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【Interview企画/学生小委員会】土木学会長に「ぶっちゃけ、土木業界ってこの先どうなるの?」と聞いてみた! -建設業の2つのブルーオーシャン-【土木学会田中会長-Vol.3】

みなさんこんにちは!
土木学会学生小委員会インタビューWGです!
前回に引き続き、インタビュー企画第3弾の様子をお伝えします。

建設業界で人生のキャリアを始めようと考えている学生にとって、今後の建設業界にどんな市場機会があるのかは知りたいところです。
「どう戦うか」よりも、「どこで戦うか」という戦略的判断によって、キャリアを通じて巡り会えるチャンスも大きく変わってくるからです。
どんな領域で専門性を育てていけば良いか、悩んで調べたことが誰しも一度はあるでしょう。

しかし、自分で調べるといってもすでに自分が知識のあることしか検索できず、見たいものしか見えないバイアスもかかるので限界があります。また、身近な先輩に聞いても、その人の好きな詳しい分野については詳しく知れても、客観的にマクロ市場機会がどこにあるかはわからないし、最先端の技術情報は研究機関は論文として公開しますが、企業の技術情報は企業秘密として隠されているので、全体的に判断して有望なチャンスかどうかはわかりません。

では、どうすれば、自分が見逃しているチャンスに気付けるでしょうか?
そのためには、建設業界のキーパーソン・最先端の技術動向の情報が集まってくる人が、今どんな分野にチャンスを見出しているのかを知ることが重要です。

そこで今回は、建設業界の今後の機会とブルーオーシャンについて、
田中茂義さん(土木学会会長)に聞いてみました!


ぶっちゃけ、建設業界ってこの先どうなるの?

機会① “モノづくり”から、“コトづくり”の時代へ

西井(学生小委員会)――――――
 建設業はこの先どうなっていくのでしょうか。新しいものを作るのではなく、古いものを踏襲しているのではないのでしょうか?
土木学生である私は、今後関わっていくであろう土木業界がどのようになっていくのか知りたいです。
 
田中会長――――――
 人間がいる限りよりよい社会環境を創造する必要があり、人間のものを作りたい欲望は決してなくなることはないです。土木がこれからの社会で果たさなければならない役割はとても大きいものです。時代の中で、必要とされているものは移り変わり、そのたびに新しいものが必要になります。こういったことから、人の営みがある限り建設業が世の中からなくなることはないでしょう。
 
 そういった中で、現代の社会において“モノづくり”から、“コトづくり”の時代に移り変わっています。コトづくりとは、物を作る際に付加価値をつけることであり、使用者がサービスの使用によって体験を得ることです。これは土木においても例外でなく、ただモノを作るのではなく、ユーザーの体験が重要視される、付加価値の時代に移行しています。
 
 高速道路もその一例です。従来は単に車が走るための道としての機能しかなかったが、今はその概念が変わりつつあります。例えば、電気自動車が走行中に充電できるような給電設備を高速道路に取り付ける技術を現在開発中です。これは、道路自体が提供できる新しい「体験」や「付加価値」です。このように単に道路としての機能だけでなく、そこを通過する車や利用者に対して付加価値を与えることができる道路が今後必要になってくるだろうと考えています。
 
 他にも付加価値を与えるということについて、橋梁の本来の役割は障害物がある場所をまたぐものですが、橋はそのまちの顔になることや、人が行きたいと思う観光地になることも多いです。このように橋梁を渡ることを目的化させるような工夫があると、土木の魅力向上にもつながるのではないでしょうか。

 ダムも水をためる役割だけでなく、観光地になっています。黒部アルペンルートのような観光資源になっているものや、カヌーができる場所など自然環境と大構造物の融合を楽しむような価値が生まれています。

 このように構造物を遺産としてあがめるだけでなく、人が楽しめる手段にする。人間が楽しめるようにすることができる、コトづくりを進めていく必要があり、これは土木にとっての大きなチャンスであると考えています。
 
西井(学生小委員会)――――――
 ありがとうございます。土木は、人の生活を維持するために必ず必要なものであるがゆえに、在り方が変化しているのですね。

機会② 地熱発電のための熱水鉱床の探査

西井(学生小委員会)――――――
 では、具体的に技術革新が必要になる分野についてどう考えていらっしゃるのでしょうか?
 
田中会長――――――
 技術革新が必要になってくる分野には、例えば地熱発電施設があります。蒸気が噴出してくる熱水鉱床を発見する確率はとても低いものです。在来ではボーリング調査を100回行ったときに2回熱水鉱床を発見することができるものを、地下水の浸透流解析をすることで、100回中10回に向上させる技術などの開発をしている。
 
 先ほど述べた高速道路の分野など、土木技術が変わっていかないといけないことはたくさんあります。

西井(学生小委員会)――――――
 土木がなすべきことは人間がいる限り終わることはなく、さらに新しい技術が必要とされているのですね。

建設業のブルーオーシャンって何があるの?

ブルーオーシャン① 低炭素化

西井(学生小委員会)――――――
 それでは、建設業のブルーオーシャンになるであろう分野であったり、注目なさっていることは何でしょうか、そしてどういったところに新技術が生まれるのでしょうか?
 
 田中会長――――――
 建設業全体では、低炭素化につながるシステム化が必要とされています。建設の輸送システム、材料から設計施工において、低炭素化をキーワードにそれぞれの分野で適用できると考えています。

 材料に関しては、二酸化炭素を封じ込めた炭酸カルシウムによるコンクリートの生成や、セメント量を減らすコンクリート材料などの研究がされており、これらの汎用性を向上させ、量産化されることが理想です。他にも、土壌浄化、生物多様性、地下水の浄化がキーワードであると思います。

ブルーオーシャン② 山岳トンネル工事の自動化

 最も注目している技術は、山岳トンネル工事の自動化です。山岳トンネルに関しては、トンネルの施工場所が切羽(トンネル掘削面)の先端であるから、自動化をしやすい部分であり、工事に占める自動化の割合も、ほかの工事と比較すると高いです。例えば、ダム工事では、コンクリートの打設や土の埋め立てが自動化できそうで、機械の自律化の技術が進めば自動化する部分が増えてくるでしょう。日本には山岳地帯が多くあり、まだまだトンネルを新しく作っていく必要があるため、この技術ができると多くの現場に応用できるのではないだろうかと考えています。

トンネル切羽
引用:山岳トンネル工事における「切羽プロジェクションマッピング」を開発

 

最後に

ここまでご覧いただきありがとうございました!
人間の生活の基盤である土木に、時代の流れや人の生活スタイルの変化とともに、求められているものが変わりつつあることがわかりました。
技術革新の伸びしろと、それによってもたらされる社会の変化を想像するとわくわくします。
今後も記事を更新していく予定なので、読んでいただけると嬉しいです。

田中会長と取材メンバー

<メンバー随時募集中!>

今回の記事を通して
「インタビューを通して、直接話を聞いてみて考えを巡らせたい!」
「インタビューしたい相手がいる!」
という学生は、是非とも学生小委員会に参加し、
私たちとともにいろいろな方へインタビューに行きましょう!
 

今回私達のインタビューのために貴重なお時間を頂戴しました
田中茂義会長
には厚く御礼申し上げます。本当にありがとうございました。

<取材チーム>

土木学会 学生小委員会
東洋大  宮﨑康平
早稲田大 西井義幸
早稲田大 西川貴章 
香川高専 土田虎之介
2023年7月11日 『大成建設(株)本社』にて