【β遮断薬に苦手意識がある人へ】β遮断薬の種類と使い分け【β1選択性,α遮断作用】

β遮断薬にはすごくたくさんの種類があります.

しかし,エビデンスがある薬剤はほんの一部だけです.

だから,実用性だけを考えたなら覚えることは多くなくて,以外に簡単です.

解説していきます.

 

■エビデンスのあるβ遮断薬:2種類だけ

心不全や心筋梗塞症例での予後改善エビデンスがあるβ遮断薬は,ビソプロロール,カルベジロール,メトプロロールコハク酸です.

本邦での採用薬に限れば,ビソプロロール(メインテート®)とカルベジロール(アーチスト®)の2剤しかありませんので,この2剤について重点的に解説していきます.

注意:セロケン®はメトプロロール酒石酸です.メトプロロールコハク酸製剤は本邦にありません.

 

■ビソプロロール(メインテート®)

予後改善エビデンスがあるβ遮断薬の1つめはビソプロロール.

(内服では)β1選択性の最も高いβ遮断薬です.

代表的なエビデンスは以下.

CIBISⅡ試験
対象:NYHA Ⅲ~Ⅳ度,EF≦35%の心不全2600例
治療法:ビソプロロール群では1.25mg/日より投与開始.忍容性があれば 10mgまで順次増量.利尿薬とACE阻害薬は必ず使用.(ACE阻害薬不耐の場合,他の血管拡張薬を使用可)
結果:ビソプロロールによる死亡リスク低下が明らか(全死亡11.8% vs 17.3%,年間死亡率34%低下)であったため試験途中で中止.平均追跡期間1.3年.心血管死亡や入院のリスクも有意に低減していた.

死亡率の低下が明らかだったんで,途中で中止になっちゃってます

すごいですね.

β1選択性が高いこと【そもそもβ1選択性とは】

ビソプロロールの特徴である高β1選択性

これはどのような特徴なのか.

そもそもアドレナリン受容体は,α受容体が2種類,β受容体が3種類確認されています.

β1受容体
主に心臓に存在し,心機能に関与.
特に,交感神経が及ぼす心拍数への影響は,β1受容体を主に介する.
β1受容体は,洞結節に多く,周囲の心房筋や房室結節の8倍くらいの密度で存在する.
β2受容体
主に気管支や血管に存在.
気管支平滑筋の拡張,血管平滑筋の拡張(筋肉と肝臓),糖代謝の活性化に関与.
心筋にも存在するが,β1受容体の4分の1~6分の1程度であり,心機能への寄与度は低い.
β2受容体反応は,心拍数より心収縮力に関与する.
※β3受容体は割愛(記事の最後で)
α1受容体
主に血管や心筋に存在.
血管平滑筋の収縮に関与.
心筋では,収縮力増加作用があるが,β受容体刺激に比し効果は弱い.
気管支平滑筋の収縮にも関与している.
α2受容体
交感神経終末からのノルアドレナリン(NA)などの神経伝達物質の放出を抑制する.
α1作用と拮抗する.

まぁ,こんなツラツラと書かれてもわからんでしょう笑

図で示すとこう☟ これを見ながら簡単に読み返してみてください.

画像5

心機能に主に寄与するのはβ1受容体で,特に,心拍数に関してはβ1遮断作用が極めて重要です.

β2受容体やα1受容体の心機能への寄与は比較的弱く,また,β遮断薬を議論する上でα2受容体のことは忘れてもいいです.

よって,説明しやすくもっとシンプルな図にすると,こう☟

画像5

つまり

”β1選択性が高い”ということは
”心臓選択性が高い”ということ

なんです.

そもそも,みなさんが抱いているβ遮断薬のイメージは,β1遮断薬だと思います

そんなこんなで,β1選択性がとっても高いビソプロロールは
”ピュアβ遮断薬"
なんて言われることもあるそうです.
(完全にβ1遮断だけというわけではないですけどね)

 

高β1選択性の恩恵:余計な効果が少ない

本来β遮断薬に求めたかった効果は,β1遮断作用というわけです.

