、「土木技術者が」として語るような技術の話ではないし、何もない。武田信玄は信玄堤も作ったけど、別に彼が作ったわけじゃないけど、「武田信玄が作った」っていうことしか残ってない。 で、「徳川家康は江戸を干拓して云々」って言うけどね、江戸の町を作ったのは、徳川家康の下で実務を担った土木屋がいたわけですけど、そういう人たちについては、あまり語られないね。

 あるいは、もっと古い話で言うと、お坊さんね。空海もそうだし、行基だとか、空也とか、いっぱいいるけど、 彼らは、中国を経由して仏教を学ぶ中で、土木技術を学んで、その土木技術の一端を持って、日本各地に建設してきた。 それはまさに社会福祉事業っていうか、インフラ整備なんだけど、 それを、土木技術者というような切り口、そういう位置付けで彼らが語られることはないわけじゃない。

 それはおかしいんじゃないの。もっと、ずっと昔から土木技術者が世の中で活躍してきてるのに、そういうものに対して全く語られない ね。

 それはおかしいということで、今回、土木の魅力向上プロジェクトを作った。それで、土木の魅力を発信してもらおうとか、技術者のステータスアップをしようとか、そういう話になってるね。


西川貴章(学生小委員会)――――――
 宮本武之輔が技術者地位向上運動を行っていた時代であれば、 「技官が冷遇されている」という明確な社会課題があって、運動の結果「宮本武之輔自身が内務省の、今まで技術者がついたことがない地位に登り詰めた」という成果があったと思うんです。今回、特に昨年から始まるこの大きな運動の中で、 技術者に光を当てていくことによって、業界全体は本質的に何が1番変わるのでしょうか?

田中会長――――――
 1つは土木屋さんがリスペクトされること。 それは、名称で言ったらいいのか、個人なのかわかりませんけど、 僕は個人でもいいと思っているんだよね。リスペクトされるような土木屋個人が少し出て来てほしい気しているのですよ。

 自分がその土木の一端を担っているものとして、ああと思ったのは、アフガニスタンで活躍された、 福岡の中村哲さん。お医者さんだったんだけどね、医者は数人の命しか助けられないけども、ここに1本の用水を掘れば何万人もの人が助けられるということで、医者でありながら、医者の仕事も当初してたと思うけども、後半は、土木事業をしていたわけだよね。 ああいう人たち に対してね、「僕たち土木は、何やってたんだ」と思うよね。

 中村哲さんは、リスペクトされてるでしょ。土木技術者としては扱われてないけど、土木的な灌漑事業に対してはリスペクトされてる。 だから、ああいうような形がいいのかどうかわかりませんけど、土木屋が個人として、だんだんリスペクトされるようになってきやしないかな、という期待はしてるんですね。

 あと、土木全体がって話になると、これはなかなか難しいのがあるというのは、土木と一概に言っても、 大学の先生もいれば、我々みたいな企業人もいれば、あるいは作業員もいれば、 あるいは匠もいれば、いろんな人がいる。そんな中で全員を、というのは、なかなかね、難しいかもしれないけど…

 でも、匠にしても、土木の匠ってあんまり聞かないでしょう。匠と聞いて一般的に連想されるのは、法隆寺を建てた何百年前の匠、宮大工とか。建築では匠としてある意味リスペクトされてるでしょ。 だけど、土木の類もいるはずなんだけど、それはリスペクトされてないんだよね。取り上げられてないんだよ。だから、そういうものを、リスペクトされる対象に押し上げていくってことも、業界全体を押し上げる1つのきっかけになる。

土木のスターはイノベーションを起こすことに挑戦せよ


 では、学生はどういうことにチャレンジをすれば、自己主張がうまくできる技術者になれたり、リスペクトを得られるような振る舞いができるようになるでしょうか?

