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世紀の愚策!大麻使用罪を作ってはいけない7つの理由

2021年1月から検討が開始された大麻使用罪の導入に関しては、有識者会議においても賛否が分かれましたが、厚生労働省は創設の方向で議論を進めています。大麻使用罪を作ることで、どのようなデメリットがあるか改めて考えてみたいと思います。

1:こっそり吸っている人と周囲が不幸になる

使用罪が創設されることで、最も大きな影響を受けるのは言うまでもなく、大麻を使用している人達です。
現状のルールでは所持だけが規制されているので、誰かが大麻を所持していて、もらいタバコをすることは違法ではありません。(実際に大麻は他の薬物と違い、場を共有する人々の間でシェアされるのが一般的な用法です。)しかし使用罪ができることで、今後は大麻を共有した全員が違法行為に問われ、逮捕・起訴されるリスクを抱えることになります。その結果、大麻関連の逮捕者数は大幅に上昇するでしょう。また令和2年犯罪白書によると、現状では大麻取締法違反での起訴率は45%とのことなので、二人に一人は罪に問われることなく釈放されているようですが、使用罪ができると嫌疑不十分のケースが減り、起訴・有罪とされる比率も高くなるはずです。
”ルールを破る者には罰を与えるべき!”という短絡的な声がきこえてきますが、このように処罰される人の大多数は、反社会勢力とは無関係の健康な若者です。昨今、大学の運動部などで大麻関連の報道が認められますが、使用罪が成立すれば、芋づる式に部員の大半が逮捕されるようなケースも生じ得るでしょう。(たとえその場で大麻使用を断ったとしても、関係者の証言次第では司法トラブルに巻き込まれます。)大麻自体の健康被害はそこまでして止めるほどのものではないことは私が学術的に示した通りです。
https://news.yahoo.co.jp/articles/ab6bcc20e61a72d230a01119b003771ea8c7c06f

この影響は当人の周囲にも、間接的に及びます。喫煙しない家族・友人としては使用罪の導入を機に大麻の使用をやめてもらいたいと願うのは当然でしょうが、大麻喫煙者の多くは、大麻使用を悪いことだと思っていない傾向があるので、使用罪の導入は人間関係の不和を生み出すでしょう。大麻を止めないことを理由に離婚されたり、親に縁を切られたという話も実際に耳にします。
また見過ごすことができないのは、通報リスクの上昇です。現在でも大麻での逮捕の大部分は周囲による通報がきっかけと言われています。銃のある社会ではちょっとした喧嘩が殺人に発展するように、使用罪のある社会では通報による私的制裁が行使されやすくなるでしょう。例えば大麻成分の入ったクッキーを食べさせてから通報することで、特定個人を逮捕させることが可能となります。
自分には無関係と思われる方が多いでしょうが、周囲に打ち明けることなく、こっそりと大麻を使用している人も相当数、存在しています。貴方の周りにも大麻使用罪ができて頭を抱える人がいるかもしれないのです。

2:大麻の医療活用が遅れる

大麻使用罪により間接的な不利益を被るのは病気の人々です。現在、CBDなどの大麻成分サプリメントは合法的に国内で使用されていますが、検出感度以下の微量なTHCを含有しています。仮にCBD製品使用者の誤認逮捕などが起これば、ユーザーの間には不安が広がり、忌避感によって救われ得る人のアクセスを阻害するでしょう。また尿検査でTHCと交差反応をきたすカンナビノイド製品は、使用罪を徹底するために禁止薬物に指定される可能性があります。THC=悪というイメージを強化する使用罪の導入により、THCの医療用途については市民の理解が遅れ、医療用麻薬が敬遠されるのと同じように合法化後も長きに渡ってスティグマの影響を受け続けることになるでしょう。THCには食欲増進などその他の医薬品には対応できない薬効があることを考えると、この潜在的な被害は甚大です。

3:大麻の代用品によって健康が損なわれる
日本では法は犯したくないけれど、何らかの“トリップ“を必要としている人が大半です。実際にHHCの一過性ブームは、合法な精神活性物質の潜在的ニーズを明らかにしました。大麻を禁止したところで、このニーズ自体は解消されません。行き場を失った欲求が向かうのは、たとえば合成カンナビノイドリキッドです。
安全性の検証が行われていないカンナビノイドを長期的に、特にVapeで吸い続けることは心身に大麻の常用とは比べものにならない深刻な被害をもたらすかもしれません。
合成カンナビノイド以外にも、アルコール、睡眠薬・咳止めなどの市販薬、覚醒剤などの違法ドラッグにもニーズは流れるでしょう。どれも大麻よりも健康被害の大きな薬物です。さらに人の嗜癖行動は薬物だけではありません。大麻を禁止することで、ギャンブルなどのその他の依存行為に没頭する人も増えるでしょう。
大麻は“気休め“の一種かもしれませんが、その気休めによってなんとかやり過ごし、今日を生き長らえている人も存在します。そういう人から大麻を奪うことは自殺のリスクを著しく高めることにつながります。
薬物政策の評価は、これらの様々な依存症の件数、さらには自殺者数まで含めて広範な視点から評価されるべきなのです。