β2受容体を遮断することで生じる作用は,たいてい良いことがありません

β2作用遮断の弊害➀:糖脂質代謝の悪化/低血糖の遷延
糖尿病症例とはすこぶる相性の悪い作用です.
β2作用遮断の弊害➁:気管支攣縮の誘発ないし増悪
気管支平滑筋を収縮させます.
よって,気管支喘息やCOPDの症例には不適とされます.
β2作用遮断の弊害➂:糸球体濾過量(GFR)や腎血流量の低下が起きやすい
血管収縮の結果,腎血管抵抗も増えるため.
β2作用遮断の弊害➃:閉塞性動脈硬化症(ASO)が増悪する
血管収縮の結果,ベースに狭窄があると血流障害が悪化する可能性があります.
β2作用遮断の弊害➄:後負荷が増える
血管収縮の結果,末梢血管抵抗が上昇しますからね.後負荷も増えます.
心保護目的で使用したい場合,本末転倒な作用です.

こんな感じです.

ほら,β1選択性は高い方がいいですよね?

 

つまるところ,β遮断薬(のβ2遮断作用)には,このような弊害がありますが,糖尿病症例や慢性腎臓病症例,ASO症例でも,β遮断薬は推奨通りに使用すべきです.

そして,使用する場合は,β1選択性が高い方がいいことを覚えておいてください.
(≫β遮断薬と糖代謝の関係はこちらの記事で解説しています.)
(≫β遮断薬と慢性腎臓病の関係はこちらの記事で解説しています.)

また,閉塞性肺疾患に関して,中等症以下の気管支喘息と,重症を含めたCOPDに関しても,β遮断薬は推奨があればしっかり使用するべきです.

閉塞性肺疾患にβ遮断薬を使用する場合も,β1選択性の高いβ遮断薬を選択するのが原則です.
(≫β遮断薬と閉塞性肺疾患の関係はこちらの記事で解説しています.)


 

■カルベジロール(アーチスト®)

予後改善エビデンスがあるβ遮断薬の2つめはカルベジロール.

α1遮断作用をあわせ持つαβ遮断薬です.

代表的なエビデンスは以下.

COPERNICUS試験
対象:NYHA Ⅳ度,EF<25%の心不全2300例
治療法:カルベジロール群では3.125mg×2回/日より投与開始.忍容性があれば25mg×2回/日を目標に最大耐用量まで増量.
結果:カルベジロールによる死亡リスク低下(35%)がみられ,予定より早く終了(平均追跡期間10.4ヶ月).入院のリスクも有意に低減していた.

NYHAⅣの最重症例に対するカルベジロールの効果です.

こちらもビソプロロールと同様に死亡リスクの低下が明らかで早期に中止になっています.

ちなみに,COPERNICUS試験での最大用量は,本邦における最大用量を大きく上回っているが,本邦で行われたMUCHA試験で,(本邦における)最大用量20mgでも心血管イベントの抑制効果は確認されています.

カルベジローは,ビソプロロールと異なり,β1選択性の低いβ遮断薬になります.

「え,それじゃ良くないことばっかりじゃん!」

そう.

前項で説明した通り,β1選択性が低いことはロクなことにつながりません...

しかし.

カルベジロールには,β遮断薬としては珍しく,α遮断作用をあわせ持ちます.

α遮断作用とは【β1選択性が低いの大丈夫?】

カルベジロールのα遮断作用とは,正確にはα1遮断作用です.

上述したα1受容体の効果を,もう一度引用します.

α1受容体
主に血管や心筋に存在.
血管平滑筋の収縮に関与.
心筋では,収縮力増加作用があるが,β受容体刺激に比し効果は弱い.
気管支平滑筋の収縮にも関与している.

このように,α1受容体作用β2受容体作用は,拮抗するようなものが多く,上述した”β2遮断作用の弊害”は,概ね相殺されています.

おおよその対戦カードと結果は以下の通り.