田中会長――――――
 土木におけるイノベーションっていうか、「未来を創るんだ」ということを心がけたらいいと思っている。

 というのも、土木っていうのは、 初代土木学会会長の古市先生の講演で言っている通り、総合工学であると。しかも、工学以外に経済とか 行政だとか、そういうものも含むものであると。で、「将に将たる人が土木技師だ」と言っているわけだね。だから、土木工学がその総合工学であれば、 イノベーションの第一線に立てると。総合工学だから、いろんなものを取り入れて作り上げていく。

 なので、 土木の性質からしても、土木はイノベーションを作る最先端にいると思っているので、そういう観点と、技術で課題を解決していくっていうのは得意だと思うんだよね。

 例えば、どんな例があるかっていうと、例えば、 ボスポラス海峡。

 「トルコ150年の夢」といって、ボスポラスに橋をかけて、 アジアとヨーロッパを結ぶっていうのは、150年来、トルコが夢見てきたこと。それで、 昔の絵を見ると、海中に橋脚がいくつか立っていて、そこにボックスカルバートみたいなものが上に乗っかっている、 そういう絵があるんですよ。だけど、ボスポラス海峡は、 非常に海流の影響があってね、しかも、上の方の層と下の方の層で、流れが逆になったりしているんですね。だから、そんなところでどうすんだっていうので、橋みたいなものは、当時はなかなか作りづらかった。 大成建設として、「沈埋トンネルならできる」と発注者に提案をしているわけですね。

 「沈埋トンネルをあそこに作る」ということで工事が入札にかけられたわけだけど、日本の業者の中でも「あんなところでは沈埋トンネルは無理だ」って言って、応札を辞退した大手がいます。だけど、大成建設はできると踏んで、いろんな技術提案をしてね。大手同士の戦いになって、技術提案で勝ってできたわけだけど、沈埋トンネルを沈めていくと、はじめ上の方ではこっち側に流されて、下に行くとこっち側に流されて、所定の位置にピタっとつけるってのは非常にノウハウがいる。それこそイノベーションで、沈埋の函体のところに、位置を計測できるような装置を付けて、それを見ながら、コントロールしながらやったわけですけど。そういう色んなイノベーションと技術を使って、トルコが150年間夢に描いていたことを実現したわけですよね。

 あれは日本の業者で無理だと言って辞退した業者もいるけども、ヨーロッパの業者も無理だと言ったんだよ。 それで、「日本の大成建設がやるんだって」って話になって、「ボスポラスの施工ができるんだろうか」っていう観点で、日本人以上に、ヨーロッパの人たちが注目してたんだよね。で、それができたっていうので、ヨーロッパの コンサルタント関係では、「おお、すごいな!!」っていう評判にはなったんですね。それくらいの仕事ができたね。 

適用範囲の広い問題を選び、異分野とのコラボレーションでイノベーションを起こす。


 イノベーションを生むっていうのは大事なんだけど、「どうすればそういうイノベーションができるか」っていうことなんだけど。今はどの会社もやってるかもしれませんけど、 オープンイノベーション。他産業とコラボレーションをするってのは、当然、1つある。もう1つは、多様な人材を使う。それはね、例えば、データサイエンティストを使うっていうこともあるんだよね。

 この、データサイエンスを使う話はね、4年ほど前にフランスのブイグ本社を訪ねてディスカッションしたことがあったけど、その時に彼らは、 シールドトンネルをいかにすれば早く施工できるか、早く安全に施工できるかということに関して、データサイエンティストを雇って検討していた。

 それで、データサイエンティストってのは、いろんなデータを、 もう、「データの湖」って言ってたけど、データの湖の中から、これとこれが関連してるっていうのを見つけ出すんだよね。それで、100ケースぐらい、こういうこと、こういうことは関連してる、こういうことはこういうこと関連してるって、100ケースぐらい出す。 それを、そのシールドの技術者が見て、「あ、これはダメ、これはダメ」って言って、100のうちに2つくらい残るらしいんだよ。で、その2つを極めていくとシールドの掘進速度が、1.2倍になった。そういうことを、やってるらしいんですよ。