4:経済的な損失が大きい
使用罪に伴う取締強化は、皆さんが払った税金で行われます。日本大麻党の小林宏氏が問い合わせたところによると、大麻取締法で一人逮捕される毎に40万円の税金がかかるそうです。加えて刑務所に収監されると年間500万円の税金が管理に使われます。これらの費用に加えて、裁判所・検察などの司法に携わる人々の労力が無駄に投下されることになるのです。
これらに多額の税金を浪費した結果としてもたらされるのは、さらなる税収の低下です。大麻関連事犯として司法介入を受けることによって、大学を退学になる、職場を解雇されるなどの社会的処罰が課され、所得税などの税収が低下するからです。
さらに、2022年の時点で使用罪を創設し、大麻ユーザーを逮捕・投獄することは将来的な国家賠償請求の種を蒔くことになります。なぜなら今日の時点で、大麻の厳罰政策は転換されるべきであることが国際的に勧告されているからです。これはハンセン病の感染性が乏しいことが明らかになっていたのにも関わらず、何十年も不必要な隔離政策を実施し、患者の人権を蹂躙したハンセン病問題で、国家賠償請求が行われた歴史を彷彿とさせます。
加えて大麻使用罪導入とTHCの厳罰化は、国内大麻産業の育成を阻みます。アメリカでは州によっては大麻の税収は酒税を凌駕している今日、これだけの可能性のある産業の芽を摘むのは愚策というべきでしょう。

5:文化・人権の衰退に繋がる
大麻使用罪が悪影響を与えるのは、経済だけでなく文化も同様です。現状、レゲエやHIP HOPなどのジャンルにおいて大麻使用を仄めかす表現は一般的に浸透していますが、これらは使用罪導入後は“大麻使用を煽っている“ということで、取締の対象となる可能性が高いでしょう。(使用罪が起訴を可能とします)
大麻を楽曲のモチーフとしていなくても、アーティスト・芸能人で大麻を嗜んでいる方は多いようです。それらのアーティストがクリエイションの補助を失ったり、また逮捕され作品が回収されることは誰のことも幸せにしません。

逆に大麻の逮捕が増えて喜ぶのは権力者です。大物政治家にとって不都合な活動をする人が、ある種の別件逮捕として大麻で検挙されることは現在もままあるようですが、このような社会活動家やジャーナリストの排除は使用罪創設でずっとやりやすくなります。
芸能人の逮捕も、不都合なニュースの報道時間を短縮するための目隠しとして活用されている側面があります。(スピンコントロールと呼ばれる手法です)民衆がワイドショーで誰かの凋落を眺めている間に、国会では大事なことが報道されずに通過していくのです。

6:社会不安・治安の悪化をもたらす

大麻使用罪の創設は、中長期的には社会不安を増悪させ、治安の悪化をもたらす恐れがあります。まず第一に、大麻に関する誤った情報発信を続けることは、カナダやタイ、アメリカで合法化が進む今日では不可能です。ネットで情報を収集する世代にとって、政府が“オオカミ少年“になってしまうのです。一度不信感を抱くと、大麻以外の情報に関しても疑うことになります。また逮捕者が増えることは、前科というレッテルを貼られて生きる人を増やすことになります。このレッテルが貧富の格差拡大につながり、治安の悪化につながるのは言うまでもありません。

使用罪を作ることで権力を得るのは取締機関と反社会勢力です。なぜなら大麻の流通を撲滅するのは不可能だからです。取締を厳しくすればするほど、ブラックマーケットにおける大麻産業への参入リスクは高まり、その結果、大麻の値段が上昇することになります。最終的に市場を牛耳るのは、大規模な密輸などを実行できる海外の犯罪組織ということになるかもしれません。

7:ガラパゴス化が進む
2022年時点で、いわゆる西側先進諸国は大麻の解禁方向に舵を切っています。2020年の国連総会で大麻の規制緩和に賛成・反対した国の一覧を見ると、多くの日本人は不安な気持ちになるでしょう。国際政治の舞台上で発展途上国としての振る舞いと言われても反論ができません。
https://www.greenzonejapan.com/2020/12/05/cnd_vote/

衰退していく日本から、優秀な人材が流出していく現象は既に始まっていますが、大麻規制強化はこの流れを加速させます。また合法地域からの人材流入も阻害することになるでしょう。
国策として今後は観光が主要産業となっていくのでしょうが、合法地域からの観光客も使用罪には懸念を示すものと思われます。仮に逮捕されることがあれば、外交上のトラブルに発展することも予想されます。(来日したスヌープドッグを逮捕するとは思えませんが、それもまた法律運用のダブルスタンダードを明らかにし、社会制度への怒りを増長させるでしょう)
またスポーツの世界でもTHCをドーピング規制から除外しようという動きが本格化しています。これが実施されると、日本国内でオリンピックをはじめとした国際的な競技大会の運営が難しくなる可能性があります。

このように、使用罪創設によって考えられる不利益は枚挙に暇がないのに対して、使用罪を創設することのメリットは不明確です。個人的に廃案とすることを強く推奨します。

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