α1遮断作用 vs β2作用遮断➀:糖脂質代謝
血管拡張作用により筋骨格筋血流が増加し,インスリン抵抗性が改善.
⇒カルベジロールの勝利
α1遮断作用 vs β2作用遮断➁:閉塞性肺疾患
α1遮断作用に気管支拡張作用があるようです.
しかし,カルベジロールは安ビソプロロールに比して安全性のエビデンスが乏しく,吸入β2刺激薬が効かなくなる弊害も大きいです.
特に,気管支喘息にはβ1選択性の低いカルベジロールの使用は望ましくないでしょう.
⇒カルベジロール惨敗(ビソプロロールの方が安全
α1遮断作用 vs β2作用遮断➂:糸球体濾過量(GFR)や腎血流量
血管拡張作用によって,むしろ腎保護的に働く可能性あり.
⇒カルベジロール僅差で勝利(ビソプロロールでも全然問題ない)
α1遮断作用 vs β2作用遮断➃:閉塞性動脈硬化症(ASO)
血管拡張作用と言っても,末梢血管における軽微な拡張作用です.狭窄を解除するようなレベルのようなものでなく,すると,β2遮断作用による弊害の方が面倒.
⇒ビソプロロール僅差で勝利かな?ガイドラインなどでも言及無し

ということで

カルベジロールは低β1選択性ですが

α1遮断作用によって

閉塞性肺疾患以外は大きな問題になりません

 

言い方を変えるなら

閉塞性肺疾患だけは,カルベジロール,やめた方がいいです.

ここ大事.

(≫β遮断薬と閉塞性肺疾患の関係はこちらの記事で解説しています.)

 

その他の作用【カルベジロールは謎が多い】

カルベジロールの特殊な作用は,α1遮断作用以外にもいろいろあります.

例えば,抗酸化作用アポトーシスの抑制などがそうです.

これらの作用が,血管や心臓などにいろいろな恩恵を与えていると考えられ,それを証明するような研究報告は多くあります.

しかし,今ひとつ,コンセンサスとしてまとまった見解がないので,ここではこう説明しときます.

カルベジロールはようわからんけど,いろんな作用があって臓器保護をもたらしうる

です.(この分野で研究などをされている先生にみられたら,ぶん殴られる覚悟←)

純粋一途にβ1受容体に全集中なビソプロロール

に対して

マルチな才能で,神秘的に活躍するカルベジロール

というイメージで考えましょう.


αβ遮断薬の弊害:起立性・神経調節性の血圧低下が起きやすい

β遮断薬は一般的に,α1作用が相対的に亢進します.

α1作用の亢進は,末梢血管抵抗を上昇させますが,αβ遮断薬ではこの反射が抑えられます

このなα1作用の亢進は,体位変換の時血管内脱水時にも起こりやすいですが,α遮断作用はそのような反射も抑えてしまいます.

結果的に,起立性や神経調節性の血圧低下が起きやすくめまいやふらつきの副作用が多いことが,カルベジロールの難点です.

 

■ビソプロロールとカルベジロールの相違点【強いて一つに絞るなら,徐拍化の程度】

ここまでいろいろ話したことをまとめて,ビソプロロールとカルベジロールの相違点は何かといわれると,

多すぎて答えられません

ビソプロロールとカルベジロールの薬理作用は全く別物ですからね.

強いて一つ大きな違いをあげるならば,徐拍効果の違いです.

徐拍効果は,ビソプロロールの方が大きいとする報告はいくつか存在し(Eur J Heart Fail. 2011 Jun;13(6):670-80. ),実臨床での感覚も同様です.

よって,頻拍性不整脈に対して使用する場合はビソプロロール優先です.

また,徐拍化がいいということは,ダブルプロダクトを良く減らすということです.

ダブルプロダクトは「収縮期血圧×心拍数」のこと.
心臓の仕事量と相関します.

このことから,労作性狭心症などの症状緩和などには,ビソプロロールが優先して使用されます.

逆に,徐拍化の弊害を考えると

➀(病的な)徐脈症例では,ビソプロロールよりカルベジロール優先

➁低心機能で低血圧の場合,ビソプロロールよりカルベジロールの方が使用しやすい

という使い分けもします.