 日本の場合はね、 滅多に適用されないような突拍子もない工法を開発するってなことがよくあるんだよ。これを適用するのはここしかないよなっていうことは、よくやるんだよね。それは技術の1つの証ではあるんですけど、汎用性があるもの、 例えば、シールドトンネルを早く掘削するとか、そういうことに関しては、意外と研究が進んでないんだよね。ですから、そういうところも、盲点になってるんでね。

 今、いろんな会社が、 山岳トンネルの自動化施工をやろうとしてる。それは、トンネルは掘っていくわけだけど、その途上では、 発破をかけて、山を起こしたり、あるいは支保工を組み立てたり、吹きつけたり、いろんなことがあるんだけど、そういう全ての工種を自動化することによって、作業員の数を半分にできるとかね、そういう技術が 開発可能ではないかと。あるいは、国際的な視野を常に持ってね、自分たちはこんなことやったことないんだけど、海外の企業はこんなことやってんだというような、情報というのかな。だから、僕は、さっきの揖斐川の時に、サイクル・工程を縮めるのに、 ストップウォッチ持って1週間も2週間もそこにいる人がいるということが、本当に驚きだったけど、そういうこととかね。 国際的な視野で、いろんなものを見てみる。

 あるいは、今、MOTって、ありますよね。マネージメントオブテクノロジーって言って、技術経営って言うんだけど、技術に長けたエンジニアが、これを経営にどう生かしていくか っていうことで、いろんな大学で、MOTの講座がある、有名なのは東京理科大にあるけどね。 そういうものを活用することで、イノベーションを生みやすくなるんじゃないのかなと思うんですね。

田中会長――――――
 イノベーションを起こせば、社会のいろんなものややり方が変わるんだよね、だから、さっき、「未来を創造する」って大げさなこと言ったけど、そういうこともありうると思ってるのですよ。

 例えば、リニアモーターカーも完成すれば社会が大きく変わるわけでしょ。2時間かかったところが、1時間かからないで行けるようになるわけだから、そうすると、いろんなものが変わるよね。あるとこでジャンプをしないといけないと思うし。

 石器時代はなんで終わったんだって話なんだけど、 石器時代、別に石がなくなったから終わったわけじゃないんだよ。鉄ができた、あるいは青銅器ができた。だから石が不要になったわけであって、石がなくなったから石器時代が終わったわけじゃない。そこには、鉄や青銅器という当時のイノベーションがあった。そういうものが今の土木の中には絶対ある。だからそれを見つけたらいいんじゃないかと。

 僕自身はもう見つけられないとは思うけどさ。 若い皆さん方が見つけてほしいんだよな、そこはね。

西川貴章(学生小委員会)――――――
 イノベーションには、2つの大事なことがあるなと捉えました。1つは、新しいものが、異なる何かの掛け合わせでできてるからこそ、常に異なるものに対して目を向け続けることが大事だということ。
 もう1つが、枝葉末節の適用範囲の狭い問題に目を向けるんじゃなくて、あえてみんなが取り組む重要な問題に対して、みんなと違う解決策を持ってくることで、汎用性の高いイノベーションを起こせるということ。


田中会長――――――
 そうねえ。それと、これはちょっと土木に限らないと思うけど、新しい価値を創造する時にはモノづくりと、コトづくりってあるじゃないですか。 土木・建築は今まではモノを作ることに特化してました。で、コトづくりってのは、作った後の使われ方とかね。

 例えば、高速道路、車が通行するだけじゃなくて、高速道路の舗装の下に給電設備を作ると、充電できるだろう。もちろん一般の道路はやりづらい。だけど、高速道路はできるよね。「左側車線はそういう道路です」と言えばできるわけで。だから、作った構造物の、それ以外の使い道を考えるってことでも、イノベーションみたいなものが起こせるのではないかと。よくコトづくりっていうけど、道路におけるコトづくりってのはそういうことだろうと思うし、ビルで言ったら、ビルも同じようなコトづくりがあるんだろうし。 そこに目を向ければ、新しいイノベーションがありそうだなって気はするね。

土木の20代はスタートアップを立ち上げろ!

田中会長――――――
 学生さんたちがさ、何を考えてるかっていうのは、非常に興味あるんだよね。会社を辞めたりする人が最近、増えてきた。 それは、大成建設に限らず、大手ゼネコン、あるいは役所、色々ある。

 そんな中でね、こういう意見があったんだよ。

 「建設の世界は、下積みが長すぎる。例えば、大成建設で所長になるためには、約20年は必要。でも、他の業界だったら、 まあ5年やれば一人前で、10年やったら第一人者になれる、そういう世界がある。自分としては不満である。自分はもっとできる。早く一人前になりたい。」

 だから、やっぱり皆さんそういう考えでしょうかって。どうですか。

宮﨑(学生小委員会) ――――――
 そこは非常に難しい。早いうちから裁量が大きければやりがいもある一方、土木という、人の命に関わる責任が重い仕事を管理するのにある程度経験が必要だとも思う。ただ、20年ってなると、少し長すぎるとは思います。

田中茂義 ――――――
 そうだろうな。

西川貴章(学生小委員会)―――――― 
 そうですね。僕は、土木史の委員会でも活動してるんですけど、土木偉人って言われるような人たちの中には、 20代から大きな責任を持ってやってらっしゃった方も多くいて、例えば京都のインクラインで有名な蹴上発電所(日本で初めての近代的な水力発電所)を作った田辺朔郎、彼は工事が始まった時21歳だったんですね。帝国大学の卒論で設計して、そのまま施工を主導した。

 つまり「下積みが長い土木」は必ずしも最初からそうだったわけではなくて、そうじゃない土木の形っていうのも今後あり得るのかなと思っています。

 これは松永昭吾さんからの受け売りですけど、人間が1番エネルギッシュで創造性も豊かなのは20代後半の時なので、 20代後半にいかに大きなプロジェクトに関われるかは、人生全体でどんなことを成し遂げるかに関わってくる

 今日お話を聞いて、イノベーションや社会変革を仕掛けるようなプロジェクトに対して、自分の人生の1番クリエイティブな時間を当てに行くことが重要なのかなと思いました。 そのために、いろんな異なることの掛け合わせっていう意味で言うと、条件はすごくシビアだと思いますけど、蹴上のインクラインも、当時誰もやってなかったことをやっていた。早く大きな責任を持ちたい人こそ、イノベーションに対して果敢に挑んでいくべきなんじゃないかと、今日の話を聞いて思います。

田中会長―――――― 
 昔の人たちが、かなり若い時代にいろんなことやってるってのは、これは間違いないこと。それは、そういうことに関わる人が少なかったからで、自分がその少ない人たちの中の1人になって、もう「自分がやらなきゃ誰がやるんだ」っていう、そういう気持ちを持っていたことも間違いないよね。

 僕は、十勝大橋という橋を施工したんだけどね、PC斜張橋。 あれは昭和16年に完成した橋を架け替えるっていう工事なんだけど。昭和16年に完成した橋っていうのは、 北大の名誉教授の 横道英雄先生っていう方がね、20代の時に北海道庁の技師だった。

 彼が、設計から施工に至るまで、全部関わって、完成させたっていう話なんだよね。それも、江戸時代じゃないわけだから、昭和になっての話だから、昭和の初期頃までには、まだ若い人が1人で先頭に立ってやれるような、そういう時代だったっていうことなんだよね、昭和10何年くらいまでね。いつの頃からか、そういうスタイルじゃなくなって、かなり多くの人が関与し、 いろんなことをして、1つのものを作り上げることになったんだけど、あの当時は、 「1人の人が責任を持って、計画、設計、施工まで全部管理する」っていうことができた時代なんだよね。だから、時代が違うとは言っても、今でも、もしやろうと思ったら、できないことはないと思うんだよな。だって、建築家の人なんかはさ、デザインをして、自分のスタッフにいろんな自分のアイデアをぶつけて、そのアイデアを実現する構造を考えさせて。ああでもないこうでもないって、やってるわけだよね。