➁に関して
脈を速くすることで循環をどうにか担保しているようなギリギリの症例というのがあります.
そういう症例は血圧も低いことがままあります.
このような重症心不全のHRを下手に下げると,循環が破綻します.
よって,徐拍化の少ないカルベジロールの方が安全に使用できる,という理屈です.
「α遮断作用で血圧がさらに下がっちゃわないの?」
と不安になるかもしれませんが,(めまい症状以外は)そこまで気になりません.
たとえば,”α遮断薬のカルデナリン®を使用していたせいで致命的な低血圧になることは普通ない”のと同じです.
(コンセンサスはないと思いますので,あくまで参考までに.)

 

■まとめ

・実質,使用を検討すべきβ遮断薬は,ビソプロロールとカルベジロールのみ
・ビソプロロールは,β1選択性がとっても高いβ遮断薬
・β1選択性が高いことで,いろいろなβ遮断薬の弊害を解決できている
・カルベジロールは,α1遮断作用抗酸化作用などを併せもつ不思議なβ遮断薬(αβ遮断薬)
・α1遮断作用のおかげで,β遮断薬の弊害を概ね解決できているが,閉塞性肺疾患だけは解決できない
徐拍効果で選ぶならビソプロロール.(頻拍性不整脈や労作性狭心症)
徐脈や,循環動態の破綻が心配ならカルベジロールの方が安全
・その他の選択のポイントは以下のイメージ.

画像4

 

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以下は,知らなくても実用性には影響のない知識です.

しかし,β遮断薬の理解を深めるために,時間がある方はサラッとお読みください.

おまけ1.ビソプロロールとカルベジロールの共通点

なぜ,ビソプロロールとカルベジロール(とメトプロロールコハク酸)のみが予後改善効果を認めるのか.

これらの薬剤の共通点は
・脂溶性
・長時間作用
・内因性交感神経刺激作用(ISA)がない
 ☜詳細後述
です.

これらは予後改善効果の鍵になっているのでしょう.

とくに,脂溶性が高いことは,致死性の不整脈の抑制効果と関係があるとされ,予後改善に結び付く可能性が示唆されています.

 

おまけ2.内因性交感神経刺激作用 intrinsic sympathomimetic action:ISA【結果的には必要がない作用だった】

徐脈を軽減するため開発された,内因性交感神経刺激作用(intrinsic sympathomimetic action: ISA)を持つβ遮断薬は,全て心保護改善のエビデンスを得られませんでした.

この背景として心不全症例において,徐拍化が予後改善をさせる機序のひとつとされています.

心筋梗塞症例を対象にしたメタ解析の結果では,心拍数が低下するほど,生命予後の改善が認められています.(Eur Heart J. 1987 Dec;8 Suppl L:115-22. )

新薬のイバブラジン(洞結節に作用し,心拍数だけを低下させる薬剤)の存在を考えればわかりやすいと思います.

徐脈は,副作用という見られ方が多いですが,β遮断薬の主作用のひとつであるという認識も忘れてはならないですね.


おまけ3.代表的なβ遮断薬の比較表

「β遮断薬のすべて 第 3 版(先端医学社 ; 2009)」などを参考に作成しました.

画像1

これまで話してきた通り,この表は全く覚えなくていいです

ちなみに,2014年のガイドライン改訂で,降圧薬としてβ遮断薬は第一選択を外れましたが,その参考とされた(結果の良くない)Studyのほとんどで,β遮断薬としては水溶性のアテノロールが用いられていました.

また,水溶性β遮断薬は透析患者に用いるのは注意です.
透析によって除去されたと単位カテコラミンに対して過敏に反応して,頻脈や不整脈を起こす可能性があるからです.

このように,悪い情報しかない(水溶性β遮断薬の)アテノロールですが,発売当初は,β1選択性の高い長時間作用型のβ遮断薬であり,多くの使用例がありました.

脂溶性が大事,なんてことを誰も知らなかった時代です.
歴史を感じますね.

 

おまけ3.割愛したβ3受容体の説明

β3受容体
脂肪細胞,消化管,肝臓や骨格筋などに存在し,基礎代謝に影響を与えている可能性が示唆されている.
膀胱平滑筋にも存在し,過活動膀胱の治療薬などに関与.

実は,β3受容体の心血管径に与える作用はよくわかっていません.

これからの報告に期待ですね.

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今回の話は以上です.

本日もお疲れ様でした.

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