 だから、そういうやり方をすれば、今だってできないことはないよね。今は FEM解析とか色んな解析があるんだけどさ、それも誰かにやってもらえればいいわけで。できないことはない。だから、世の中がそういうチャンスを若い人に与えられるかどうか。そういうとこなんだよね。今は残念ながら、仕組みとして与えてないんだな。だけど、与えればやるんだよね、きっと。

 しかも、それができれば個を出すとか、リスペクトの話にも繋がってきそうな感じもしないでもないね。だから、思い切ってそういうことを誰かがなんかでやってみるといい。 だから、スタートアップなんか、自分たちでそれをやってるわけだよね。誰に命令されなくても作ってやってる。だから、どこでもそういう人たちが出てくれば、できないことはないということなんだな。

学生との協力で期待すること

西川貴章(学生小委員会)――――――
 魅力向上、ステータスアップ、という大きな問題に対してもこれからいろんなイノベーションを起こしていく必要があると思うのですが、新たに始まったばかりのプロジェクトと学生小委員会で、協力できるようなところ、協力を期待してるようなところってどんなところですか。

田中会長――――――
 土木学会の動画の中でも言ったけど。我々年寄りはさ、分別はあるのかもしれないけど、 色々この背負ってるものがありすぎて、前に1歩足を踏み出しづらいんだよ。 でも、若い人たちはさ、背負ってるものはそんなにないから、足を踏み出しやすいのと、新しいものにぽっとこう行けるんじゃないかっていうね、そういう風に思うよね。例えば、 今、スマホでもそうだけどさ、説明書ってないよね。トリセツ(取扱説明書)がないよね。 だけど、今の若い人はトリセツがなくてももう全くへっちゃらで、どんどんやる。

 ところが、私も多分にそういうところあるけど、私よりもっと上の人たちは全くダメなのよ。 トリセツがないと。「おい、トリセツはないのか」ってね、もうそこで、全然使えないわけ。触れないんだよ。 ところが、若い人たちにはそれが普通になってる。色々やりながら、こうなのかみたいな、あるいは、誰かがやってみてうまくできたら教えてと、そういうね。昔の人は全然そうじゃないから、 ちゃんとした文書があって、それを読んで自分で勉強して使えるようになるということだけど、今の人とはそこを取っても違う。

 子供はまさにそうだよね。 うちの孫なんか、1~2歳の時にスマホを自在に扱ってたからねえ。スマホでなんかやってんだよね。なんなんだよっていうね。言葉も喋れないのに、そういうものを使える。 で、そこそこのことを、やっちゃう。だからそういう可能性を秘めてる と思ってるんだよ、若い人はね。

 だからそこは、今回の魅力向上プロジェクトもね、我々が魅力と感じてることを、若い人に「それ魅力じゃないです」って言ってくれるとかさ。「俺たちが考える魅力、こうですよ、こういうことじゃないですよ」とね。黒部ダムの話を聴いても、感動する年代と、引く年代と、当然あるわけだからさ。だから、 委員会の年寄りたちが、「魅力ってのはこういうもので、魅力向上はこうすればいい」っていうのは。いやいや、違うということをね、言ってほしいんだよ。もし違ってたら、それは違いますよと。 そういうことを期待する。

最後に

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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次回もお楽しみに!

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 今回私達のインタビューのために貴重なお時間を頂戴しました、田中茂義会長には厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

<取材チーム>

学生小委員会
東洋大  宮﨑康平
早稲田大 西井義幸
早稲田大 西川貴章 
香川高専 土田虎之助
2023年7月11日 『大成建設(株)本社』にて